新潟と甲府は0-0で引き分けた。新潟は3連勝を逃し、甲府は15位に降下。シュート数は新潟が1本、甲府は5本。新潟は守備を固めた相手を攻めきれず、甲府はしのいでからの攻撃の精度を欠いた。
新潟のキャプテン、大井健太郎が思わずこぼした。「お客さんは見ていてつまらなかったと思う」。シュート は前半がゼロ、後半4分、指宿洋史が放ったヘディングが唯一のシュートになった。大井は「相手は0-0でOKだったと思う。その通りにされてしまった」と悔しそうに言った。
立ち上がりから守備を固めた相手を攻め切れなかった。クロスもスルーパスも、人数をかけたゴール前の壁を崩すことはできなかった。前半からボールポゼッションでは圧倒した。そこから落ち着いてスペースをうかがい、スイッチを入れた。ただ、鈴木武蔵が「みんなイライラしていた」というように、予想以上の強固な守りに、冷静さを失っていった。
バイタルまで侵入しながら、シュートに持って行けない。パスミスからボールを失い、ゴしてゴール前に攻め込まれた。時間が 経過するに連れて、そんなシーンが増えていった。「もっと裏を狙う回数を増やして、連動して攻撃しなければならなかった」。田中亜土夢は反省を挙げた。
今季、引いた相手を崩すことをテーマに、狭いスペースできっちりとパスをつなぐ形に取り組んできた。前半、両サイドでサイドバックとサイドハーフにボランチが絡みながらスペースを突く形は見えた。ただ、肝心なシュートに至らない。「判断が悪いプレーがかなり見られた。冷静にプレーしてくれたら、もう少しチャンスが作れたかなと思う」と柳下正明監督は言った。
ミドルレンジでチャンスをつかみながら、パスを選択しボールを失うシーンが重なった。サイドで起点を作っても、全体のテンポが上がらずに、相手に守備を整える時間を与えた。「引いた相手を崩すセオリーは、ミドルかサイド攻撃。もっと多用しなければならなかった」。大井健太郎が言うように、効果的な攻撃を選択できなかった。その結果が1本のシュートだった。
連勝は伸ばせなかった。もっとも、負けなかったことも事実。守備は3試合連続無失点。甲府のカウンターにさらされても、冷静に対処。裏に入れられたボールも体を張って防いだ。「選手は一生懸命やっている」。柳下監督も認めるように、集中力も高かった。鈴木は言った。「すごく悔しい。もう1回気持ちを引き締める」。勝点3を奪えなかったことで。闘志には再び火がついた。
甲府も結果的に 勝点3をものにできなかったことが、残留争いにも影響することになった。14位から15位に順位を下げ、16位清水とは勝点1差。序盤から5バック気味にし、新潟の進入を防いだ。ゴール前では徹底してスペースを与えなかった。相手をシュート1本に封じたことは、狙い通りだった。
ただ、ゴールも遠かった。後半、阿部拓馬、キリノらを軸にカウンターからゴールに迫った。それでも新潟の守備のしつこさに、シュートを効果的なタイミングで打つ場面は少なかった。引いて守っていた分、攻撃を仕掛ける位置が低かったことも影響した。
城福浩監督は「レオ・シルバを筆頭としたハンティングからのカウンターを食らう場面は、それほど多くはなかった」と守備面では合格点を出した。一方、「シュートに行けそうなところでタイミングが遅かった。もうひと踏ん張り、もう一工夫が必要」と攻撃の課題を挙げた。
狙い通りにできなかった新潟と、意図した形に持ち込んだものの、得られた成果には満足できない甲府。共通して言えるのは、中3日で迎える次節まで、下を向く間はないということだ。
以上
2014.10.19 Reported by 斎藤慎一郎(ニューズ・ライン)
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