9月27日(日) 2009 J2リーグ戦 第42節
草津 2 - 0 水戸 (16:05/正田スタ/6,069人)
得点者:54' 小林竜樹(草津)、61' 小林竜樹(草津)
スカパー!再放送 Ch183 9/28(月)20:30〜(解説:佐藤正美、実況:吉田学、リポーター:円戸由香)
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前節鳥栖戦の焼き増しを見ているようだった。前半こそボールを支配し、アグレッシブな動きを見せるものの、後半開始早々に失点すると、集中力を欠き、立て続けに失点。終盤はロングボールで打開しようとするが、相手の堅い守備をこじ開けらないまま試合終了。中3日で挑んだゲームであったが、チームとしての成長の跡は見られなかった。
唯一光明を見出すのならば、前半の出来だろう。「勝っていたときの雰囲気があった」と大和田真史が振り返るように、積極的なプレスからボールを奪取し、ロングボール頼みではなく、サイドをうまく使いながら攻め立てた。「勝っていたとき」以上にアグレッシブで攻撃的なサッカーを選手たちは披露。試合はどちらに転がってもおかしくない五分の展開のまま進行していった。
だが、その展開の中で問われたのが判断力であった。「ボールを持てているのか、持たされているのかという状態での判断が難しい」という大和田の言葉が示すように、均衡した状態が続いたことでチーム内に焦りが出始め、攻撃の選手と守備の選手との意識が乖離していった。54分、DFラインでパスを回していたが、前線の選手はロングボールを欲しがるあまりパスの受け手がなく、仕方なくGKにバックパス。そこに草津のプレスがかかったため本間幸司はタッチラインへ逃げ、「時間を作った」(本間)のだが、中盤の選手の戻りが遅く、すばやくプレーをはじめた草津の攻撃に対応しきれずに失点をしてしまった。ビハインドを背負うとさらに意識の乖離は顕著に。中盤は空洞化し、そのスペースを草津に巧妙に使われていった。61分には右サイドから攻め込まれ、ボールホルダーに対するチェックがないままズルズルゴール前にボールを運ばれて追加点を奪われた。
調子のよかったときはロングボールを多用し、FWの力を利用して先制することではっきりした試合展開に持ち込むことができていた。だが、水戸のロングボール攻撃が研究され尽くしている今、主体性を持った攻撃が求められている。ボールを持つ時間が長くなったことで今まで以上に判断力が問われるようになっているが、その部分での拙さが時間とともに如実に表れることとなっている。「一発で攻めるボールが多かった」(キム・テヨン)、「ロングボールをもっと使えばいいのに」(高崎寛之)というように、試合後の選手たちのコメントも統一感を欠いており、チームとして一体感を失っていることが失速の最大の原因と言えるだろう。
それはここ4試合で生まれたものではない。「自分たちは『これで勝てる』と思ってやってきたために、今、苦労している」という吉原宏太の言葉がすべてを表していると言っていいだろう。リーグ序盤から快進撃を続けてきたものの、シーズンが進むにつれ、FWの力に依存したカウンター主体のリアクションサッカーへと切り替わっていった。決してそのサッカーが悪いわけではないが、問題なのはチームが標榜していたアクションサッカーが見失われていったこと。チームとしての戦い方にブレが生じてしまったことが今になって響いている。FWの力が発揮されていた第2クールまではよかったが、第3クールに入り、その戦いが研究され尽くしたことで限界点に達することとなってしまった。今になって再び元の戦い方に戻そうとしているものの、付け焼刃な印象は否めない。判断力や意思疎通が培われておらず、時間とともにブレなくやるべきことを培ってきた相手との差がつくこととなっている。
思い出されるのは第1クール草津戦後の吉原の言葉だ。「もうちょっと中盤が躍動感を持ってパスをつないでくれないといけない。できる能力はあるんだから、あとはメンタリティの問題」と警鐘を鳴らしていた。しかし、改善することができないまま約半年の歳月を過ごしてきてしまった。勝利と代償にしてきたものは想像以上に重い。
残り9試合、求められるのは好調時のサッカーに戻ることではない。今後、水戸が目指すべきサッカーの道筋を示すことだ。当然、結果は重要だが、そこにばかり気を取られていると取り返しのつかないことになるのではないだろうか。順位こそ水戸が北関東の中では一番上とはいえ、第3クールに入り、実力差は完全に逆転されている。それが現状ということを認識しなければならない。今、水戸が積み上げるべきものは何なのかを整理することが次の一歩だ。それを見過ごすようだと、今後数年の痛手になるに違いない。このまま草津との差を広げられるわけにはいかない。この屈辱を胸に、新たな一歩を踏み出さなければならない。
以上
2009.09.28 Reported by 佐藤拓也