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【J2:第29節 山形 vs 湘南】レポート:先制した山形を湘南が後半に逆転!首位の実力を見せるも、曹監督は前半のプレーに強烈なダメ出し。(14.09.01)

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前半キックオフ。センターサークル中心部にはロメロ フランクと並んで、珍しく宮阪政樹が立っていた。その意図は直後に判明する。ロメロ フランクがキックオフしたボールを宮阪はその方向のまま振り抜いた。風下という以上にややダフり気味のシュート力なくバウンドしながらGK秋元陽太のもとへ届いたが、山形の意気込みが十分に伝わるファーストプレーだった。湘南も前がかりだったが、山形は奪ったボールをその背後まで運んで押し込む形をつくると、開始から3分、湘南の縦パスを潰してこぼれ球を松岡亮輔がかき出すと、ロメロ フランク、中島裕希、ディエゴと渡るカウンター。再びボールを受け取ったロメロ フランクがスピードを上げたディエゴをスペースへ走らせると、左足で巻いたシュートをゴールネットに突き刺した。

いきなりビハインドとなった湘南は19分、遠藤航の縦へのフィードから菊池大介、ウェリントン、さらにもう一度菊池とペナルティーエリア内でシュートを狙う。24分には秋元のフィードからウェリントンがヘッドでフリックしたボールに飛び込んだ岡田翔平がポストをかすめるシュートを放つ。
ビルドアップの技術でも上回り押し込む時間を多くつくると、守備ブロックの外からも何度かシュートを狙った。1-0のまま終えた前半45分、湘南のシュート数は山形の4に対して10と上回る。しかし、前半は「自分たちはそうじゃなくて自分たちのスタイルで、前から行くことによって湘南のスタイルを消していこう」(山田拓巳)と真っ向勝負を挑んだ山形のものだった。くさびを当てダイレクトパスに3人目が飛び出す湘南の攻撃にも対応し、シュートに対しても体を寄せていった。そうして、奪ったボールを秋葉勝が巧みにボールをさばくなど、前へ前へつなぎながら敵陣まで運ぶシーンは何度もあった。

「前半の入りは今シーズン、もっと言ったら先シーズンも含めて一番ダメだったでしょうね。相手を足先でかわすプレー、それからAとBのパスに対してしっかりコミュニケーションを取らない、このへんでいいだろう。今、選手に厳しい話をしてきましたけど、去年だったら0-3、0-4ですね」。前半の、特に入りの部分をそう総括したのは曹貴裁監督。不満の矛先はスコアでもシュート数でもなく、自分たちのポテンシャルを信じきれず消極的にプレーしたこと。縦パスが入らない状況についても、「一つミスしたら入れないんだったらサッカー選手やめろ」といった厳しい言葉を投げかけている。

後半キックオフ。ディエゴの激しいチェイシングを受けた湘南ボールはバックラインの遠藤航まで戻されたが、そこから縦に岩尾憲、ワンタッチでバイタルエリアの岡田翔平、アウトサイドの藤田征也とつながれ、ファーストプレーでコーナーキックを獲得する。これもまた、後半にかける意気込みを十分に示すプレーだった。後半キックオフからの相手の攻勢を予測し石崎信弘監督から集中した入りを指示されていた山形だったが、「入り方は集中していってたんですけど、結果的には相手の勢いに圧された」(石井秀典)と歯車に狂いが生じていた。

その湘南の意気込みが一つ結実したのは50分。右サイドのスローインから岩尾が逆サイドへ振り、菊池大介を経由してボールを追い越した三竿雄斗がスピードで振り切りアーリークロス。ゴール前では守備の石井を中央にはさんで樋口寛規と岡田が川の字状にスライディングしていた。クロスに合わせゴールネットを揺らしたのは、ファーサイド側の岡田だった。「あの形は岡田君とも話し合っていた形なので、うまくいってよかった」とアシストを決めた三竿。「(湘南の)1点目は見事な得点ですよ。それは認めてあげなければいけないんじゃないかなと思います」と石崎監督も相手を讃えたが、「ただそれに対して、クロスの対応というのはまだまだ改善の余地があると思います」と逆サイドへのスライドを伴った際の中央のマークの把握に課題を指摘した。湘南は勢いそのままに直後にもコーナーキックを得ると、キッカー・岩尾のボールを菊地俊介が合わせてゴール前の混戦。かき出されたボールが再び岩尾の足元に戻ると、折り返しをヘディングで合わせたのはまたも岡田。「(岩尾)憲君がすごい見てていいボールをくれたので、合わせるだけだったです。相手がボールウォッチャーになってて、フリーになってたので、そこで一番いいポジションを取れたというのが一番大きかったです」。競る相手もなく、169cmが空中に舞った。

逆転に成功し、本来のテンポ、スピード感がプレーに戻った湘南はサイドからペナルティーエリアを何度もえぐるなど完全に試合を掌握。山形はアクセルを踏み込んだ前半の疲れからボールを奪う位置が徐々に下がり、自陣に押し込まれ、奪ったあとの起点もつくれず攻撃では沈黙した。72分の山崎雅人の投入はこの流れを変えたが、76分のディエゴのシュートはポストを直撃し、その1分後の山崎のボレーシュートもクロスバーに跳ね返された。アディショナルタイムにはフリーキックからウェリントンがヘディングで合わせ、試合を決めた。

ハーフタイムに喝を入れた曹監督は、試合終了後も選手たちに思いを伝えてから記者会見場に足を運んだという。「7分で2点を取る力があるチームなのに前半眠ってるというのは、監督としても指導者としてもやっぱり、いいことか悪いことかと言ったら悪いことで、それを出しきったところでやられてしまうのはある意味仕方ないんですけども、ただ逆転して勝ったからいいというのは済まされない」、「2-1になってからのボールの失い方も、本当に幼い。J1だったらまたあれでやられている。たまたま3点目取れたから試合が終わりましたけども、僕の中では去年の自分たちの悔しさ、反省、すべての意味で生かされてないと言われてもしょうがないゲームだと思います」。J1で力及ばず1年で降格した経験が生きているからこその厳しい姿勢がそこにはある。結果的に逆転勝利したことに安堵のかけらもない。勝点や順位や昇格さえも超越したところで己との戦いに挑み続ける湘南に、死角は見当たらない。

その湘南に跳ね返された山形の敗戦は1ヶ月ぶり。逆転され3失点を喫したのは前半に懸けた分だけ消耗したことも要因の一つだが、昇格を目指す身としてはスコアも内容もより僅差で競りたかったのが本音だろう。石崎監督は「先制点を取った時に追加点を奪うことと、同点になるチャンスはきっちり決めていくというところ、点を取るというところをしっかりやっていかなければいけないのかなと思います」と決めきる場面の重要性を挙げたが、それとて一朝一夕に解決できるものではない。正面からぶつかって感じ取った首位との距離感をまずは真摯に受け入れることでしか、次へのスタートラインはやって来ない。

以上

2014.09.01 Reported by 佐藤円
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