選手たちは意地を見せた。そのプレーからは必死さも伝わってきた。だからこそ運も味方につけ、結果として神戸に白星をわたさなかった。
しかし、徳島は勝ち切るまでには至らず。勝点の上積みは1に留まってしまった。そのため、今節の降格決定こそ関係していた他チームの結果が幸いな方へ転がったこともあって免れたが、次節は今節以上に厳しい条件に。敗れればその瞬間に降格決定、勝利しても大宮と甲府が同じく勝点3を手にするとJ1残留の可能性は完全に断たれてしまうことになった(大宮については引き分けでも追い付けなくなる)。
ただ、書き出しで述べた通り、今節の徳島は評価していいパフォーマンスを見せたと言える。
その根拠のひとつはまず守備で、特に前半のそれは小林伸二監督も「何回かはやられましたがいい形で試合に入れたと思います」と振り返っていたように神戸を悩める状態へ追いやれていた。実際チームは神戸が狙う裏スペースへのフィードにしっかり対応。「意識的にラインを落とし、中盤の層を締めた状態(小林監督)」で突かれる空間を減らし、そこへボールを出されても福元洋平や橋内優也らがカバーに入って上手く処理していたと言えよう。また神戸の大きな左右への揺さぶりに対しても組織が素早いスライドで対処出来ていたのは間違いない。先制された29分の場面だけはマルキーニョスをフリーにしてしまったが、それ以外のところではかなりの安定を披露出来ていたのが事実だ。
また後半も、最後のところの粘り強さは決して失わなかったと言っていい。投入された森岡亮太が神戸の攻めを流れるようなショートパス主体へ導いたことで相当振り回され、その森岡に痛恨の同点ゴールを許しはしたが、徳島は全員が高い集中をもってボールに食らいつけていた。いずれにしてもこの一戦におけるチームの守備は連敗中の時からかなり改善された内容であったと評せるのではないだろうか。
それともうひとつ、奪ったボールを相手ゴールへ向かうイメージのもとしっかり前へ運べていたことも今節の好印象点である。もちろん何度も繰り返しとまではいかなかったものの、25分に佐々木一輝、高崎寛之、衛藤裕で作った決定機は素晴らしい連携であったし、前半終了間際にアレックスが挙げた得点も大崎淳矢ら複数人が絡む見事な形であった。さらに後半も、2点目に繋がるカウンターをはじめとして徳島はそれを強く継続。右サイドで佐々木がパワフルなドリブルを仕掛ければ、大崎も深い位置へ果敢に入り込んでチャンスメイクを図っていた。
さすがにゲーム終盤は防戦一方となったためそうした攻めも消えてしまったが、それでもチームの示したそのような部分はやはり次への希望を湧かせるもの。自分たちの勝負にまず勝つことが何より前提の4日後に対しては明るい材料が見えたと記していいだろう。
J1に踏み止まれる可能性は状況からして正直相当低い。だが、ほんの僅かでも光が残る限り、選手たちは持ち得る全てを尽くしてそれを追いかけなくては。22日に迎えるC大阪との一戦、重苦しい重圧ものしかかる中で徳島はどのような戦いを展開するのか。今からもう注目である。
さて対し神戸に関して言うと、試合後のサポーターの強烈なブーイングが象徴した通り、今節の引き分けは受け入れ難い結果以外の何ものでもないだろう。実際に安達亮監督も「我々としては引き分けでは満足出来ないゲームでした」と会見で語っていたが、終盤の追い上げを目論みながら最下位・徳島に2失点して勝ち切れなかったのだから。
とは言え、森岡が投入された後半のチームは前線に変化と活性が生まれ、非常にハイレベルな連動感を表現。細かなパスワークが至る所で出るようになり、攻めあぐねた前半が嘘のように次々と好機を作り出した。その戦いを見ると、森岡への依存が大きいことは否めないが、まだまだ期待感はある。この日の反省に全員できっちり向き合えれば次節にはきっと浮上への成果を手に出来るはずだ。
以上
2014.10.19 Reported by 松下英樹
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