長きに渡り戦ってきたリーグ戦も残り１０試合。Ｊ２自動残留を目指す讃岐とJ1昇格プレーオフ圏内に食い込みたい長崎。両チームにとって、残り“もう１０試合”ではなく、残りは“まだ１０試合”もある。

長崎は前節、ホームで１４戦無敗の横浜FCと対戦。前半序盤は横浜FCが主導権を握るも長崎は守備からリズムを生み出す。シュート数は長崎５本、横浜FC６本と、ほぼ互角の戦い（ゲーム全体では長崎９本、横浜FC１０本）。後半も一進一退の攻防となったが均衡が破れたのは６３分。佐藤洸一がペナルティエリア内でファウルを受け、自ら蹴りこんで３試合連続ゴールとなるＪ２・３年連続２桁得点を達成。８４分、今度は横浜FCにＰＫを与えてしまうもＧＫ植草裕樹がはじき返し、１−０で勝利。横浜FCキラーの名を馳せた。

この試合は、がっぷりと四つに組んだ戦いで、山口素弘監督も言うように「ウチはＰＫを決められず、向こうは決めた」ことが勝敗を分けた。『運も実力のうち』という言葉だけでは簡単すぎるだろうか？しかし、リーグ終盤、各チームがしのぎを削る中、“運”を味方につけるのも大切なことだ。「自分たちのサッカーができればJ1昇格プレーオフ圏内に入ることはできると思います。僕らは可能性がある限りはしっかり頑張っていきたいと思います」と語った高木琢也監督。上昇気運にのり、がっちり守り固める讃岐の守備陣をこじあけたいところ。それには、やはり波に乗る佐藤がキーマンとなるだろう。

上昇気運といえば讃岐も負けてはいない。今季初となる連勝後、１位の湘南に敗れはしたものの、前節、２位の松本と対戦し、０−０の引き分け。北野誠監督が「アルウィンの独特の雰囲気のなかでやれて、勝点１を取れたのは大きいと思います」と語ったように価値ある勝点１を手にした。

松本戦ではケガで戦列を離れていた古田寛幸が６試合ぶり、アンドレアが１７試合ぶりに復帰。押し込まれる危ない時間が続くも、ＧＫ瀬口拓弥のファインセーブをはじめ、全員が体を張って守りきった。第２８節の京都戦以降、讃岐が徹底してきた、ゴール前を１０人で固め、前線に木島良輔を残してのカウンター狙い。松本戦でも、その戦術に揺らぎはなく、１６本ものシュートを放たれるもスコアレスに抑える事が出来た。それまで失点の多さが課題だった讃岐だが、京都戦からの５試合の失点数は「５」とＪ２の中でも、かなり少ない。残るは得点だが、古田、アンドレアの復帰により、流れからの崩しに期待ができるだろう。

前節、２０位の東京Ｖが敗れたため、讃岐は勝点差を「３」に縮め、Ｊ２自動残留圏内が射程距離に入ったが、北野監督は「まだ追いついてもいないし、そこで気が抜けるのが１番怖い。初心にしっかり返らないといけない」と気を引き締め、長崎戦に向け「相性は悪くない。前期とは、また違った戦い方になるだろう」と展望を見据えた。また、２試合の出場停止明けとなる山本翔平は古巣・長崎との対戦について「古巣との・・・っていう思いは別にないです。松本戦で、みんなが頑張ってくれて（東京Ｖとの）勝点差が３になったので、勝てば、もしかしたら差が埋まるかもしれない大事な試合。戦う姿勢を見せ、負けないって事しか考えない」と闘志をみなぎらせた。

３連戦という過密日程で、讃岐は中２日、長崎は中３日の戦い。この１日の差は大きいかと北野監督に尋ねたところ「松本に勝ってはないけど、気持ち良く帰って来れたし、疲れはあるかもしれないけど、そこまでは。負けてたら移動もしんどかったけど、そうでもないからね」と頼もしい言葉が返ってきた。どうか、たくさんの人に丸亀競技場に足を運んでもらいたい。大きな声援が疲れを吹き飛ばす何よりの特効薬だ。

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2014.09.22 Reported by 中條さくら（オフィスひやあつ）