互いの指揮官が「決戦」と位置付けた、J2自動残留を巡る21位讃岐と20位東京V(全22位中)との直接対決は、讃岐に軍配が上がった。
終わってみれば、「全体通して、讃岐のペースに嵌ったように思う」との鈴木惇の言葉通りだったのではないだろうか。
前半、立ち上がりから決して悪い流れではなかった。特に20分過ぎには押し込む場面も見られ、どちらかといえば、東京Vが主導権を握りながらボールを動かすことができているという印象を受けた。だが、「相手が上手いのはわかっていたので、持たれることもわかっていました。でも、最後のところでやらせないということを徹底した」(讃岐・西野泰正)。結局、東京Vが決定的チャンスを作れなかったということは、つまりは、讃岐の術中に嵌っていたということだろう。
実は、讃岐からすれば、技術ある選手たちが揃い、巧みにパスをつないでくるスタイルのサッカーへの対策は、前々節の京都戦ですでに刷り込み済みだったと、西野は明かす。「ボールを回させながらも、うちは9人でブロックを作って、とにかく先に失点しないこと」に重きを置いた前半だったという。それは、讃岐のシステムを見れば明らかだった。前半は4−1−4−1で、木島を1トップに残し、残り9人が引く形。アンカーの山本翔平と中盤中央の岡村和哉、堀河俊大がしっかりスライドし、右ワイドの西野も「前半は守備要員としての役割が主でした」ほぼ5バックと言っても過言ではない戦い方であった。もう1つ、西野を低めに置いた意図として、左サイドバックの安在和樹が高い位置を取って攻撃に加担するという東京Vの攻撃面でのストロングを封じるためでもあった。その部分でも、西野は役割をしっかりと果たせていたといえよう。
相手が9人で守ってくるという傾向は、東京Vもスカウティングでわかっていた。だが、結局崩し切ることができず、前半を0-0で折り返す。
「ホームなので、前半から強力にプレスをかけて、高い位置で奪って、なんとか前半で点を獲ることが大事だと思っていた」(東京V・三浦泰年監督)
「前半は0−0でOK」(讃岐・北野誠監督)
讃岐の思惑通りだった。
後半、讃岐は“勝ち”に出た。「東京Vのボランチの2人のところで展開をさせられたので、今度はそこを取りに行っちゃおうぜ、ということで、4−4−2にした」(北野監督)西野をトップに出し、山本、岡本のダブルボランチ、右ワイドに堀河を置く布陣を敷く。「思い通りあそこ(東京Vのボランチ)のところでプレッシャーがかけられたので、カウンターが打ちやすくなった」ことで、前半、孤立が目立った木島に、ようやくボールが入るようになり、讃岐に少しずつ攻撃のリズムが生み出されていく。そして、高橋泰、大沢朋也を次々と投入し、攻撃を活性化させていくと、ついに均衡が破れたのは、後半31分だった。代わって入ったばかりの大沢朋也が左サイドでキープし、前を行く小澤雄希へ送ると、その折り返しを中央の高橋泰へ。東京V・井林章も同時にクリアに出たが、高橋の胸トラップの方が一瞬先だった。前にあったスペースに上手く落とすと、「あとはGKの動きを見て、届かないところに蹴ることだけを意識していました」右足アウトサイドで上手く浮かせ、ゴール右隅に送り込んだ。
「ゲームの前『今日はベテランがすごくカギになる。だから、最初の人、途中から出てくる人、ベテランはしっかりその経験を生かしてくれ』と言っていた」見事、北野監督の読みと期待通り、大沢、小澤、高橋という3人のアラサーが生んだ決勝点だった。
この試合のポイントとして、三浦監督は「決定力」を挙げていた。その中で、1人で6本のシュートを放ちながら、1本も決められなかった杉本竜士は、「FWが6−0のチームで勝てるわけがない」と、自分自身へ苛立ち、自虐の言葉を並べて責めたてた。
「決戦」と位置付けた以上、何としても「勝つ」ことに徹し、守りをまず徹底した “割り切り”と、“決定力”長けたFWの存在。讃岐は、残念ながら東京Vが現時点では身につけられていない2つの要素を見せつけ、勝点3を手にした。
これで、両チームの勝点差は「4」。讃岐にとっては、いよいよ射程圏内へと迫ったと言っていいだろう。
東京Vは次節栃木戦に続き、次々節は22位の富山との対戦を控える。この試合の敗戦のショックが小さいものではないことは想像に容易い。だが、弱気になっている時間はない。これまで以上の危機感を感じながらも、「過去は変えられない。未来を良くするために、良い意味で切り替えていくしかない」(佐藤優也)
一方、讃岐は次節、首位を独走する湘南とのビッグゲームが待っている。「これで湘南に頑張って勝てたら・・・デカいよね!」そう笑顔を見せる木島の言葉を聞いていると、初の連勝、自動残留圏内へ勝点4差と、良いムードが流れている今のチームだからこそ、可能性は大いにあるとの期待感を抱かせる。「讃岐はまとまりのある良いチーム。僕は、東京Vでは自分の居場所を確立できなかった。それは力不足。それでも、その僕を大事にしてくれて、自由にやらせてくれている北野監督のためにも、もっともっと上を目指したい」そして、チームがさらに上を目指すためとして、「けっこう僕に『とりあえず出しとけ』みたいなところがあるけど、今日の結果で、それだけじゃ厳しいのもわかったと思う。それだけでもこの勝利は大きい」試合を重ねながら、チームが課題と直面し、成長していると話す。
そんな、全幅の信頼関係を築いている監督の下で、自らのできることを冷静に見極めながら、しっかりと結果を残し、メディアを前に言葉とプレーで若手を叱咤激励する35歳・木島良輔の存在が、妙に眩しく見えた。
以上
2014.09.07 Reported by 上岡真里江
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