鹿島が新潟に2−1で逆転勝ちし、3位をキープ。優勝戦線に踏みとどまった。前半に先制されたが、62分に中村充孝のゴールで追い付いて迎えた86分、西大伍が勝ち越しゴールを決めた。新潟は43分に鈴木武蔵のゴールで先制するが、リードを守り切れなかった。
自分の名前をコールする鹿島サポーターの喜びに、西はガッツポースで応えた。86分、右サイドのペナルティーエリア前で相手のクリアのこぼれ球を拾った。「思い切って仕掛けた」とゴールに向かう。止めにきた新潟・田中亜土夢の股を抜いて放ったシュートは、ファーサイドのポストに当たってゴールマウスに吸い込まれた。
「狙い通りのコースに打てて、決まったときはうれしかったです」。2010年の1シーズン、新潟に在籍した。ビッグスワンはサイドバックとしての能力を開花させた、かつてのホーム。その場所でのゴールを決めたのはこれが初だ。ブロックにきた田中とは同い年で、今も交流がある。「亜土夢が一瞬、悔しそうな表情をしていました」。親友との駆け引きを制して決めた1点が、5試合ぶりの勝利を呼び込んだ。そして逆転優勝に可能性を残した。
「前の選手が相手にプレッシャーを掛け続けてくれて、最終的に決めたのが僕だった」。西は決勝点につながる流れをチームの流れを強調した。前半は新潟のプレッシャーに苦しみ、自陣で耐える時間が長かった。その中でカウンターから先制を許した。それが後半に入ると、逆の流れに。前線からのプレスを強め、相手のラインが下がったところできっちりとつないで波状攻撃。ミスを誘った。
同点ゴールはセットプレーから。右サイドからのフリーキックを、小笠原満男がゴール前のファーサイドへ。そこに走り込んだ中村が右足で合わせた。そして西の決勝点。その1分前、新潟に縦につながれて、決定的なシュートを許していた。それが外れた直後のチャンスをものにした。
相手のリズムに惑わされず、したたかに自分たちのペースに持ち込んだ。要所でゴールを決めた。終わってみれば鹿島らしい強さを見せての勝利だった。負ければ優勝がなくなる可能性もあった試合で、きっちりと手にした勝点3。「今日の勝利で何かを成し遂げたわけではない。アウェイでしっかり勝つことができた」。トニーニョ セレーゾ監督の淡々とした感想が、チームの地力を示していた。
逆転負けを喫した新潟の柳下正明監督も、淡々とした口調で言った。「サッカーはやはり難しいと感じた」。前半は新潟のペースだった。前線のプレスからボールを奪い、カウンター。縦に速い攻めだけでなく、パスをつないでサイドを崩しシュートにつなげた。
鈴木の先制点もその流れで生まれた。17分、松原健が相手ボールを奪って、中央の指宿洋史へ。そこから出たところに鈴木が走り込んでゴール。少ないタッチできっちりと決めた。ただ、得点シーンはここだけだった。
「1点しか入らなかったからこういう結果になった。ゴールから20メートルエリアでの精度を上げることが必要と感じた」。柳下監督が言うように、追加点を挙げるチャンスは多くあった。逆転ゴールを許す直前もそうだった。山本康裕、指宿とつないでレオ シルバがゴール正面でシュート。それがバーの上を越えた。シーズンを通して課題になっている決定力不足は、ここでも顔を出した。
失点は相手の得意なセットプレーとカウンターから。フリーキックでマークを確認し切れないときに同点にされ 、ボールを失ってたところから決勝点を許した。自分たちのプレーはできていたが、一瞬の隙を突かれての逆転負け。優勝を争うチームとの力の差を見せつけられた。
試合そのものは、ともに得点を強く意識した好内容。そこからそれぞれ、得たものもある。リーグ戦は残り3試合。鹿島は優勝という目標が明確になった。新潟は難敵相手に自分たちのペースに持ち込んだ。今度はそれを白星につなげることがテーマになる。
以上
2014.11.03 Reported by 斎藤慎一郎(ニューズ・ライン)
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