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【FUJI XEROX SUPER CUP 広島 vs 柏】広島側プレビュー:継続が培う力の厚み。変わらない広島が2度目の制覇を狙い、国立に見参(13.02.22)

おそらく、広島の戦いぶりに明確な「驚き」はあるまい。昨年どおりの紫の風が、2013年の国立競技場にも舞うはずだ。
森脇良太の浦和移籍という痛手はあったが、そのポジションにはファン ソッコと塩谷司という優れたタレントを昨年から補強。韓国代表での合宿でファン ソッコが負傷したことは厳しいが、それでも昨年のJリーグやFIFAクラブワールドカップで実績を残した塩谷につて水本裕貴は「対人の強さを持っている」と評価。千葉和彦も「あいつは1人で守ってくれるから」と信頼を口にする。森脇のような「得点力」は未知数だが、タイミングのいいサイドチェンジやチャンスにつながるスルーパスなど、「演出」の部分での可能性はキャンプでも見せてきた。森脇とはタイプの違ったメリットを、チームにもたらしてくれることは疑いない。

ただ塩谷以外のメンバーに、おそらく大きな変動はないだろう。フォーメーションも基本的なコンセプトにしても、昨年との変更点はほぼ見当たらない。キャンプでは前からボールを奪いにいくディフェンスにチャレンジしていたが、それも「オプションの一つ」と森崎和幸は言う。知将・ネルシーニョ監督(柏)にとっては今季の広島も、対策の立てやすいチームと言えるだろう。

昨年の両チームの対戦は1勝1敗の五分。共に試合終盤まで互いの知力と死力を尽くした熱戦だったが、特にアウェイで広島が5−2と勝利した戦いは、森保一監督をはじめ多くの選手たちが「シーズンの大きなポイントとなった」と語るほどの死闘。2点差を追い付かれ、その後もジョルジ ワグネルやレアンドロ ドミンゲスを中心に圧力をかけられ続けた広島だったが、日本刀のような妖艶さを持つ高萩洋次郎の存在が終盤の爆発を誘引。前年のJ王者に対して粘りの勝利を収めたことで、広島の選手たちは大きな自信を獲得し、優勝へと邁進することとなった。

ただ、この時のような「ガチンコ」の戦いをネルシーニョ監督が仕掛けてくるかどうか、そこは「わからない」(森崎和)。広島ビッグアーチではジョルジ ワグネルが森脇のマンマークにつくという対策を講じた柏が、後半アディショナルタイムにセットプレーからのゴールによって勝利。広島の攻撃の良さを消す守備的な戦いを講じても、セットプレーや個人の突破などで得点できることを証明した。シーズン開幕前は「自分たちのサッカー」を表現することをまず考えるものだが、「タイトルマッチ」という意義を思考すれば勝利のみを求める戦術採用も、十分にありえる。

UEFAチャンピオンズリーグでのプレー経験を持つ新戦力FWクレオについては、ミキッチが「彼はいい選手だ」と警鐘を鳴らしており、フィットすれば脅威の存在となる。彼以外にも、韓国代表の右サイドバック=キム チャンスやロンドン五輪日本代表の鈴木大輔、さらに谷口博之や太田徹郎らの補強にも成功。ターンオーバー制も可能なほどの戦力増強に成功した柏とは対照的に、広島の即戦力補強は期限付き移籍から戻った岡本知剛のみ。彼の復帰によって中盤の厚みは増したものの、他の新戦力としてはルーキー・野津田岳人くらい。彼にしても高校3年生だった昨年からすでにJデビューを果たしており、やはり「驚き」はない。
だが、広島の戦術的成熟と個々の選手たちの「自信」は、千葉が「それこそ、大きな補強」と胸を張るほど、充実感を増している。森保監督も「全員が攻守に関わるスタイルは、昨年よりも成長していると思う」と笑顔を見せた。昨年は、得点王・佐藤寿人がチーム総得点の3分の1強を占めたが、キャンプ中のトレーニングマッチでは6試合18得点中、石原直樹が5得点を記録し、高萩・森崎浩司が2得点ずつ。他にも青山敏弘や山岸智、水本といった3列目以降の選手も得点を重ねるなど、どこからでもゴールをたたき出せる怖さも身に付けた。チャンスメイクにも円熟の境地を感じさせる佐藤が「順調」と胸を張るなど、キャンプの狙いである「個々の成長をチームの底上げにつなげる」ことはできつつある。あとは公式戦で成果を発揮するだけだ。

2008年度の優勝は、鹿島の2冠によって転がり込んだ出場権によって果たせたもの。今回は、リーグ王者として堂々と国立に乗り込むことができる。前回のFUJI XEROX SUPER CUP制覇がJ2での爆発につながったように、スーパーカップ優勝は来るべきシーズンの吉兆。継続が培う厚みを今季初の大舞台で見せつけ、紫の風たちは再び「旋風」と成る。

以上

2013.02.22 Reported by 中野和也
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