お互いに水曜日の天皇杯で延長も戦った末に敗れた甲府と鳥栖。甲府はJ2・4位、ベストメンバーで来た北九州に敗れ、鳥栖はJ2・10位、天皇杯メンバーで来た山形に敗れた。バーカウンターの端で背中をまるめて、「お互い大変やったね」と労わり合いたい気分ではあるが、リーグ戦では甲府が残留圏内ギリギリ、薄氷の15位(勝点21ポイント)であるのに対して、鳥栖は大量の勝点41ポイントで2位。極端な言い方をすれば、鳥栖は残り試合全部負けてもJ1に残留できるであろうポイントをすでに獲得している羨ましい立場。天皇杯敗北の世間様の風当たりは諸条件を見れば鳥栖の方が大きいだろうが、来年もJ1で戦えることがぼぼ決まっている勝点を持っている分、優勝やACLの心配をできるのは幸せ。甲府は一晩寝ればきっちり切り替えて、勝点3を鳥栖から奪うための策略を練り、コンディションを整えないといけない。J1リーグの終盤戦は日本人監督になった16位のC大阪、17位の大宮の猛追があるだろうし、18位の徳島が急浮上する可能性も充分にあるだけに、少し前のように下位チームが横並びで負けるか引き分けていた日々はないと思っている。甲府より順位が上の14位・名古屋、13位・仙台、12位・清水あたりを残留争いに巻き込まないといけないし、そうするにはそろそろ勝点3が必要。
中2日で甲府までやってくる鳥栖は山形戦の翌日にクールダウンを行って、金曜日は少し確認だけやって移動という厳しいスケジュールのはず。迎え撃つ甲府も天皇杯・北九州戦の翌日はクールダウンを行っているが、試合に出場した選手以外の練習は人数が少なくて寂しい感じだった。稼働しているフィールドプレーヤーが約20人なので、クールダウン組以外のフィールドプレーヤーは7人だけ。試合前日も選手の疲労を考えると長い時間の練習はできないので、短時間で鳥栖対策と甲府の最大値を出すための確認を行っただけ。充分な準備ができないのはお互い様だが、ケガ人が多い甲府は、監督が変わってもシステムもメンバーもほぼ同じ鳥栖のようには挑めない難しさがある。
城福浩監督は残留争いについて、「去年、一昨年のような楽な終盤戦はないと思っている」と腹を決めたような感じのサッパリした表情で話した。新加入FW・キリノのコンディションが一定のレベルに上がり、水野晃樹、阿部拓馬らケガ人が戻ってくると思われるラスト10試合でスパートをかけるという覚悟。それまでの鳥栖戦、第24節の名古屋戦あたりは、ケガ人が多い中、キリノのコンディションを上げつつ凌がないといけない。今節の相手・鳥栖は、誰もが名前を知る豊田陽平、安田理大、韓国代表の金民友ら個のレベルが高い選手が当然ポイントとなる。甲府は前線からの守備を機能させて組織力で挑む必要がある。今節は日本人選手が軸になる先発になりそうなので、この点では一定以上の安定感を出せそう。ワントップに入る盛田剛平を中心とする攻撃では2枚のシャドーとの距離感が重要だが、今節は河本明人が復帰する見込みなのでいい連携ができそう。試合勘は戻っていないだろうが、一番元気のある選手なので裏への飛び出しだけでなく、ドリブルで積極的な仕掛けを見せてほしいし、シュートも躊躇しないで打ってチームにアグレッシブな勢いをもたらせてくれることが期待される。
3連休のスタートの13日の土曜日。水曜日の天皇杯で悔しい思いをした甲府と鳥栖が、J1残留と優勝・ACLと、それぞれの違った目標に向けてぶつかり合う。順位は下位と上位に分かれているが勝利への思いは同じ。どちらがスパッと切り代えて終盤戦のいいスタート切るのか。天皇杯に引き続いてホーム・山梨中銀スタジアムで戦える甲府は、J1リーグ戦再開後は5分3敗と8試合勝利がないだけに、ここいらで勝利を挙げてチームとファン・サポーターとの友情を温め直したいところでもある。
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