横浜FMは予想通り、アグレッシブに仕掛けてきた。「我々は、しっかりと仕掛けて2点を取らなければならないというシチュエーション」(樋口靖洋監督)ゆえ、プランは明確。藤本淳吾を起点に、柏の3バックの両脇にあるスペースを突く、あるいは前線に入った矢島卓郎の高さと強さを生かすため、前線にロングフィードを送る。
矢島が完全に競り勝てなくても、近い距離感を保つ伊藤翔がフォローすることで柏の3バックにプレッシャーを与え、さらに2列目の藤本、奈良輪雄太が前線に絡み、ボランチの喜田拓也も高い位置まで押し上げて、矢島へロングボールを入れた後のセカンドボールを狙う。
こうして、絶え間なくかけ続けた圧力がCKの獲得につながり、23分、藤本の蹴った左CKから中澤佑二の豪快なヘッドが決まって横浜FMが先制。プラン通りの試合展開へ持ち込んだ。
次の1点を奪えば勝ち切れる状況にある中で、一気に2点目を奪いに行くのか、それとも1−0のまま落ち着かせて、機を見て2点目を狙うのか。ここで横浜FMが前者を選択したことが大きなポイントとなる。
横浜FMの寄せの早さ、球際の強さ、攻守の切り替えに柏が押し込まれ、パスやトラップにミスも生じるなど、選手たちにバタつきが見られた上に、失点をしたため、横浜FMは、ここが狙い時と一気に畳み掛けたのだとは思うが、「リスクを取りにいく中で、もう少しバランスを考えてもよかったかなと思った」(下平匠)と、2点目を奪うことばかりが先に立ち、必要以上に前がかりになってしまったように見えた。
横浜FMがリスクを冒すことで柏は圧力をかけられるが、裏を返せばそれは願ってもないチャンス。
茨田陽生は、「自分たちに向けられる矢印が大きい分、その後ろを突ける。落ち着いて、フリーでパスを出せる状況になるというのは試合の途中で感じた」と横浜FMの背後に生じたスペースを見出していた。
実は試合前日、茨田は「F・マリノスは前から来るから裏にスペースができる。質の高いパスを出せれば、前の3人は好調なので、絶対に決めてくれる」と攻撃のイメージを膨らませていたのだが、まさに狙い通りの形を演出する。
31分、持ち上がったファビオのイージーなパスミスから柏がボールを奪い、カウンターへ。ディフェンスの背後を突いた茨田のスルーパスと、抜け出した高山薫のグラウンダーパスで完璧に横浜FMの守備を崩した柏。最後はファーサイドの工藤壮人が難なく詰めて1−1とした。
「やることを変えず前から追いかけた」(小椋祥平)と、1−1になった後も横浜FMは戦い方を変えない。それによって、49分の伊藤のシュートシーンや、59分の奈良輪のドリブルで突進したシーンなど、チャンスを作り出したことは確かだが、リスクを冒すのならば、こういう千載一遇のチャンスでは絶対に決め切らなければならなかった。
リスクを冒しながらも2点目を奪えない横浜FMとは対照的に、柏が再び鋭いカウンターを見舞う。64分、またしても茨田のスルーパスから、工藤のダイレクトパスをファーサイドのレアンドロが決めた。同点ゴールと非常によく似た展開だった。
横浜FMは喜田に代えて藤田祥史を投入し、前線にFWを3枚並べる超攻撃的な布陣へシフトチェンジ。さらに80分には、負傷明けの齋藤学を入れて勝負をかけた。
だが、「2点目を奪った時点で、F・マリノスの選手の気持ちが落ちているのは感じていた」(工藤)というように、柏の2点目は横浜FMに大きなダメージを与え、柏はより落ち着いて試合を運べるようになる。精神的に優位に立った柏は、82分にもセットプレーからエドゥアルドが決めて、3−1とリードを広げた。この時点で完全に勝負は決した。
2戦2勝、トータルスコアは5−2。試合そのものは楽な展開ではなかったが、ホーム&アウェイの180分、そこでの駆け引きや、刻々と状況が変わる試合の流れに応じた対応など、横浜FMよりも試合巧者ぶりを発揮した柏が勝利を収めた。「勝者に値する内容だった。2試合に渡るゲーム全体のオーガナイズと、組織と個々の状況判断、ゲームクオリティーが高いレベルで結果も残せた」と、試合の出来にはネルシーニョ監督も高い評価を与えた。
3年連続でヤマザキナビスコカップ準決勝に進出した柏は、目標とする連覇にまた一歩近づいた。
以上
2014.09.08 Reported by 鈴木潤
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