「勝たなければいけない試合。もったいない試合だったと思う」。城後寿の言葉が、この試合のすべてを物語る。2つの失点シーンを除けば、福岡に大きな問題はなかった。むしろ、90分間に渡って狙い通りのサッカーができていたと言っていいだろう。しかし、結果は2−2のドロー。ファン、サポーターのために勝利を届けたいと言う想いは叶わなかった。これで福岡は7戦勝ちなし。ホームゲームに限って言えば、第28節の岐阜戦以来、83日間にも渡って勝ちがない。試合終了のホイッスルがなった瞬間、スタジアムをやりきれない想いが包んだ。
「選手たちのファイティングスピリットや、戦う態度という点では良かった」とマリヤン プシュニク監督が振り返ったように、この日の選手たちは力の限りに戦っていた。開始3分、最も警戒すべき相手である都倉賢のマークを外すという初歩的なミスから失点。これまでの試合なら、そのままバランスを崩して失速していたはずだ。しかし、守備意識を高める札幌に対して辛抱強くボールをキープ。12分に金森健志が決定的なシュートを放つと、それを合図にしたかのように札幌を圧倒する。
そして、21分に城後が、38分には金森がゴールを奪って逆転に成功。45分に再び都倉に決められて同点に追いつかれたが、後半も積極的に攻めに出て決定機を作り出した。だが、都倉に許した2ゴールが最後まで響いた。「向こうの強みは都倉選手の高さと強さだということを分かっていながらフリーにしたら、それは失点してしまう。あそこは確実に抑えなければいけない部分だった」と、坂田大輔は試合を振り返った。
届かない想いを抱いたのは、札幌も同じだった。都倉がゴールを奪った試合は、ここまで9勝1分と負けがない。しかも開始直後の先制点と、チームが防戦一方に追い込まれる中での同点ゴールは、チームに、そしてサポーターに戦う勇気を与えたはずだ。だが、この2つのシーン以外では、攻撃らしい形を作ることができなかった。ここのところ、4バックの相手に対して主導権を握られる試合が続いているが、この日、システムを4バックに変えて臨んだ福岡に対しても、相手を崩すだけの有効な攻め手を見つけられなかった。
札幌にとって悔やまれるのは、先制点を奪った後の戦い方だった。最初のうちは、守備意識を高めて自陣内に守備ブロックを形成。福岡にボールを持たせておいて、追加点を狙っているように見えた。しかし、前へ圧力をかけ続ける福岡の前に、次第に最終ラインが下がり、中盤が間延びし、セカンドボールを支配され、連続攻撃にさらされた。そして2失点は、セットプレー時のマークミスと、自陣深いところでのパスミスから生まれたものだった。
この試合に先立って行われていた試合で大分が勝利していたため、試合終了のホイッスルが鳴った瞬間に札幌の7位以下が確定した。「ギリギリのところで、あと一歩、勝ちが出ない。それがシーズンを通して続いたことが、最後の勝点を上積みできなかった理由だと思う。今日の試合が、それを集約しているような気がする」と話すのは都倉。これで、東京V、讃岐、福岡に3連続ドロー。シーズン途中でバルバリッチ監督を招へいし、J1昇格プレーオフ進出を目指したが、終盤の大事なところで勝ち切れなかった。
だがリーグ戦は終わったわけではない。バルバリッチ監督は「目標を達成することができなかったが、それを現実として受け止めることが大切。その上で、次に進まなければいけない。まだ終わりではないし、まだ1試合残っている。そこで最善の結果を得られるように準備していくだけ」と話す。それは札幌に限ったことではなく、福岡も同様。常に大事なのは目の前の試合。どんな状況であれ、そこで全力を尽くせない者に未来はない。
福岡も、札幌も、シーズンラストゲームはともにホームゲーム。ここまで熱い声援を送り続けたホームのサポーターの前で、今シーズン最後の勝利を目指す。それは次に向かってのスタートでもある。
以上
2014.11.16 Reported by 中倉一志
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