勝点を失ってしまえば、取り戻す時間が限られてしまうのがこれからのリーグ終盤戦。その中でもミスを恐れずアグレッシブに戦い、勝ち抜かなければ上のカテゴリーには上がれない。しかし、その点に関しては両者ともにチャレンジをしていくというよりも、序盤はイージーなミスが目立った。田坂和昭監督は「魂の抜けたようなサッカー」と表現をしたが、大分に関しては攻め切れず中途半端にボールを失っては愛媛のカウンターを受け、ピンチを迎えた。狙いとしていたサイドからの攻撃も徹底できず、なかなかフィニッシュまで持ち込めない。両サイドの攻防では、逆に愛媛が藤直也と三原向平がフリーの状態を作って主導権を握ろうとしていた。

ただ、愛媛もカウンターでは得点の気配が感じられたが、サイドに入ってからフィニッシュへの流れを作れない。大分を崩し切るまでには至っていなかったが、前半42分にワンチャンスをモノにした。愛媛は右サイドから村上佑介のクロスに対して河原和寿が飛び込んで先制点を奪った。大分同様に愛媛もミスが多く、悪いボールの失い方から先に失点してもおかしくない展開だったが、よくないなりにリードができたことで試合を優位に進められるはずだった。

しかし、後半の頭から投入された大分のラドンチッチが流れを変える。愛媛の林堂眞は「それほど守備ができる選手じゃないけれど、あれだけ大きい選手が入れば無意識にラインを下げてしまいがちになる」と振り返ったが、少なからず愛媛の最終ラインに精神的なプレッシャーがかけられていたことは確かだ。高さはもちろん、前線で起点となって存在感を発揮していたが、52分にそのラドンチッチが林堂のバックパスを見逃さず、自ら奪ってそのまま同点ゴールにつなげた。

痛いミスではあったが、まだ同点。愛媛は切り替えて戦わなければならなかったが、追われる立場になると立て直しがきかない悪い癖が出てしまう。直後には右サイドを崩されて、風間宏矢が振り向きざまのシュート。これはわずかに枠を外れたが、73分には風間が右サイドでしかけ、そこからラドンチッチのスルーパスに抜け出したのが為田大貴だった。為田はためらわずに右足を振り抜き、逆転ゴールを叩き込んだ。結局、愛媛はこのまま同点に追いつけず敗れたが、これでリーグ後半戦だけでも第23節の札幌戦、第26節の岐阜戦に続く３度目の逆転負け。悔やまれる形で勝点を失い続けている。一方で、大分にとっては今季アウェイでようやく２勝目を挙げた。苦手としていた敵地での勝利に加え、続いていた後半の失点も止まった。課題を克服したという点では、大きな収穫を得た一戦だといえる。

これに対して愛媛は天皇杯、川崎Ｆ戦の勝利から上向きかけていた流れが断ち切られかねない厳しい結果を突きつけられた。逆転負けという精神的なダメージもさることながら、６位の大分に敗れたことでプレーオフ圏内への勝点差は13に広がった。それでも石丸清隆監督が「まだ終わりじゃないので次に向けて修正しながらやるしかない。選手も完璧じゃないけど伸びるところもある。下を向かずもう一度這い上がっていきたい」と前を向いたように、ここで踏んばれるか。冒頭でも触れたように、失敗を取り戻すことのできる時間はどんどん短くなってくる。天皇杯を含む連戦も控えているが、まずは次のアウェイ栃木戦（９／６＠栃木グ）で６試合ぶりの勝利をつかむことに全力を尽くすしかない。

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2014.09.01 Reported by 近藤義博