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【J1:第23節 広島 vs G大阪】レポート:決めたG大阪。決められない広島。コントラストの要因は、サッカーの原則。(14.09.14)

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決めるか、決めないか。
そこが、大きな違いを生んだ。

G大阪は32分、佐藤晃大が芝の上に倒れながらも執念を見せて掻き出したボールを宇佐美貴史が強烈な右足で蹴り込んだ。確かにコースは甘く、林卓人も「自分のミス」と唇をかんだ。本人もシュートそのものには納得はいっていない様子。だが、ゴチャゴチャとした混戦の中で振り幅の小さなキックから強烈にボールを叩き、スピードに満ちたシュートがゴールを襲ったからこそ、ネットを揺らすことができた。

宇佐美のシュート数は前半だけで5本。後半はG大阪自体が守備的になったためにゴール前にボールを運べず、チャンスそのものがなかったが、それでもトータルで6本のシュートはチーム全体のシュート数(11本)の半数以上。
「俺が決める」
そんな強烈な意思がボールに魂を注入していたからこそ、少しコースが甘くても、ゴールにつながったのかもしれない。

一方、広島は前半終了間際、立て続けにチャンスを迎える。
45分、塩谷司が猛烈な勢いでボールを持ち上がり、引きつけての横パス。清水航平のクロスはDFにはじかれたが、そのこぼれをねらったのが、フリーの塩谷司だ。だが、豪快に放ったシュートは枠の外。「あんなビッグチャンスは、1試合に二度とはない。絶対に決めたかった」と超攻撃的DFは悔しさを露わにする。

さらに前半アディショナルタイム、相手のバックバスを高萩洋次郎がカット。ボールを受けた青山敏弘が球際の競り合いに完勝し、皆川から高萩へ。この時、広島の右サイドには大きなスペースが広がっており、バサーはそこを見逃さない。優しいボールを送る。清水が飛びこんできた。完全にフリーだ。

高校時代はインターハイで得点王となったこともあるFWであり、2012年には年間最高ゴール賞にも輝いたことのある彼は、鋭い得点感覚を持つ。シュートも上手い。紫のサポーターの高まりは、直後にため息へと変わった。清水航平、痛恨のボールコントロールミス。天を仰ぐ。だが、結果は取り戻せない。

G大阪と広島、勝点3と勝点0。内容的には五分と五分、後半だけで見れば広島が完全に主導権を握り、「厳しい試合だった」と長谷川健太監督がため息をついたこの試合の結果を左右したのは、結局は「決めるか、決めないか」である。身も蓋もないが、サッカーの勝敗を左右するのは、やはりこの原則だ。

よく「個の力」という表現をサッカーメディアは使いたがる。この言葉は正直、好きではない。「個の力」とは、具体的に何を指すのか。ドリブルか、パスか、シュートか、肉体的な強さか、スピードか、超絶的な技術か、戦術眼か、守備のセンスか、視野の広さか。「何がすごいのか、何に差があるのか」を明確に表現しなければ、伝わってこない。

宇佐美貴史の「個」とは何か。もちろん、ドリブルも素晴らしい。右サイドからDFを引きずるような逞しいドリブルから阿部浩之のポスト直撃シュートを演出した。パス能力も高い。ゴールシーンが佐藤との壁パスからだったことも、周りを使って自分を生かす力を持つ証明だ。攻撃に関してはどの力もハイレベルだが、やはり宇佐美を宇佐美たらしめているのは、シュート能力の高さである。点が取れる。どんな状況からでも、ゴールを陥れることができる。その1点において、彼は宇佐美貴史であることができる。そしてその宇佐美の爆発力に、広島は屈した。

一方で、自らの攻撃面を見ると、チャンスはつくっていた。後半はボールを完全に支配し、主体的なパスワークでゴール前までボールを運んだ。だがそこから、守備を固めたG大阪の壁を突き破ってゴールをねじ込む破壊力が、この日の紫には欠けていたのである。

今のサッカーにおいて得点を取るためには、ペナルティエリア外から強烈にネットを揺さぶるシュート力が絶対に必要だ。宇佐美のシュートはまさにそれ。広島もヤマザキナビスコカップ準々決勝第2戦で野津田岳人が決めたゴールは、相手のブロックの存在を無にする迫力に満ちていた。もちろん、パスワークから相手を崩し、組織で決めるのが理想。だが、トップレベルの戦いはミスが少なく、守備は激しくもしたたかで、狡猾だ。広島は、この試合がJリーグ初先発となった茶島雄介を交代して佐藤寿人を投入、2トップにして勝負を賭けたが、G大阪の人数をかけた集中した守りの前に決定機をつくることができない。両ワイドを交代し、徹底したサイド攻撃を仕掛けたが、岩下敬輔や丹羽大輝の壁を突き崩すことができず。守備を固めてきてもなお、上からハンマーをたたきつけて破壊しつくすような迫力を、この日の広島は欠いていた。決めるという強い意志を全身から発露する男がいなかったのだ。

G大阪は長谷川監督のJ1通算100勝を粘り強い戦いで勝ち取り、首位を走る浦和にしっかりと食いついた。広島は勝点13差と3連覇の希望は大きく遠ざかった。

決めるか、決めないか。
サッカーを構成する「ゴール」の重要性が、残酷なコントラストとなって表現された夜だった。

以上

2014.09.14 Reported by 中野和也
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