岐阜にとって、8月最後試合をホームで迎えることとなった東京Ｖ戦。ラモス瑠偉監督の古巣が相手という面で注目が集まったが、それ以上にラモス監督が懸念していた『夏』を最高の形で締めくくれるかどうかが、岐阜というクラブにとっては重要なことであった。
結果は3−0の完勝という、最高の形で締めくくることが出来た。この最大の勝因は「J2は運動量が多いチームが上位を走っている。技術だけでは無理な世界。だからこそ、もっと若手に出て来てもらいたい」とラモス監督が語ったように、運動量で相手を凌駕したこと。しかも戦術的意図を理解した上での運動量であることを強調していきたい。

まず、この試合を振り返ると、【4-4-2】を敷く東京Ｖに対し、これまで3バックを主に戦ってきた岐阜は、同じ【4-4-2】の布陣で、相手とマッチアップする形で臨んだ。
前半はこれがいい流れを生み出した。難波宏明とナザリトのツートップが、高い位置でプレスを仕掛け、DFラインも連動して高い位置を取ることで、東京Ｖを押し込んでいく。特にこの試合は左の高地系治、右の太田圭輔の両サイドハーフが大きく躍動。サイドに張るだけでなく、積極的に中に入って、ボールを多く触って、攻撃のリズムメークをするだけでなく、両サイドバックのオーバーラップを引き出したで、完全にペースを握ることが出来た。

これに対し、調子の上がらない東京Ｖは、ボランチの鈴木惇の出場停止の影響もあってか、楠美圭史とニウドのダブルボランチでうまく起点を作ることが出来ず、ズルズルと守勢に回っていった。
18分、相手の縦パスを奪うと、高地、太田と繋ぎ、左サイドの難波へ。難波のクロスはDFにクリアされるが、そのこぼれを太田が冷静に押し込んで、岐阜が先制に成功。このゴールは高地と太田の距離感が近かったこそ、生まれたものであった。
その後、東京ＶもFW杉本竜士のドリブル突破からのクロスを、MFニウドがフリーで合せるが、枠を捉えられないなど、チャンスは作るが単発に終わる。裏を返せば、それだけ岐阜の守備がハマり、相手のパスコースを分断していたことになる。東京Ｖは安在和樹と田村直也の両サイドバックが上がることが出来ず、前線との距離が空き、攻撃に厚みを作り出せなかった。この状況に三浦泰年監督は、前半途中にCB金鐘必をボランチに上げ、ボランチだったニウドを右MFに、右MFだった安西幸輝を右サイドバックにシフトチェンジ。打開策を打ったが、43分、高地が中央でインターセプトし、右の太田へショートパス。太田の鮮やかなスルーパスに抜け出したナザリトが、GKの股を抜くシュートを沈め、リードを2点に広げた。

後半、東京Ｖは楠美に代え、中後雅喜を投入。これによりボールは前半よりも回るようになったが、これをもってしても岐阜の勢いは止められなかった。60分、太田の右からのクロスにナザリトがニアで反応。ここで打ちきれなかったが、こぼれたボールを高地が鮮やかなワントラップで寄せてきたDFを交わし、左足のコントロールシュートをゴール右上隅突き刺した。
3−0。これで勝負は決した。運動量が落ちない岐阜は、終盤に入ってもポゼッションで大きく上回り、チャンスを創出。ゴールは3点にとどまったが、終始試合を有利に進めて、試合を無失点でクロージングさせた。
「自分たちのペースにしたかったが、終始アディショナルタイムを含めて岐阜のペースで終わってしまった。いつも試合を2つの勝利で考えているが、内容と結果両面で相手に与えてしまった非常に悔しい敗戦」と三浦監督に言わしめるほど、全てにおいて岐阜が凌駕した試合だった。
「リーグが始まる前に、最初は若手を育てながらベテラン勝負。夏くらいに若手が使えるようになればいいと思ってやった結果、見事にはまった。遠藤、水野、比嘉、益山、清本、田中らが成長し、ベテランを休ませることができた。今後は、ベテランは若手に負けている場合じゃないし、若手もこれで満足してもらっては困る。夏は福岡戦も、群馬戦も勝てた試合だったし、すべてに納得はしていないが、全体的には良かったと思う」。

正念場だった夏場が、『躍動の夏』に変わった。後はこの財産を秋につなげていくだけ。真のベテランと若手の融合はここから始まる。第二段階に入った『ラモス岐阜』のこれからが非常に楽しみだ。

以上

2014.09.01 Reported by 安藤隆人