ゲームを決めたのは、類希なる決定力を持ち合わせたストライカー大黒将志の一撃だった。衝撃のダイレクトボレー。気落ちした群馬はそのまま立ち直ることができずに0−1で敗戦。京都が5試合ぶりの勝利を飾った一方で、群馬はシーズン終盤を迎えて痛恨の4連敗となった。京都の際立った決定力に屈する結果となった。
群馬は2試合連続で欠場していたダニエル ロビーニョが前線に復帰、平繁龍一との2トップでゲームへ臨む。前線にパワーが戻ったことでチームは活性。序盤からテンポよくボールを動かしてリズムをつかむ。一方の京都は大黒将志とドウグラスの決定力ある2トップに配置。群馬の攻撃を受けながら、鋭いショートカウンターでゴールを狙う。序盤は、「動」の群馬、「静」の京都の様相でゲームが進んでいく。
前半は群馬が主導権を握っていた。前線からのプレスでボールを奪うと、きっちりとボールをつないで攻撃を組み立てる。だが京都にもプランがあった。川勝良一監督は「前半は無理にプレスに行かず先制点を取られないようにした」と振り返ったが、群馬のパス回しをブロックで受けてリスクを回避。後半勝負を目論んだ。結果的にはその策が奏功することになった。
スコアレスで前半を折り返した群馬は60分すぎにラッシュを仕掛ける。途中出場の加藤弘堅のミドルシュートを皮切りにロビーニョらがゴールへと突進、京都ゴールを脅かす。「チャンスがないわけではなかったのでそれを活かさなければいけなかった」(ロビーニョ)。群馬は、京都をロープ際まで追いつめながらもダウンを奪うことができない。そして71分、群馬にとっての悲劇、京都にとっての歓喜の瞬間が訪れる。
黄誠秀が後方へボールを下げたが、ボールを受けた加藤がパスミス。それを拾った工藤浩平が間髪入れずにゴール前へ入れたボールを大黒がとらえる。大黒が左足のダイレクトボレーが放った鋭いショットは、ファーサイドのポストを叩いてゴールへと吸い込まれる。GK富居大樹は「左足のアウトサイドでファーへ打たれて反応できなかった」と見送るしかなかった。大黒は「群馬の守備は前半からルーズな部分があったので常に狙っていた。イメージどおりのゴールだった」と笑顔をみせた。このゴールにより京都は貴重な勝利を得た。
5試合ぶりの勝点3を獲得した京都は6位大分に勝点1差に迫る7位に浮上、J1昇格プレーオフ圏内が視野に入ってきた。指揮官は「次節も同じ戦いをしたい」と語ったが、前半をノーリスクでしのいで後半勝負ができれば、大黒という最終兵器を保持するだけに勝点が計算できる。今季19ゴール目を決めた大黒は「なかなか連勝できないので次も勝って連勝したい」と次節・山形戦へ向かう。
大黒の一発に沈んだ群馬は、リーグ6試合勝ちなしで4連敗となった。秋葉忠宏監督は「1回のミスはあったが京都という素晴らしいチーム相手にアグレッシブに戦ってくれた」と選手を評価するコメントを残した。ただ、物足りなさも残る。無得点での敗戦を真摯に受け止めなければならない。
勢いのあった前半と比較して、失点後にチーム全体の覇気がなくなり失速した印象はぬぐえない。またビハインドで終了間際を迎えているのにかかわらずゆったりとゲームを進めるチームからは、ガムシャラな姿勢が伝わらなかった。秋葉監督は2年前の就任当時、「野武士のような荒々しいサッカーを選手に求める」と話したが、そのサッカーはできているのか。チーム力が上がっているのは間違いないが、闘争心が薄れたら根幹が崩れる。残り11試合、チームの審判が下される瞬間は近づいている。
以上
2014.09.15 Reported by 伊藤寿学
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