立ち上がりこそ、バタバタした展開が続いたが、前半の福岡は決して悪い内容ではなかった。中盤の主導権争いでは、高い位置からのプレスが機能して、水戸の船谷圭祐、西岡謙太に全く仕事をさせず。試合の行方を握ると思われていた両サイドの攻防でも、左サイドは福岡が制圧。右サイドからは攻め込まれる場面もあったが、やられていると言うほどのものではなかった。前半に福岡が放ったシュート7本に対し、水戸が放ったシュートが1本という数字が示すように、前半は福岡が一方的に主導権を握っていたことは間違いない。
しかし、敗戦に偶然はない。そして、福岡の敗因は失点を喫した場面ではなく、前半の戦い方に見ることができる。トータルで見れば、福岡が自分たちのやりたいサッカーをしていたことは間違いない。しかし、細かなところに目をやれば、隙を見せる場面も多かった。
「つなぎの部分でミスがあったり、ボールを捌く部分でミスがあった」(中原秀人)。
「1人、1人がボールを持つ時間が長かった」(武田英二郎)。
狙い通りにボールをからめ取りながらも、ビルドアップの正確性、ラストパスの精度に欠き、築いたチャンスを広げることができなかった。そして、いいリズムで試合を進めていた前半のうちにゴールを奪えなかったことで、後半に許した1失点が敗戦につながった。
一方、ワンチャンスを活かした形で勝利を手にした水戸だが、敗戦に偶然がないのと同じように、勝利にも偶然はない。福岡のプレスをまともに受けた前半は、水戸らしさを見せることはできなかったが、それでも吉田眞紀人は危険な存在であり続け、オフサイドの判定を受けた16分の場面、そして、神山竜一のセーブにあった39分の吉田のシュートシーンは、いずれも完璧に福岡の守備網を崩した。主導権を握っていた福岡が、どこかに危うさを残していたのは、水戸が自分たちの形でボールを運べば、福岡ゴールを陥れる力があることを漂わせていたからに他ならない。
そして、この日、両チームを通して唯一ゴールは59分に生まれる。本間幸司からのゴールキックをヘディングで最終ラインの裏に送ったのは、高さには絶対的な強さを見せる三島康平。そこへ抜群のタイミングで飛び込んだ山村佑樹が、GKとの1対1の場面から冷静にゴールに流し込んだ。三島にロングキックを合わせて、そのこぼれ球に飛び込んでいくのは、水戸の得点源のひとつ。そして、この日、怪我から復帰してスタメンに名を連ねた山村の得意とするのは、一瞬の隙をついた裏への飛び出し。そのゴールは、水戸のストロングポイントを活かした奪ったもので、水戸が虎視眈々と狙っていた形だった。
1点をリードした水戸は、守備に力を費やして残り時間を過ごした。64分、福岡が三島勇太に代わって鍋田亜人夢を送りこみ、布陣を4バックにして前への意識を高めると、水戸は70分に山村を下げて内田航平を投入。中盤をトレスボランチの形にし、マンツーマン気味のディフェンスで福岡の攻撃に備える。終盤に福岡がイ グァンソンを前線に上げてパワープレーでゴールを目指すと、水戸は全員がペナルティエリアへ下がって、体を張ってボールを跳ね返し続けた。そして3分間のアディショナルタイムを経て、試合終了のホイッスル。福岡は手痛い敗戦を喫し、水戸は9試合ぶりとなる勝利を手にした。
それでも福岡にとって幸いだったのは、6位以内を目指してサバイバルレースを繰り広げるライバルチームもまた、勝点を思うように伸ばせなかったこと。6位大分との差は開いたが、それは、僅かに勝点2差でしかない。また、「選手たちには顔を上げて行こうと話した。試合は、まだ11試合残っている。最後までしっかりと戦っていきたい」とマリヤン プシュニク監督は話したが、サバイバルレースを生き残るために最も大切なことは、悪い結果を引きずらないこと。そして連敗をしないこと。次の大分との直接対決で真価を問われることになる。
そして、9試合ぶりの勝利を手にした水戸にとって、残る11試合は、自分たちが積み上げてきたものを結果に結びつけるための11試合になる。自分たちのリズムでボールを回す時のテンポの良さは、決して16位のチームのそれではなく、攻撃陣には、この日復活を果たした山村をはじめ、三島、吉田ら力のある選手もいる。これからの戦いに注目したい。
以上
2014.09.15 Reported by 中倉一志
J’s GOALニュース
一覧へ- 2024 明治安田Jリーグ終盤戦特集
- アウォーズ2024
- 2024J1昇格プレーオフ
- bluelock2024
- 2024 明治安田Jリーグ フライデーナイトJリーグ
- 2024JリーグYBCルヴァンカップ
- Jリーグ×小野伸二 スマイルフットボールツアーfor a Sustainable Future supported by 明治安田
- AFCチャンピオンズリーグエリート2024/25
- AFCチャンピオンズリーグ2 2024/25
- はじめてのJリーグ
- FIFAワールドカップ26 アジア最終予選 特集ページ
- 2024天皇杯
- 明治安田Jリーグ 月間表彰
- 2024Jユースカップ
- シャレン Jリーグ社会連携
- Jリーグ気候アクション
- Jリーグ公式試合での写真・動画のSNS投稿ガイドライン
- J.LEAGUE CORPORATE SITE
テレビ放送
一覧へ明治安田J1リーグ 第37節
2024年11月30日(土)14:00 Kick off