試合開始直後に見事なパスワークを見せ、それを風間八宏監督は拍手で賞賛した。立ち上がりからペースを掴む川崎Fは10分頃までC大阪を押し込む。主導権を握ったように見えた序盤戦ではあったが、C大阪もやられっぱなしでは終わらなかった。徐々に川崎Fの攻撃に対応し始め、戦況を取り戻す。特徴的だったのが川崎Fの中盤に対する守備意識の高さである。1トップに入る杉本健勇に対し、少し下り目のポジションを取っていた永井龍が守備のスイッチで、その永井の動きに呼応するようにボランチに入った長谷川アーリアジャスールと、キム・ソンジュンが連動し、川崎Fの中盤を苦しめた。苦しめられたのは大島僚太だった。
「前回と違ったのはFWがプレスバックしてきてて、ボランチと合わせてプレッシャーを掛けてきていました」とC大阪の守備について大島は説明。厳しい守備を受け、ミスする場面があったと反省する。
勝ち上がるには、最低でも3得点と2点差以上での勝利が必要なC大阪ではあったが、マルコペッツァイオリ監督は「前半は4-4-2でコンパクトに保ちながら1点を取りに行こうと。ただ、失点することを恐れないでおこうと。最終的に3-1であれば延長戦になりますし、そういう中で前半はディフェンシブに戦いました」と延べている。ここでペッツァイオリ監督が口にする"ディフェンシブ"という言葉は、自陣深くに守備ブロックを構築する形のものではなく、最終ラインを挑戦的に押し上げ、全体をコンパクトに保つという形の守備である。ただ、これは一定の効果をあげており、川崎Fは思うようにゴール前にボールを運べなくなる。ある程度大島を封じ込めることに成功したC大阪ではあったが、それに対して森谷賢太郎が鋭いドリブルでC大阪を揺さぶり、攻撃にアクセントをつけていた。また大久保嘉人がパスを引き受けることを目的として何度も中盤にポジションを落としており、攻撃の起点の一つとなった。35分にレナトが決めた先制点は、パスを出す能力にも長けた大久保の働きによるもの。この大久保からの縦パスを受けたレナトがDFがとの1対1を制すると、見事に先制点を手にした。
準決勝進出に近づいたと感じていたその刹那、C大阪が反撃に出る。C大阪が一気に攻勢に出た37分。セカンドボールを拾った長谷川に押し込まれ同点に追いつかれる。川崎Fは1点のリードを2分で失う。
後半頭から川崎Fは森谷と實藤友紀の2選手に代え、金久保順とジェシを投入するがこれはともに負傷によるもの。ただ、この交代によってバランスに変化が生じた川崎Fは立ち上がりから苦しむこととなる。そんな58分。川崎Fは杉山力裕からのフィードを小林が頭で競り、このこぼれ球を大久保が拾ってファインゴール。2点目を奪ったことで、今度こそ試合は終わるものと思われた。
しかしC大阪はここで粘りを見せる。2失点目から3分後には2枚を同時に交代させると、続く67分にもカカウを投入して攻撃に出る。最終ラインを1枚減らして3バックに変更し、3トップにしたように見えたが、中村憲剛は4トップと表現。またペッツァイオリ監督は「5フォワード」という言い方でこの布陣を説明した。前戦から圧力をかけられることで、カウンターが狙える場面が増えた川崎Fではあったが、決定機を決めきる事ができず、試合を終わらせられなかった。更にいうと、75分にはゴール前の混戦の中、長谷川にこの日2点目となるゴールを押し込まれ、さらには後半アディショナルタイムの90+1分に南野拓実に強烈なゴールをねじ込まれる。土壇場で逆転された川崎Fは、もう1点奪われてしまうと準々決勝敗退となる苦境を迎えるが、さすがにここは全員で凌ぎ切り3失点で試合を終えた。
結果的にホームゲームで2-3で敗れた川崎Fではあったが、ともに1勝ずつした両者は、判定基準となる得失点差で川崎FがC大阪を1点上回り、勝ち上がりが決まった。ともにアウェイゴールを3点ずつ奪い、2試合合計で9ゴールが生まれる相変わらずの派手な試合となり、サポーターもそれなりに楽しめる試合になったのではないかと思う。もちろん試合する選手たちはヒヤヒヤさせられる試合だったはずで、お互いに修正すべき点を認識して次の試合に備えたい。
それにしてもこれだけ点を取り合うカードはJリーグの中でもそう多くはない。ある意味スペクタクルのあるカードであり、個人的には来季もぜひ戦いたい相手である。C大阪出身の大久保は、そんなC大阪の残留について、先日「残留して欲しいですね」とエールを送っていた。対戦相手によっては派手なゴールパフォーマンスを見せる大久保ではあるが、ことC大阪戦に関してはゴールしても一切喜ばない選手の言葉なだけに、嫌味なニュアンスや上から目線の言葉ではない。ぜひともリーグ戦の残り試合で勝点を積み上げ、来季もリーグ戦やヤマザキナビスコカップなどで対戦させてもらいたいと思う。
以上
2014.09.08 Reported by 江藤高志
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