石崎信弘監督の的確かつ迅速な判断がチームの危機的な状況を救った。前節湘南戦で守備の要である西河翔吾が骨折、そしてイ・ジュヨンがU-23韓国代表に選出されたため欠場となった。「本来のセンターバックがいなくなった」(石崎監督)緊急事態。さらに試合2日前の練習中に足を痛めたディエゴは先発メンバーに登録されていたものの、ウォーミングアップで再び負傷し、試合直前に急きょメンバーから外れることに。次々と想定外の事態が山形を襲った。
やはりチームとして戸惑いは隠せず序盤から水戸のスピーディーなボール回しに翻弄される展開が続いた。サイドを崩され、ピンチの連続。いつ失点してもおかしくなかった。ただ、1つの采配がその状況を劇的に変えた。27分、山形は比嘉厚平を下げて、小林亮を投入。システムを3−4−3に変更し、水戸と全ポジションでマッチアップさせる策を採ったのだ。
石崎体制では公式戦で初めて使用するシステム。それだけに行きあたりばったりの感はあった。だが、石崎監督は「ちゃんと用意していましたよ」とそれを否定する。紅白戦では試していなかったが、若手の練習などで採り入れていたのだという。そして、直近2試合で松本、湘南と3バックのチームと対戦して、いずれも勝利を逃しており、「3バックのチームに苦労していた」(石崎監督)ことから、この試合に向けて秘策として3バックを考えていたのだ。だからこそ、すぐに機能した。
システム変更によって「水戸の攻撃を抑えられた」(石崎監督)。高い位置でのボール奪取から縦への速い攻撃で何度も水戸ゴールを襲った。そして78分に右サイドのロングスローからの展開。ロメロフランクの強烈なシュートは本間幸司の好セーブに阻まれるものの、こぼれ球に詰めた石川竜也がゴールに突き刺し、貴重な先制ゴールを奪ってみせた。ピンチをチャンスに変えた采配が勝利を引き寄せたのであった。
一方、水戸はアクシデントを乗り切ることができなかった。山形がシステム変更するまでは圧倒的に攻め込む展開に持ち込んだものの、27分以降、各ポジションでマンツーマンディフェンスを敷いてきた山形の守備を攻略することができなくなり、44分にはそれまで前線で絶妙な動きを見せてリズムを作り出していた馬場賢治が負傷してしまうとさらに苦しい展開を強いられる。代わりにオズマールを投入することとなったが、馬場のような「間で受ける選手がいなくなってしまった」(柱谷監督)ことにより、前線と中盤の距離が空くことに。序盤で見せていたようなパスワークは影を潜め、連動した守備も機能しなくなった。
さらに前半中盤のバランサーとしてチームをコントロールしていた西岡謙太に「トラブル」(柱谷監督)が起きたため、ハーフタイムで内田航平と交代。だが、後半は前半のようにセカンドボールが拾えなくなり、さらに3トップが前線に張り付いてしまったために、中盤が空洞化。山形の猛攻を受けるだけで、主導権を奪い返すきっかけをつかむことができないまま、時間は過ぎていった。そして78分、ロングスローの展開から失点。結局、27分以降、いいところを出せないまま敗戦を喫すこととなってしまった。
これでリーグ戦8試合勝利なし。ここ数試合は内容がよくても勝ちきれないという状況だったが、この試合は完敗と言える内容。「ふがいなさすぎる」(細川)と選手たちはかつてないほど肩を落としていた。
だが、これまで積み上げてきたものが1試合で崩れるわけがない。2部練習を重ねて築いてきた土台はそんなにぜい弱なものではないはずだ。大事なのは次の試合である。もう一度、自分たちのスタンスを取り戻し、攻守においてアグレッシブなサッカーで勝利をつかみ取りたい。「悔しい思いから学ぶこともある」と細川は力を込めた。このままシーズンを終えてしまうのか。そんなわけはないと、日々懸命にトレーニングに打ち込んでいる選手の姿を見ている身は思っている。しかし、それを証明するのは選手たち自身であり、結果でしか示すことはできないのだ。もがき苦しむ日々を生かすのか、無駄にするのか。残り12試合、水戸の誇りを、水戸の意地を、ピッチでぶつけてもらいたい。
以上
2014.09.07 Reported by 佐藤拓也
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