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【J1:第4節 清水 vs 広島】レポート:10番と11番が冴えた広島はやはり強い。清水も強い気持ちを見せたが、10人になって猛攻に耐えきれず(13.03.31)

結果を出せずに自信を失いかけている若いチームと、攻撃の中心が復帰して準備万端で臨んだ昨年のチャンピオンチーム。両者の戦いぶりの差は、スコア上にも試合内容にも非常にわかりやすく表われていた。

ただ、清水の試合内容が、今季ここまでの試合と比べて悪かったわけではない。むしろサッカーの質に関しては、向上している面のほうが目立った。もちろん昨年の良い時期には及ばないが、パスを回すときの落ち着きやサイドの崩し方が改善され、とくに河井陽介が左ウィングに入った左サイドは高い位置で起点を作れる場面が多くなった。
それもあってバレーがボールを触る回数も増え、中盤からバレーに対角線のボールを入れ、その落としからチャンスを狙うというパターンも何度か良い形に結びついた。その他にも、2列目から裏に飛び出す選手にパスが出る場面もあり、シュート数は90分間で6本と相変わらず少ないが、シュートまで行けそうな雰囲気はこれまでよりも濃くなっていた。

守備に関しても、前線からDFラインまでをコンパクトに保ち、中盤で早くプレスをかけていくという部分はけっして悪くなかった。球際での激しさも十分にあった。だが、この試合に関しては相手が悪かった。「(前からボールを)取りに来てくれたほうが、逆に相手の裏をとったりするプレーを出していける」(山岸智)と、広島の選手たちはプレス大歓迎とばかりに、自信たっぷりにパスをつないでいく。そのため清水のプレスも後手後手になり、中盤でスペースを与えてしまう場面が目立っていった。
さらに広島にとって何より大きかったのは、新10番・高萩洋次郎のケガからの復帰だ。後方からの縦パスを受けて厳しいプレスを受けたときも、少しも慌てずボールをキープして味方につなぎ、ときには絶妙なファーストタッチ一発でプレスをかわして前を向いてしまう。中盤のわずかなスペースを見つけてボールを引き出す動きも良く、随所で見せる閃きに満ちたプレーやパスの質でも、ピッチ上で1人だけ別次元にいるかのような輝きを放っていた。そんな高萩のプレーが広島のチームメイトにも自信を与え、チームのリズムを向上させたことは想像に難くない。
先制点の場面も、中盤で前を向いた高萩のクサビのパスから始まり、佐藤寿人の絶妙な1タッチパスで裏に飛び出した石原直樹が1タッチで決めるという広島らしい非常に鮮やかなゴールシーンだった。

逆に清水にとっては絶対に避けたかった早い時間の失点。これまでも、それによって焦りから組織を見失い、チームがバラバラになってしまうというパターンが目立っていた。だが今回は、後半14分までは何とか持ちこたえていた。1点取れば流れは変わると信じて、劣勢の中でも辛抱強く戦い続け、前半33分のセットプレーからの岡根直哉のシュートや後半5分のバレーのヘディングシュートなど惜しい場面も作れていた。
しかし、後半14分に岡根が2枚目のイエローカードを受けて退場になり、一気に反撃の望みも薄れてしまう。ただ、前半から清水のファウルには、カードが出やすい形が目立っていた。プレスをかわされてしまい、焦って後追いで無理なタックルにいく場面が多かったからだ。岡根の2枚目のイエローカードもまさにそんなパターン。そこはチームとして注意をうながしておく必要があったはずだ。

これで広島はさらに自信と余裕を増して主導権を握り、後半23分には高萩のスルーパスで石原が裏に飛び出してファウルを受け、PKを獲得。これを佐藤が決めて今季の初得点を挙げ、ほぼ試合を決める2点目を手にした。そして28分の3点目は左CKから、37分の4点目はカウンター気味にミキッチが右の裏に抜け出したサイド攻撃からと、点の取り方もバリエーション豊富だった。
高萩が復帰早々に素晴らしいパフォーマンスを見せ、同じく復帰組のミキッチも何度も右サイドを突破。さらにエースの佐藤が4得点全てに絡んで、自らも2ゴールを挙げ、石原を含めた前3人の関係も抜群。高校3年生の川辺駿がプロデビューを果たし、18歳の野津田岳人と共にビッグチャンスに絡むと同時に、3日後のACL浦項戦に向けて主力を途中交代させることもできた。
チームとしてやりたいサッカーという意味でも今季いちばんの出来で、広島にとっては言うことなしの快勝。今後、昨年と同じ強さを発揮できそうな予感たっぷりの戦いぶりで鬼門のアイスタを制した。

一方、清水のほうは4点差以上の敗戦がこれで今季3試合目(公式戦)。リーグ戦では4試合で12失点。2分2敗で17位に転落した。失点が非常に多くなっているが、だからといって守備さえ改善すれば良いという単純な問題ではないように見える。ただ、選手たちはよく戦っていたし、何とかして悪い流れを変えたいという気持ちは十分に伝わってきた。
ならば、勝点3を得るには、立ち直りのきっかけをつかむにはどうすれば良いのか。サポーターのストレスも非常にたまっている中、チームだけでなくクラブ全体で問題解決に取り組んでいく必要がありそうだ。

以上

2013.03.31 Reported by 前島芳雄
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