同じ3-4-3システムを採用し、ハードワークを生命線とする両チームの対戦は、戦力も似通っており膠着した展開が続いた。このような状況になれば、俗にいう“勝ちたい気持ち”が強いチームに流れが傾くのだが、この試合ではその気持ちも同等であった。試合後の会見で「選手はよく頑張ってくれた」と田坂和昭監督が振り返れば、「選手はよく戦えた」と影山雅永監督も選手を労ったように、互いにボールホルダーに対してのアプローチが早く、球際で食らいつき、何とかゴールを狙う姿勢が見てとれた。
ボールを失えば奪い返し、奪っては失う。互いの長所を消した試合は、シュートまで持ち込む回数が極端に少なかった。前半を終えて大分のシュート数が3本、岡山が4本。最大の決定機は21分に岡山の関戸健二のFK、大分は前半終了間際にCKからの阪田章裕のシュートぐらいで、どちらもGKのファインセーブでスコアは動かなかった。
得点の匂いが感じ取れない重苦しい試合は後半も続く。互いに守備は安定しているが攻撃において3人目の動きがなく、パスの受け手と出し手の関係だけに終始するためリズムは生まれにくかった。
0-0で迎えた66分、先に手を打ったのは大分だった。スーパーサブの木島悠を投入で攻撃の“エンジン”がかかった。「裏のスペースを狙っていた。スピードでは負ける気はしなかったのでドンドン勝負した」という木島の言葉が表すように、俊足アタッカーは流れが変わるのを信じて、ひたすらスペースに飛び出しを続けた。やがてチームのギアが一段上がり、木島が起点となり大分がペースを掴んだ。
対する岡山は、70分に満を持してチアゴを投入。高さと強さだけでなく、懐の深いキープ力を備えたターゲットマンにボールが収まると、複数の選手が一斉に動き出し、攻撃の厚みが出た。また、彼がボールを受けに下がることで、前線の空いたスペースを石原崇兆や桑田慎一朗らが果敢に飛び込みチャンスを作った。
最後まで一進一退の攻防は続き、「前後半とも(勝敗が)どちらに転んでもおかしくない試合だった」(影山監督)が、ホームの声援に後押しされたホームチームの執念が少しだけ勝った。88分に木島が右サイドからペナルティエリア内にドリブルで切れ込み、マイナスのクロスを三平和司が右足で合わせたシュートが決勝点となった。
岡山は開幕から2分2敗。スタートダッシュに失敗したが、内容は悪くなかった。狙いとするアグレッシブな守備から攻撃の転換は優れていた。あとは最後の局面における打開策となる。2勝2敗の五分に戻した大分は、木島投入からの一連の流れを少しでも長くしていくことで、ゴールチャンスも増えてくるはず。両チームともに苦しんでいるが、まだリーグは序盤戦。巻き返すためのひとつの方法論は見えた。
以上
2012.03.21 Reported by 柚野真也