浦和の選手たちにはいい教訓になったはずだ。広島のような強敵に対し、気の抜けたようなプレーで立ち向かえば痛い目を見る。
9月3日に敵地で挑んだ第1戦、浦和の前半のパフォーマンスは実に低調だった。浦和と広島はともに3−4−2−1でポジション的に噛み合い、互いにマークがいる状況になりやすい。そういったなかで優位に立つためには運動量で上回ってマークを外す、球際で「絶対にボールは渡さない」という強い気持ちを持って戦う必要があるが、あの日の浦和はどちらも決定的に欠いていた。
浦和はこの対戦前まで広島に6連勝中だった。その大きな要因となっていたのがマンマークで相手の攻撃を封じる戦い方だったが、ただ単にマンツーマンにしていたから勝てていたわけではない。前提として運動量と闘志で相手を上回っていたから、その戦い方が機能していたのだ。
動きのキレを欠いたマンツーマンでは、後手後手の反応で相手を封じることなどできないばかりか、不用意に自分の背後を空けるだけなので、かえって危険な状況を生み出す。選手に球際で勝つ気持ちがなければ、単に相手の背中に張り付いているだけの存在になり、やはり相手に何の脅威も与えず、スペースを与えるだけだ。
攻撃でも同じことが言える。運動量がないからパスをいい形で受けられず、球際で戦っていないからボールをキープできない。それが前半の浦和だった。
選手たちも不甲斐ない45分間の原因は理解している。「前半みたいに球際で負けて、走っていなければ難しい。広島とじゃなくても、浦和のジュニアユースと対戦しても、この前の前半の出来だとやられるんじゃないかなと、非常に厳しいゲームになってたんじゃないかなと思っている」。森脇はああいうゲームは二度としないと誓った。
ミハイロ・ペトロヴィッチ監督はハーフタイムに「可能なら全員を交代させたいくらいだ」と呆れ顔で雷を落としたそうだが、確かにそれくらい低調な内容だった。だが、監督の喝が効いたのか、浦和は後半からようやく戦う気持ちを見せ始め、今度は広島に冷や汗をかかせた。
ペトロヴィッチ監督は「引き分けは妥当な結果だった」と振り返った。前半は広島が決定的なシーンを作り、後半は浦和に惜しい場面があった。90分を通してみればどちらにもチャンスがあったので、痛み分けの結果は妥当とも言える。
ただ、浦和が前半を失点ゼロで乗り切れたのは運に助けられた部分も大きく、もし幸運の女神が広島に味方していたら、前半だけでゲームオーバーになっていた可能性は十分あった。浦和としては第1戦は落としたくらいの心づもりで受け止め、第2戦では最初から気持ちの入ったプレーを見せてもらいたい。
広島としては勢いに乗っている時間にチャンスを生かせず、ホームで勝点3を取れなかったことは残念だったが、浦和への苦手意識を払しょくするようなパフォーマンスを出せたことは好材料だろう。
広島は浦和に対し、これまでリスクをあまり負わない受け身の姿勢で戦うことで苦杯をなめ続けてきた。だが、第1戦では積極的に前からボールを奪いにいく守備に変えたことで、立ち上がりからペースを掴んだ。元々、攻撃のコンビネーションは優れているチームだ。相手を押し込むような守備ができれば、それだけ攻撃の威力も増す。
佐藤寿人の駆け引きと嫌らしい動き出し、左サイドの柏好文の突破力も浦和を苦しめていた。第2戦でも彼らが仕掛ける局面での攻防は注目ポイントになるだろう。浦和としては対処法を整理しておかないと苦しむことになりそうだ。
また、広島にとって大きいのは青山敏弘が復帰したことだろう。第1戦のパフォーマンスを見る限り、まだ万全の調子ではなさそうだが、それでも攻守で違いを生み出せるプレーメーカーの存在は心強い。
両者の激突は今回もこれまで同様、時に静かな神経戦、時に魂を削り合うような激戦になることだろう。ともにコンビネーションを磨いてきたチームだ。一瞬の攻防が勝敗を分けることになるはずだ。
以上
2014.09.06 Reported by 神谷正明
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