非常に残念だ。残念でならない。
大宮との直接対決に破れ残留争いにも加われない場所へ追いやられたこと、ミスによる自滅的な敗戦となってしまったことももちろんだが、それ以上に、何が何でも自分たちが勝つんだという勝負への強い姿勢がゲームの最初からチームに感じられなかったことにはそうコメントするしかない。
立ち上がりに連続して受けた大宮の鋭いアタックがその意識を強くさせてしまったのだろうか。徳島は序盤から“慎重”に支配されたような戦いになってしまう。守備はほとんど前から追い込むことなく自陣でのブロック形成ばかりになっていたし、ボールを奪い攻撃に転じてもそれに絡むのは前線のポジションに配された少ない選手たちだけ。後ろから追い越す3人目などがほぼ無かったことにより徳島の攻めは効果的な形にならず、実際チームが作った好機と呼べる場面は29分に大崎淳矢が右サイドを抜け出して折り返した一度のみであった。
落ち着いたゲーム運びという言い方も出来るかも知れない。先に点を奪われないための戦術的な意味合いもあっただろう。しかし相手が大宮であることや置かれた現状を考えれば、この一戦は勝点3奪取以外許されない戦いだったはず。にもかかわらず、前半の徳島にはリスクを冒してでも勝利のためのゴールを取りにいこうとする強い姿勢がまるで感じられなかった。
そして後半になってもその状態があまり変わらないところでチームは失点を喫する。56分、自陣深い位置でエステバンがカルリーニョスにボールを奪われたところからムルジャに決められ、痛過ぎる先制を許してしまった。
ただそれで目が覚めたように、ようやくそこから徳島の選手たちは攻撃のギアを上げていく。投入された那須川将大が左タッチライン際を何度も高い位置まで参加すれば、CBの斉藤大介も激しく前へ出る守備や果敢な狙いの縦パスで攻めに加勢。組織全体として大宮ゴールへ向かう色を見せていったと言えよう。
しかしながら、追い込まれた状況へのリアクションとして出した前への姿勢ではやはりなかなか成果に繋がらない。その後の反撃で高崎寛之やキム ジョンミンに決定機が訪れたものの、焦りの気持ちの影響や確実性を意識し過ぎるあまりフィニッシュはどれも不発に終わってしまった。そのうえ80分には藤原広太朗の不用意なキックミスから2失点目まで背負うことになり、結局徳島はそのまま厳しい結果と向き合わなければならなくなった。
自陣へ相手を引き込んだところからボールを奪って素早く出て行くやり方は確かにチームの戦い方のベース。また落ち着いた戦いでチームの安定感を作ることも当然大事だ。とは言え、立たされているのはもう起死回生が必要な土俵際。それを考えればこの一戦、選手たちは最初からもっと勝負への強い姿勢を出すべきではなかったのだろうか…。チャンスと見るや大宮陣内深くまで猛然とプレスに行き、前でボールを奪おうとプッシュアップを周囲に求めていたエステバンの激しいジェスチャーが目に焼き付いている。
いずれにしても敗れた徳島はこれで残留がいっそう厳しくなったと言わざるを得ない。その事実を踏まえて中2日ですぐに迎える次節(9/23vsF東京)をチームはどう戦うのか。注目されるところだ。
逆に勝利した大宮は、この白星が逆転残留に向けての大きな足掛かりになるであろう。渋谷体制になって果たした公式戦3連勝が自信となり、選手たちのプレーはさらに良くなっていくに違いない。また、金澤慎が「前半は自分たちがボールを持っているのに、意図的に相手を崩しているかというとそうじゃなかったようにプレーしていて感じました」と語っていたように攻撃面の工夫にはまだ課題が見られたが、それでも上との勝点差がグッと詰まってきたことでその部分をカバーするだけの勢いもきっと出よう。そうなれば次節の川崎F戦でも勝点を積み上げられる可能性は大いに高まると思われる。
以上
2014.09.21 Reported by 松下英樹
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