6月20日(土) 2009 J1リーグ戦 第14節
清水 4 - 1 山形 (15:04/アウスタ/17,865人)
得点者:5' 原一樹(清水)、9' オウンゴ−ル(清水)、46' 廣瀬智靖(山形)、51' 岡崎慎司(清水)、60' ヨンセン(清水)
スカパー!再放送 Ch183 6/22(月)17:00〜(解説:澤登正朗、実況:桑原学、リポーター:真鍋摩緒)
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実質的には、開始9分で試合はほぼ決まった。試合への入り方の差によって勝負が大きく分かれたことは、試合後の両監督のコメントにもよく表われている。
「山形は、守備のリズムに乗らせてしまうと、非常に強固なディフェンスをするチーム。この暑さの中、時間が経つほど両チームともクオリティが落ちる中で、立ち上がりから仕掛けて点を取ることができれば、自分たちのペースでゲームが運べると思った。逆に(攻めに)いかないで様子を見て、後半勝負という形で進めてしまうと、ゲームが難しくなると思っていた」(長谷川監督)
「立ち上がりにかなり(清水の)プレスがかかるだろうということで、最大の集中をしてやるように送り出した。しかし、9分で2点目を入れられてしまったことで、大きくゲームプランが崩れてしまった」(小林監督)
清水は、オーストラリアから帰国したばかりの岡崎慎司を左MFとして先発起用し、フローデ・ヨンセンと原一樹の2トップ。攻撃陣は、今季もっとも実績のある形をチョイスした。守備陣は、高木純平と青山直晃の出場停止により、4バックは初めての組み合わせとなったが、その戸惑いはほとんど感じられず、立ち上がりから左サイドバックの太田宏介が積極的に攻撃参加し、攻撃に厚みを増す。立ち上がり勝負の体勢を整え、キックオフ直後に原がドリブル突破からシュートを放つなど、全員が意思統一して初めからガンガン仕掛けていった。
山形も、ケガで欠場していた長谷川悠とレオナルドが先発復帰し、古橋達弥もベンチ入り。守備陣では、宮本卓也が出場停止で、疲労の蓄積した石井秀典を休ませた中で、顔ぶれの変わったDFラインに手痛いミスが出てしまった。
清水ペースで始まった開始5分、センターバックの児玉新が前線にロングフィードを送ると、何でもないクリアをレオナルドがまさかの空振り。もしもの場合に備えて詰めていた原が、裏にこぼれたボールを押しこみ、清水がどうしても欲しかった先制点をあっさりと奪った。
さらに、その後も清水が前からプレッシャーをかけて押しこみ、セットプレーの2次攻撃から市川大祐がミドルシュートを放つと、山形の選手に当たってコースが変わりオウンゴール(9分)。運も味方につけた清水が、いきなり2点のリードを奪うことに成功した。
これで余裕ができた清水は、その後は落ち着いてゲームをコントロール。守備では前からのプレッシャーが効いて押しこまれる前にボールを奪い、速攻が可能なときは行くが、行けないときは無理せずボールを確実につないで、山形に攻撃の時間を与えない。ロングボールもところどころで有効に使って、山形の守備に揺さぶりをかけた。初めからセーブせずに自分たちのペースを作ったことが、結果的に暑さの中で無駄な消耗も抑える展開にもつながった。
一方、山形のほうは、清水に前からプレッシャーをかけられると、落ち着いてボールを前に運ぶことができず、ミスも目立って攻めのリズムがまったく出てこない。清水のほうにも「3点目を狙いにいったけど、なかなかテンポが上がらなかった」(兵働昭弘)という不満はあったが、前半は完全に清水ペースに終始した。
だが、後半の立ち上がりは、山形が制する。両サイドのMFが高い位置をとり、清水のサイドバックへのプレッシャーを強めて全体を押し上げながら先手を奪う。そして、開始1分に左サイドを崩して宮沢克行がクロスを送ると、逆サイドから飛びこんだ廣瀬智靖が頭で押しこみ、良い時間帯に1点を返した。
ただ、これで慌てることなく、すぐに自分たちのペースを取り戻したことが清水の良くなってきた部分。前半はオーバーラップがそれほど目立たなかった市川も、前への意識を強め、山形が押し上げてきた裏を狙った。そして、失点の場面では廣瀬へのマークを外してしまった岡崎が、その借りを返し、流れを取り戻す大きな一仕事を見せる。
左MFに入った岡崎は、この日もいつものように左から中に飛び出していくダイアゴナルランを前半から繰り返し、周囲もその動きにパスを合わせるという狙いを見せていた。6分の得点もまさにそのパターン。岡崎の動き出しに合わせてセンターバックの岩下敬輔が正確なロングフィードを送り、これを岡崎が胸で落として右足を一閃。得意とする右45度から日本代表で見せたシュートと同じようにゴール左隅に突き刺し、山形に決定的なダメージを与える3点目を奪った。
さらに清水は、15分にカウンターからチャンスを作り、切れ切れの原が右からドリブルでDFを抜き去ってラストパス。ニアに飛びこんだヨンセンがこのボールをしぶとく押しこんで、今季初の4得点。取るべき3人が1点ずつ取ったという意味でも、攻めの形という意味でも、非常に収穫の大きなゴールラッシュだった。
山形は後半9分に古橋を投入し、本来の長谷川、古橋の2トップが復活。3点差にされた後も、試合を捨てることなく左右からのクロスで何度かチャンスを作ったが、シュートの精度と威力を欠いて2点目は奪えない。ところどころで押しこむ時間帯も作ったが、清水は30分に藤本淳吾、33分にマルコス・パウロとMF2人を投入して中盤にタメを作り、流れを明け渡すことはなかった。
結局、清水は暑さの影響を感じさせることなく最後までゲームをコントロールして、4-1のままタイムアップ。リーグ戦では今季初の3連勝を飾った。
山形にとっては「再開の一発目ですごくもったいないゲーム」(小林監督)となったが、ある意味切り替えやすい面もある。ケガ人も戻った中、次のホームゲーム(川崎F)でどれだけ自分たちらしいサッカーができるかが重要になるだろう。
一方、再開初戦を理想に近い形で終えた清水は、これで昨年の最終順位と同じ5位(暫定)に浮上。攻撃の調子が上向き、上位追撃に向けて着実に体制を整えつつある。
以上
2009.06.21 Reported by 前島芳雄