J1リーグ再開後の戦績は5分3敗で未勝利の甲府だが、勝利の味は天皇杯2回戦(対明治大)、3回戦(対関学大)で味わっている。リーグ戦で悔しい思いをしているだけに、天皇杯の勝利の味は、苦戦したとはいえ格別だった。ただ、2試合続けて大学生が相手で、ラウンド16からプロが相手になるので、緊張感の種類が違ってきそうな北九州戦。この北九州は前節までは公式戦6勝4分けで10試合負けなしだった。順位は現在J2リーグ4位。プレーオフ出場圏内にいて、J2のなかで勝つことが非常に難しいチームと評価する声も少なくない。今年はJ1ライセンスを付与されていないので、残念ながら自動昇格はないしプレーオフにも出場できないが、それだけに天皇杯に対するモチベーションは高いはず。
北九州は天皇杯2回戦で東京Vを倒し、3回戦では延長戦の末に横浜FMに3−2で競り勝っている。横浜FM戦はシュート数が30対9と横浜FMに圧倒されているが、粘り強く守って渡大生の決勝ゴールで逆転勝利。城福浩監督は、「(北九州はリーグ戦でも天皇杯でも)ギリギリの戦いをモノにしている印象。最優先でどこを守るのかをチーム内で意思統一がなされている。攻撃はカウンターだけではなく、遅攻もあって、その意思統一は見事だと言うしかない。マリノスとの天皇杯を見れば楽な試合にならないことは明らか。マリノスは少しメンバーを変えていたとはいえ、手を抜いていた訳ではない。ただ、厳しい戦いになるだろうがここまで来たことで我々は満足しているわけではないので、天皇杯では上を目指して貪欲に戦う」という趣旨の話をした。北九州がJ1ライセンスを持っていれば、中3日のアウェイ千葉戦に向けてメンバーを変える可能性もあっただろうが、甲府とのラウンド16はおそらくベストメンバーのまま。北九州は甲府戦の後、関東でミニ合宿を行って中3日でアウェイ千葉戦に臨むのではなく、一度福岡県に戻るそうで、移動スケジュールは非常に厳しい。しかし、こういうスケジュールで挑んでくるチームは非常にやり難い。
迎え撃つ甲府は中2日で同じくホーム・山梨中銀スタジアムで第23節・鳥栖戦(現在2位)がある。移動がないのでスケジュール的に有利だが、現在15位の甲府は北九州との天皇杯をリーグ戦と同じメンバーで戦うという訳にはいかない。鳥栖戦のことを考えれば消耗度の激しい選手は休ませたい。しかし、ケガ人が多く、稼働しているフィールドプレーヤーは紅白戦ギリギリの20人と台所事情が厳しい。そのなかで新加入FWキリノは、戦力化を促進するために起用する可能性は高い。ただ、コンディションがまだ100%ではなく、フル出場とはいかないので起用に制約はあり、交代枠2枚で延長、PK戦まで覚悟して北九州を迎え撃つことになる。ただ、キリノの戦力化のために天皇杯を戦うのではない。タイトルを目指して戦う。そのなかで、ポイントとなるのはチャンスを貰う日本人選手であり、リーグ戦とは違うポジションで起用される可能性のある選手。DFの畑尾大翔やGKの岡大生は前者であり、北九州にいた新井涼平は後者のひとりで、大卒1年目の下田北斗も見せ場を作りたい。
今回の対戦は、シュート数がJ2リーグで一番少ないにもかかわらず決定率の高い北九州と、J1リーグ再開後、相手より多くのシュートを打った試合が多いにもかかわらず決定率が低い甲府で、対照的な戦いでもある。北九州にはボランチに風間宏希という決定的なパスを出せる選手がいて、池元友樹、原一樹のツートップの決定力を正確なパスでより高めているが、彼らが決めることができなくても渡や大島秀夫が控えている。今回は控えている2人が先発FWに回る可能性もあるが、どっちのパターンでも先発の2枚がジャブで相手のディフェンスラインを消耗させて、控える2枚が勝負を決めるパターンに持ち込めれば北九州の勝率は上がるだろう。甲府は慣れていない組み合わせで北九州を迎え撃つことになりそうだが、チームとしての積み重ねを見せる試合でもあるし、J1の意地を見せる試合でもある。相当の集中力と粘りで挑まないと今の北九州には勝てないだろう。
北九州のジョーカー的なFWが渡大生(だいき)で、彼のシュートを防ぐ甲府のGKが岡大生(ひろき)と、名字が漢字一文字、名前が「大生」で読みが違うだけと、不思議と重ねたくなる2人。2人の大生のどちらかが勝負を分けるようなプレーをするのか、甲府のブラジル出身アタッカーが勝負を決めるのか。J1リーグの甲府の方が少しナーバスな状況になりやすい対戦だが、最近のJ1のトレンドでもある(個人の感想です)ミドルシュートを効果的に打っていって、北九州の粘り強い守備を打ち破りたい。
以上
2014.09.09 Reported by 松尾潤
J’s GOALニュース
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