千葉が対戦相手に先制点を許すのは、今節で４試合連続。その後の森本貴幸、ケンペスと２人のストライカーの連続得点で逆転勝利を収め、確かに今は『一戦必勝』で、ある意味結果が全てと言える。だが、いよいよ迎えるＪ２リーグ戦最終節の次節、その先にあるはずのＪ１昇格プレーオフに向けて、攻守の問題点の改善が改めて求められる一戦となった。

先に失点してしまうというのは、言い換えれば先に得点できていないということだ。３バックの富山は守備時に両ウイングバックも引いて５バック気味となることもあったが、前線から最終ラインまでコンパクトな陣形で、ディフェンスラインが高い位置を取ることも多かった。だが、前半の千葉はボールを保持できて富山の守備ブロックの周囲でパスは回せていたが、ディフェンスラインの背後を突く形の攻撃が少なかった。

千葉がパスを回して手数をかけているうちに富山の選手がペナルティエリアの中や前に多く戻るため、シュートは打ててもペナルティエリアの外から。積極的にミドルシュートを打った町田也真人が言ったように、それでゴールを狙うのは悪いことではない。だが、それだけでは富山の安間貴義監督のハーフタイムのコメントに「（千葉は）エリア内に入ってシュートを打てていない。このまま最後まで対応しよう」とあったように、富山の脅威になっていなかった。時にはシンプルにディフェンスラインの背後へロングパスを入れ、飛び出した選手が決定機を作る攻撃も織り交ぜて富山の守備ブロックを崩したかった。

千葉とは逆に、富山はシンプルに千葉のディフェンスラインの背後を突くように前線へロングパスを出し、そこに選手が走りこむ形が目立った。千葉がシュートで終われない形ではボールを奪うとカウンター攻撃を仕掛けた。そして、その徹底した形から富山が先制点を奪う。48分、千葉が中村太亮のＦＫから森本が放ったヘディングシュートがゴールポストの横に外れると、53分、森泰次郎のスルーパスで宮吉拓実がうまくスペースへ抜け出す。千葉のキム　ヒョヌンが対応するも宮吉のシュートは反応した千葉のＧＫ高木駿の手を弾いてゴールイン。富山が狙い通りの試合運びで見事に先制した。

だが、ここで千葉は安間監督の過去の対戦時の印象である「１点取られたら、たぶんもっとドタバタした」姿とは違った姿を見せた。単純なサイドからのクロスは前半に中村のアーリークロスが何度かブロックされたように富山にケアされていたが、58分、町田がサイドを突いて攻める形の中で相手の背後に出る『３人目』の動きからクロスを上げ、森本がヘディングシュートを決める。同点に追いつき、千葉の関塚隆監督はケンペスを入れて１トップから２トップに変更。その交代から１分後の63分、ＦＫ後の流れから中村のクロスにケンペスが走りこんでヘディングシュートを決めて逆転に成功した。

だが、富山は勝利をあきらめず、苔口卓也を入れてカウンター攻撃の鋭さを増す。ここで千葉はカウンター合戦を避けるべきだったが、行ったり来たりの展開にしてしまって富山にチャンスを与えてしまう。それでも富山の決定力不足に救われて勝ったが、山口智は「自分たちがボールを持っている時、ドリブルではなくて前のほうでパスをしてほしい。２人、３人とキープしに行って相手に取られるのではなくて、もっとボールを動かせば空いているところはいっぱいある。ボールはいくら走らせても疲れないわけなので、もっとシンプルに味方を使ってサイドを変えればいいと思う」と試合後に苦言を呈していた。

千葉は攻撃に工夫を凝らすエンジンのかかりが遅く、失点してやっとフルバワーになる試合が続いている。今節の他のチームの結果によって４位に浮上したが、立ち上がりから頭も体もエンジン全開で戦えなければ、21位が確定した讃岐に次節で足元をすくわれかねない。その先の道を決められるチャンスを生かすも殺すも自分たちの戦い方次第だ。

以上

2014.11.16 Reported by 赤沼圭子