試合開始2分、試合はいきなり動いた。コーナーキックから、河原和寿が今季10得点目を叩き込んだ。「また先制が早かったので、『またか』という雰囲気は若干あった」と石丸清隆監督は自嘲気味に振り返ったが、それは愛媛を応援する全ての者が感じた率直な思いだろう。水曜の天皇杯ラウンド16大宮戦では開始5分に先制して逆転負け、前節の栃木戦でも開始2分に先制し、一時は2点のリードを保ちながらも最終的にはドローに終わっている。他にも今季は逆転を許す試合が多く、リードした後の試合運びは愛媛にとって最大の課題だった。
その点で今季の愛媛はリードすると守りに入り、これまではどうしても引きこもりがちになっていたが、それで勝てた試合もあったがために選手たちの判断はブレてしまいがちだった。しかし、この日は「点を取ってもしっかり奪いに行くこと、そしてハーフタイムにももう1点取りに行く形を、それは守備でも攻撃的な守備をしようと話をして、体現してくれた」と石丸監督が指摘をしたように、先制した後もチーム全体が前に行く姿勢を出し続けた。最終ラインの林堂眞は「あれだけ前からプレッシャーに行くと、言い方は悪いけど後ろもついていかざるをえない」と振り返ったが、山形を苦しめたのは前線からのプレス。さらに、この試合ではサイドに入ってもどんどん両ウイングが高い位置でプレスをかけて、山形の勢いを削いだ。
すると、後半開始直後にも追加点が生まれる。49分、右サイドを駆け上がった村上佑介のクロスに、西田剛がニアサイドで合わせて愛媛はリードを広げることができた。さらに79分、最終ラインの浦田延尚は相手の前でインターセプトをするとそのままオーバーラップ。前半から繰り返したこのプレーが、最終的には勝負を決める浦田自身の3点目にも結びついた。結果的に3バックの右と左の選手が、セットプレーではなく試合の流れの中で2点に絡んでいるのだから、それだけでもこの試合で愛媛の選手たちが前に出ようとした勢いが感じとれる。チーム全体が、攻め抜くという姿勢を貫いたことで愛媛はこれまでの嫌な流れを断ち切った。
逆に山形もチャンスがなかったわけではないが、前半では當間建文のヘディングが、後半には山田拓巳の強烈なシュートが愛媛のGK児玉剛に阻まれるなど反撃のきっかけをつかめず完敗。前後半ともゲームの入りに失点し、前がかりになった所でミスからカウンターを受けるなど悪循環が続いた。最後もカウンターからハン ヒフンに豪快なミドルシュートを決められて、タイムアップ。天皇杯でJ1を破ったいい流れをリーグ戦での連勝につなげることができなかった。
これで、勝った愛媛は1つだけしか順位を上げることができなかったが(17位)、11位に順位を下げた山形との勝点差は6に縮めた。そして、6位の大分との勝点差も10。残り11試合と時間は限られてきたが、まだまだ諦める必要はない。「この戦い方や気持ち、心境というか、そこを切らさず臨めば結果はついてくると思う」と西田剛が力を込めたように、ラストスパートの第一歩は踏み出せた。次節は岡山戦(9/20@カンスタ)、さらに千葉戦、磐田戦、湘南戦と上位相手との戦いが続くが、ここが今季最後の難関。愛媛は生き残るために勝ち続けるしかない。
ちなみに、愛媛にとってはこれがリーグ後半戦ホームでの初勝利。7試合ぶりの勝利が、ホームではおよそ3ヶ月ぶりの勝利となった。この日が誕生日の西田、前日が誕生日の浦田がゴールを決め、ゴール裏では試合前々日が誕生日だった村上巧もサポーターから祝福を受けた。久々のラインダンスでニンスタは盛り上がったが、遠く離れたベトナムの地ではU-19日本代表が「AFF NutiFood U19 Cup 2014」でベトナム代表に勝って優勝。表原玄太は決勝でのゴールを決めるなどチームに貢献して見せた。さらに、この山形戦とほぼ同時進行で進んだアジア大会では、韓国で戦うU-21日本代表の一員として原川力がアシストを決めるなどクウェート戦快勝の原動力となった。国内外で愛媛の選手たちが活躍したこの週末。愛媛のサポーターにとっては、久しぶりに爽快な1週間が過ごせそうだ。
以上
2014.09.15 Reported by 近藤義博
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