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【J1:第34節 大宮 vs C大阪】プレビュー:追いつめられた大宮、J1残留をかけて桜の矜持を迎え撃つ(14.12.06)

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運命の時がいよいよ迫ってきた。大宮が昇格以来9シーズン守り抜いてきたJ1の椅子を守れるか、それとも失うのか。すべてはこの最終節、ホームで行われるC大阪戦にかかっている。それも自力での残留はない。勝ってなおかつ清水が甲府に負ける、その条件が満たされなければ、NACK5スタジアム大宮が歓喜に包まれることはない。大宮は追いつめられた。しかし、少なからず希望はある。

希望というのは、16位・大宮と15位・清水との勝点差は3だが、両者の得失点差がともに−18であることだ。つまり大宮が勝ち、清水が負けた場合、得失点差では必ず大宮が上回る。もちろんその先は他力本願ではあるものの、「1-0の勝ちで良い」という事実は、この厳しい状況にあってわずかに渋谷洋樹監督の気持ちを明るくしている。
もし“大量点差で勝たなければならない”となれば、攻守のバランスをかなぐり捨てて攻めるしかなく、逆に大量点を奪われて負けることにもなる。その怖さをだれより渋谷監督自身が知っている。2011年のJ1最終節、16位の甲府が残留するには、勝ってなおかつ15位が負け、さらに14点の得失点差を引っくり返さねばならなかったが、大量得点を意識するあまりに甲府は焦り、ミスから失点を重ね1-3で敗れた。その対戦相手が大宮だったことも運命的だが、そのとき渋谷監督はコーチとして甲府のベンチに座っていたのだ。それだけに、「ここ5試合で4敗しているが、すべて1点差の負けで、2点差や3点差では負けなかった。選手たちが粘り強く戦ってくれた結果であり、それが最後につながれば」と、指揮官は状況をポジティブにとらえている。

とにかく大宮はC大阪に勝つだけだ。C大阪は前節、鹿島に1-4と大敗して降格圏内となる16位以下が決定した。2度の監督交代も歯車は最後まで噛み合うことはなく、チーム内の不協和音も明るみに出ており、この最終節に集中するのも難しい状況だろう。ただC大阪とて、このままシーズンを終えられまい。「プライドをかけて向こうも勝ちにくる」(渋谷監督)のはプロとして当然であり、さらにC大阪にすれば、勝てば大宮と入れ替わり、16位でシーズンを終えることができる。下位3チームすべてが自動降格となった2009年以来、16位のチームはすべて1年でJ1に復帰しているのに対し、17位のチームは2012年のG大阪を例外として、すべて1年でのJ1復帰に失敗している。それはC大阪にとって大きなモチベーションとなるはずだ。

ただしC大阪が扇原貴宏とカカウを出場停止で欠くことは、大宮にとって明るい材料なのは確か。ここ2試合、いずれも大宮はロングパスから裏に抜け出されて先制点を奪われているだけに、精度の高い左足を持つ扇原の不在は幸運といっていい。もちろん「永井龍と南野拓実、杉本健勇らのランニングは脅威」(渋谷監督)であることに変わりはなく、大宮としては前節までの反省を踏まえて、「ボールの出どころをしっかり抑えることと、プレッシャーがかかっていないなら下げて」(清水慶記)、曖昧にならないようにしたい。大宮に出場停止はないが、キャプテン菊地光将はこの最終節にも復帰できず、前節と大きなメンバー変更はない見込みだ。

大宮としては何より、早い時間に先制点を奪われないことだ。今のC大阪の状況で、引いて守りを固めて、焦る大宮を誘い込んでカウンターをねらう戦い方を選択することはないだろう。前半からバランスを崩して攻めに行く必要はない。もちろん早い時間に得点すれば清水にプレッシャーを与えることはできるが、それで焦ってカウンターを食らっては元も子もない。大熊裕司監督就任以来、C大阪は日本人FWが前線から猛烈なプレスをかける守備戦術を採っているが、後ろが連動せずに間延びする欠点を修正できずにここまで来た。横のスライドも人数をかけて追い込んでくるが、そこで奪いきれずにファーサイドが空いてピンチになる事も多い。攻撃では丸橋祐介と酒本憲幸の「クロスが武器であり、そのクロスへの飛び込みも鋭い」(渡邉大剛)が、跳ね返せば逆に彼らの裏は大宮にとって有効なスペースになる。
アグレッシブな4-4-2の、長所も短所も分かりやすく出ている相手だけに、大宮としては「ここまでやってきたことを、しっかりやる」(渋谷監督)ことが勝利への道だ。もちろん異常な重圧の中でたやすいことではないが、J1に残れるかどうか試されるのは、結局はシーズンをかけてどれだけチームが積み上げてきたかなのだ。「サッカーの神様は最後のチャンスを与えてくれている。最終的には他力だけど、自力でつかまなければ何も始まらない。未来を変える意思を持って、最終節を戦います」と、渋谷監督は言葉に力を混めた。

渋谷監督にとって、忘れられない情景がある。それは第27節アウェイ甲府戦、1000人を超える大宮サポーターが小瀬に結集したときのことだ。折しも近づいた台風に、土砂降りの雨の中、だれもがオレンジのポンチョに身を包んだアウェイゴール裏は、リーグ5戦目の新人監督にとって「一面のオレンジが鮮やかで、とても心強く」映った。何度も「あの応援で勝たせてもらったと思っている」と口にする指揮官は、翻って、ホームのサポーター席が100%のオレンジに染まりきらないことを残念がる。
「オレンジに染まったスタジアムで勝利するのが夢なんです。冬になるとどうしても黒とか着る人が多くなるけど、雨が降ってなくてもポンチョを着てもいいし、何でもいいのでオレンジ色のものを着て、見に来ていただきたい」。
スタンドがオレンジに染まれば勝つわけではないし、勝っても確実に残留できるわけでもない。ただそれでも、ファン・サポーターの力は選手を、監督をも勇気づけるし、勝たなければ残留の可能性もない。清水にしてもプレッシャーはかかる。堅守を誇りここ5試合で3勝2分の甲府に対して引き分け以上というのは、たやすい仕事ではないはずだ。おそらく日本平もオレンジに染まるだろうが、これは、どちらがよりスタンドをオレンジに染めて後押しできるかという戦いでもある。

清水が負ける可能性がどれくらいかは、我々が考えることではない。ただ可能性が、『ある』。そのことだけで十分だ。可能性がある限り、それを信じて選手たちは「最後まで諦めずに戦う」(金澤慎)だろう。その背中を押し、残留をたぐり寄せるために、やれることはすべてやる。どうかその気持ちを持って、ホームNACK5スタジアムをオレンジに染めていただきたい。

以上

2014.12.05 Reported by 芥川和久
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