今回、ニンジニアスタジアムで対戦する愛媛と山形は水曜に天皇杯のラウンド16を戦っており、今節が３連戦の最後となる。その連戦で、山形はリーグ戦で水戸を下し、天皇杯では鳥栖を破って連勝を飾っている。一方で、愛媛はリーグ戦で栃木と引き分け、天皇杯では大宮に敗れたことで勝利がない。３連戦最後の一戦に向けて勢いに差がある状況だが、特に愛媛は前々節の大分戦と天皇杯で逆転負け、前節の栃木戦でも２点差を追いつかれており、精神的にも厳しい戦いが続いている。リーグ戦では６試合勝利から遠ざかっており、この未勝利期間も今季最長。今節の愛媛は心身ともにどれだけタフに戦えるか、そこが問われることになる。

そのフィジカル的なところでは、天皇杯とはメンバーを入れ替えながら戦うことで連戦の影響を最小限にすることができる。しかも、愛媛にとって今節はホーム。山形は運悪くアウェイ３連戦となり、天皇杯では延長戦も戦っていることからコンディションの面では愛媛が有利で言い訳はできない。しかし、問題はメンタル面だ。今季はこの３試合に限らず、リードをした時にどうしても腰が引けてしまう癖が抜け切れない。そして、連続失点でたたみかけられている。栃木戦、大宮戦ともにわずか５分間で連続失点を喫し、同点や逆転を許した。「１点取られてしゅんとなってしまっている」と石丸清隆監督は指摘をするが、失点した後の戦い方もネガティブな方向に向かってしまっている。石丸監督は「ゲームコントロールのところを選手たちと話し合いたい」と語っているが、今節はこうした悪循環を断ち切る雰囲気をゲームの中で作らなければならないだろう。

ただ、大宮戦では少しこれまでと状況が変わった点も見逃せない。早い時間帯に先制した愛媛はその後に受け身に回ったが、後半から修正。ボランチの渡邊一仁は「これまでのように消極的に戦ってひっくり返されたのではなく、攻めにいって主導権を握ろうとする中でやられてしまった」と前を向く。結果的にミスを突かれたことから逆転を許したが、内容的にはJ1を相手にポジティブにとらえられるものだった。「結果だけ見た人は『またか』、と思うかもしれないけれどやっている選手としては前向きに行った結果。あとは次の試合でその姿勢が問われる」と渡邊は続けたが、結果が出なかったことでまたネガティブになるのではなく、山形戦でも続けて前にいく姿勢を持ち続けて現在の苦しい状況を抜け出したいところだ。

これに対して山形は、ハードな連戦で結果を出すことができている。11得点でチーム得点王のディエゴや守備の要、西河翔吾が離脱をするなど台所事情には厳しいところがありながら、この２試合は共に無失点で勝ち切った。鳥栖戦で決勝点を挙げた萬代宏樹や林陵平らチャンスを与えられた選手たちも気を吐き、厳しいスケジュールの中でもプレーオフ圏内を意識して高いモチベーションで戦えている。今節も拮抗した展開になったとしても、愛媛にとっては嫌なイメージが残る宮阪政樹のフリーキックなどセットプレーで勝負を決める術がある。対山形戦で愛媛は連敗中ということもあり、本当に愛媛にとって今節は戦いにくい相手だ。

しかし現在10位の山形と、18位愛媛との勝点差はまだ９。愛媛にとってプレーオフ進出という目標は厳しい状況になっているが、まだまだ中位との差は大きくない。追いつき追い越すためには勝ち続けるだけだ。そのためにも、まずはこの山形戦を第一歩にできるか。６月28日のホーム熊本戦以来、勝利を待ち続けるサポーターと歓喜の瞬間を迎えることができれば、そこから愛媛のラストスパートもスタートが切れるはずだ。

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2014.09.13 Reported by 近藤義博