結果が分かった勝負事は存在しない。試合の目的は勝つことであり、そのために死力を尽くしてプレーをするのである。
「差はない」。
仙台の印象を聞かれた藤田直之主将は言い切った。現在3位の鳥栖と14位の仙台。その勝点差は16と開いてはいるが、藤田は順位ほどの差はないと言い切った。もちろん、仙台に対するリスペクトの意味も含まれてはいるが、それよりも大きな意味を含んで言い切ったのである。
仙台の直近4試合はすべて1点差。第20節清水戦に1点差で勝利した以降の3戦とも、1点差の敗戦を喫している。だからと言って、守備や攻撃が機能していないということにはならない。
藤田はいう。「接戦を演じているわけだし、注意しないといけない選手が多くいる」と。
確かに最前線には、ウイルソン、赤嶺真吾と個でも結果を出すことができる選手がいる。特に出場停止明けとなるウイルソンは気力も体力もフルパワーのはずである。調子に乗せてしまうと大爆発の可能性さえ秘めている。これに武藤雄樹が加わるのだから、藤田の言葉に合点がいく。それにもう一つ、負傷から角田誠が戻ってきたのも加えておかないといけない。アンカー的な位置に彼が入ることで、より前線の選手たちが生きてくる。今節の仙台は、今までの仙台とは違うことを意識しておかねばならない。
対する鳥栖も結果こそ伴ってはいないが、吉田恵監督の志向するサッカーが出始めている。ベースとなる“前線からのプレス”は変わっていないが、1stディフェンダーと2ndディフェンダーの連携を細かにチェックしている。「選手間のわずかな距離のバランスが修正されれば・・・」と5試合連続失点の課題を吉田監督は語る。「鳥栖はまず守備から・・・」と選手たちは口をそろえるだけに、吉田監督の意図するところが試合中に選手たちが実践できればおのずと攻撃も機能することだろう。
練習では、2列目に入る金民友、池田圭、水沼宏太、早坂良太らの動きの良さが目につく。どの組み合わせでも、誰が途中から入っても動きの質は変わらない。言い換えると90分間を通してパワーを持ち続けることができるのである。これに、前節甲府戦で途中出場した谷口博之と福田晃斗(指定強化選手・鹿屋体育大学)が控えている。パワーを持続させるだけでなく、さらに違うパワーを加えることができる。となると、吉田監督の意図する守備が機能しないといけないことになる。冒頭に紹介した藤田の言葉は、これらのことをすべて見越しての「差がない」ということなのである。両チームにとって勝利必定の試合となった第23節。互いに勝つための理由はそろっている。
想定通りに試合を運ぶことが難しいサッカー。自分たちのウィークポイントを突かれることも想定しておかないといけない。そこを突かれても、致命傷とならない対策は当然のごとく想定していても、相手はそこを繰り返しついてくる。そうさせないのか、されてもどのように取り返すのかは、それぞれのサッカー観によって違う。だからこそ、コミュニケーションが必要でチームワークとなるのである。
敗戦から学んだことを、試合で実践するのもサッカー。サッカーには正解がいくつもある。
以上
2014.09.19 Reported by サカクラゲン
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