負けられないという互いの強い気持ちがゲームを凍らせた。ホーム初勝利を狙う草津は、前回のホーム戦で湘南に敗れているだけにホーム連敗は許されない。対する徳島は前節栃木戦で惜敗しただけに連敗は避けたいところ。両チームの思いがピッチで絡み合ったゲームは、90分間を通じてゴールネットが揺らぐことなくスコアレスドローに終わった。

草津は、司令塔ヘベルチがホームで初先発。前節岐阜戦が雨のピッチとなったため急遽温存されたリンコンと熊林親吾の両主軸も先発に復帰し攻撃シフトで徳島を迎えた。対する徳島は、ジオゴ、宮崎光平、濱田武がスタメンに入り、中2日という過密日程のゲームへ挑んだ。

立ち上がりは草津がリズムをつかんだ。6分にボランチ熊林が前線へ送ったミドルフィードを後藤涼がボレーで合わせ徳島ゴールを脅かす。草津は、リンコン、後藤、遠藤敬佑の3シャドーが流動的に動きボールを引き出していく。23分には熊林のCKにリンコンがヘッドで合わせるが、ゴールライン上でブロックされてチャンスを逸する。すると時間の経過とともに1トップリンコンと司令塔ヘベルチが徳島のプレスの餌食となりリズムが崩れていく。

さらに草津にアクシデントが降りかかる。39分に熊林が負傷交代し、チームはゲームメーカー不在での戦いを余儀なくされる。スコアレスでハーフタイムを折り返した草津は徳島へ傾きつつある流れを一体となった守備で食い止めながらチャンスをうかがう。だがボールを奪う位置が低く、バイタルエリアまでボールを運ぶことが出来なくなっていった。センターバックの中村英之は「後ろから見ていて裏への動きが少なく、足元のボールを狙われてしまった」と振り返った。

徳島の出来も決して良いわけではなかった。徳島は、上里一将と濱田がヘベルチに圧力をかけるなど自由を奪い、中盤の主導権を握る。だが、アタッキングサードに近づくにつれてプレー精度が下がり、草津のディフェンスラインを突破することができない。「前線が苦しんでいたので後ろは絶対に耐えようと思った」（御厨貴文）。草津は、決死の守備で徳島の攻撃を防ぎワンチャンスを狙う。そして終盤には金成勇、高卒ルーキー横山翔平を起用し勝負に出たが最後までゴールを奪うことなくタイムアップの笛を聞いた。

試合は後半に入った時点から、スコアレスのムードが漂いはじめていた。ワンチャンスをしぶとく決めるタフな戦いが求められたが、シーズン序盤の両チームはその力を持ち合わせていなかった。

小林伸二監督のもとJ1昇格へのリスタートを切った徳島は開幕4試合で2勝1分1敗となった。チームはまだ構築中だが試合ごとに連係は上がっているという。鈴木達也は「個の力はあるのでコンビネーションが上がれば、さらに良いチームになっていくと思う」と手応えを口にした。試合後、会見場前に姿をみせた小林監督は、他チームの結果を知るために会見場を通りすぎてスコアを見に行くなどシーズン序盤ながらも「上」への意識をみせた。「勝てなかったが勝点1を取ったことを評価して次へ向かいたい」（小林監督）。徳島は次節アウェイで千葉との一番を迎える。

2試合連続でスコアレスドローに終わった草津は、開幕戦以降3試合連続で白星から遠ざかる結果となった。開幕4試合を終えて痛感することは、簡単に勝てるゲームはひとつもないということだ。正田スタの芝生がまだ万全の状態ではないためポゼッションサッカーにブレが生じているのも確かだが、中盤を軸とした攻撃の歯車がかみ合っていないのも事実だ。4戦1勝2分1敗の草津にとって次節の東京Ｖ戦は序盤の山場となる。「東京Ｖ戦は今日の引き分けを活かすためにも絶対に負けられない試合となる」（北一真）。草津は、負けられない気持ちを勝利へのエネルギーに換えて突き進まなければならない。チームの成熟度を高めながら勝点を積み重ねることが上位に食らいつくための条件となる。

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2012.03.21 Reported by 伊藤寿学