柳沢敦が引退する。
広島にとっての強烈な思い出は、なんといっても2006年3月5日(広島vs鹿島)の出来事だ。前年は夏場まで優勝争いに関わり、7位という賞金獲得圏内でフィニッシュ。J1で一桁順位を達成したのは2001年以来という好成績を成し遂げた広島は、さらなる成長を求めて大型補強を敢行。名古屋で3年連続20得点を記録し、得点王にも輝いた破壊力抜群のストライカー=ウェズレイ。2002年のワールドカップで日本代表の中盤を引き締め、イングランドでも活躍経験を持つ戸田和幸。2人の大立者だけでなく、新潟でポストプレーヤーとして開花した上野優作や湘南の中盤を支えた元U-21日本代表・中里宏司など、実績も可能性もある選手を獲得し、選手層の厚みを増幅させた。キャンプは決してうまくいったとは言えないが、それでも戦える自負はあった。
だがそんな広島の自信が「過信」だったことを強烈に心証づけたのが、イタリアから帰国したばかりの柳沢の破壊力だった。1-1で迎えた38分、青木剛の右クロスをヘッドでたたき込む。その直後、佐藤寿人のゴールで広島が同点に追いついたが、4分後に小笠原満男のパスを流し込んで2点目。さらに圧巻は71分の3点目だ。CKに合わせた青木のヘッドがバーを直撃。その跳ね返りを狙い澄ましたオーバーヘッド。GK下田崇が一歩も動けないテクニカルなシュートは、広島の息の根を止めた。佐藤・ウェズレイの2トップも3得点と気炎をあげたが、全ては柳沢のインパクトにもっていかれた。
J1リーグ戦通算108得点、日本代表では58試合17得点。今季は第31節・G大阪戦の試合終了間際、0−1の劣勢を跳ね返すゴールをゲット。仙台をJ1残留に導く活躍を見せて、偉大なるストライカーはスパイクを脱ぐ。
彼が先発で出てくるのか、それともベンチスタートとなるのか、それはわからない。だが、日本サッカー史に残るFWの引き際にふさわしい熱戦を、広島も仙台も演出する義務があるはずだ。
広島と仙台との戦いの歴史は、常に熱戦である。リーグ戦初対決となった2002年、仙台では2点をホームチームが先制し、広島が追いつき、また仙台が突き放して勝利。同年の広島スでの2ndレグでの対戦では1−1から延長戦となり、残り3分(117分)に仙台がVゴールを決めて連勝した。無人の野を行く2008年の広島に対しても、仙台は1勝2分と負けていない。2010年、下田崇の引退試合となった仙台戦(ホーム最終試合)は後半アディショナルタイムの大崎淳矢(現徳島)のゴールで広島が勝利すると、2012年はアウェイ・ホーム共に首位決戦。ユアスタでは先制・逆転・同点というめまぐるしい展開で2−2、広島ビでは高萩洋次郎の泥くさいゴールで2−1と勝利し、優勝への足がかりを築いた。
今季、ユアテックスタジアムでの広島対仙台戦も、互いの特徴がよく表現された熱戦。ボール支配率でもシュート数・枠内シュート数などでも広島が上回り、具体的なチャンスも広島の方が多かった。だが、仙台はスローインからのクロスを赤嶺真吾がヘッドでたたき込んだ虎の子の1点を堅い守備で守り切って勝利を飾っている。
当然、広島としてはリベンジを果たさねばならない。2008年以来6連勝、2000年の磐田戦に0-3と敗れて以来負けがないという絶対的な強さを誇るホーム最終戦ではあるが、それはあくまで歴史の一部。未来を約束してはくれない。ただ、川崎F戦の後半だけで17本のシュートを放った攻撃陣は、好調を持続していることは確か。甲府・川崎Fと未来の主役である若手の起用を決断した森保一監督だが、今季の締めくくりとなる1戦では現時点でのベストメンバーを起用し、必勝の構えをとるはずだ。
第33節終了時点での反則ポイントが-20と過去最少を記録。3年連続となるフェアプレー賞高円宮杯獲得をほぼ確実なものとしている広島は、昨年の対新潟戦からスタートした「連続フルタイム出場警告なし」記録を継続中(現在42試合)の水本裕貴選手を中心に、フェアで激しい技巧を見せつける。一方、J1残留を自らの手中に収め、堅守速攻の形を研ぎ澄ました仙台が、柳沢敦をどういう形でピッチに送り出すか。2014年最後の激戦を、90+アディショナルタイムまで、堪能したい。
以上
2014.12.05 Reported by 中野和也
J’s GOALニュース
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