今季開幕戦、徳島はJ1初チャレンジの一戦目となったその戦いに並々ならぬ意欲を燃やして挑んだ。選手全員が非常に高いモチベーションを持ってそれへ臨んだと言えるだろう。しかし、そこでの結果は0-5という大敗。チームはいきなり国内最高峰リーグの厳しさを突きつけられ、入念な準備で築いてきた自分たちのサッカーへの自信も完膚なきまでに叩き壊されてしまった。そしてそれ以降徳島はズルズル開幕9連敗を喫したが、いずれにしても初戦の大敗が選手たちに与えたショックは相当大きかったと言って間違いなく、その相手こそが他でもない今節迎える鳥栖であった。
さらに遡って3年前(2011年シーズン)にも、徳島はJ2のステージで鳥栖に忘れられない敗戦をしている。今節と同じ鳴門の地でJ1昇格争いから後退させられるあまりに痛い黒星。その時の苦い想いは、クラブも、ファン・サポーターもまだハッキリ覚えているはずだ。
そうした背景に加え、J1ホーム初勝利が強く求められていることを考えれば、徳島はこの一戦を是が非でも獲らなければならない。二度の大きな借りを返し、クラブの歴史に刻まれる勝利を何としてももぎ取らなくては。
そこでゲームにおいて大きなポイントとなるのが、非常にシンプルな要素ながら、チーム全体の動きの量である。J1でも屈指の運動量を誇る鳥栖に対して走り勝てるかというところ──。事実、冒頭で触れた今季開幕戦を振り返ると、徳島はその部分の明らかな差によってゲームを失った。先発した小暮大器が「球際の強さだとか走力というところで全て負けてしまった」と語っていたことが思い出されるが、常に数的優位を作られて局面を制圧されたことによりチームは何も出来ない状態へ追いやられたのである。
それだけに今節同じ轍を踏むわけにはいかない。前回対戦の反省をしっかりと活かして動きの量を増やし、徳島はその時と真逆のシチュエーションを作り出すことが不可欠だ。さらにもうひとつ踏み込んで言うなら、その動きの量に次への予測もプラスしたい。セカンドボール争いがこの一戦でも大事な位置づけにあるのは間違いないのだから、個々が的確な予測で鳥栖より早くそれへの反応を示す必要があろう。特に守備面においては、失点リスクの高い自陣深くで釘付けにされる波状攻撃を受けないためにそれが絶対欠かせない。「チーム全体で連動し、チャレンジ&カバーをよりいっそう意識して、隙の無い試合をしたい」と口にする橋内優也や福元洋平らのコーチングのもと全体が集中力を保ち、その予測を途切らせることなく実践していくことが重要となる。
シーズンとしての悔しい結末はもうすでに決まってしまった。しかし今節の戦いには軽んじることなど決して出来ない目的がハッキリと存在する。それを考えれば、徳島がピッチですべきは全てを出し切る決死の戦いしかない。選手たちがどれほどのハードワークを見せるのか、大いに注目だ。
さて対し鳥栖としては、ACL出場を射程圏内に捉え、他力とは言え数字上まだ優勝の可能性も残っている状況。最下位の決まっている徳島に足元をすくわれるわけにはいかない。開幕戦同様、持ち前の運動量でピッチ上を支配して確実に勝点3を積み上げたいだろう。しかも前節では終了前の7分間でゲームをひっくり返し、チームはシーズン最後の追い込みへいい雰囲気になってきている。となればそれをさらに加速させるためにも当然負けられない。
ただ、鳥栖としては、自らのフィニッシュ精度には注意すべきではないか。それによって前々節を落とし、前節もその問題を引きずりかけていたが、決め切れなければどうしても流れは悪くなるとあってその問題の発生だけは何としても避けなければならないだろう。初ゴールという結果を出して日本代表から戻ってきた豊田陽平をはじめとするアタッカー陣がそこにどのような改善をしてくるか、興味深いところである。
以上
2014.11.21 Reported by 松下英樹
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