J2のリーグ戦で好調なチーム同士の対決。さらに、アグレッシブな攻守に強みがある福岡との対戦とあって、その福岡の勢いに対して横浜FCがいかに対応するかが大きなポイントだった。特に前節の東京Ｖ戦では、東京Ｖのハイプレスに苦しんだ経緯があったが、その反省を生かした横浜FCが、序盤でのペース争いに勝利。その流れを勝点3という結果に結びつけた。

立ち上がりにビッグチャンスを得たのは福岡。2分に、阿部巧のアーリークロスがファーサイドの城後寿にぴたりと合い1対1の決定機となる。しかし、これを南雄太が完璧な出足でセーブ。「最初のシュートを決めていれば結果は違っていたと思うので、今日の試合の結果については責任がある」と城後は悔しさを見せたが、このビッグプレーで福岡の勢いを1つ食い止める。さらに、横浜FCが福岡からペースを握るのに大きな貢献をしたのは、ドウグラスの出場停止の代わりとして、ボランチで出場機会を得た安英学。中盤で激しい当たりを見せて、局面で激しい福岡のお株を奪うプレーを連発。まさに局面の戦（いくさ）でも、横浜FCが福岡を上回っていく。

そして、横浜FCが福岡の3バックの弱点であるサイドの裏のスペースを冷静に突いていく。そして、そのプレーで得たCKで、横浜FCが先制点を挙げる。9分、松下年宏が蹴った精度の高いクロスに安がヘディングシュート、一度は防がれるがそのこぼれ球を松下裕樹が押し込む2戦連続ゴールを挙げる。その後も、横浜FCペースで試合は続き、前半ラストプレーとなる45+3分に再び松下年のCKから今度は安が直接ヘディングでゴールを挙げ、2-0で前半を終了する。

前半の怪我で、攻守の要である坂田大輔と古賀正紘をハーフタイムで交代せざるを得なくなった福岡は、後半も勢いを取り戻すことができず。古賀の交代により、システムを4バックに変更し、縦に早い攻撃を狙うが、横浜FCのプレスが緩まないこともあり、福岡はなかなか思い通りのプレーができず、肝心の縦パスも精度を欠いてしまい、横浜FCのカウンターのチャンスとなる場面も多かった。両チームとも後半もゴールを目指す展開は続いたものの、後半はゴールを割ることは出来ず、2-0のままゲームは終了。J1昇格プレーオフ圏内を目指す両チームの一戦は横浜FCが勝利した。

横浜FCにとっては、前節の東京Ｖ戦での反省を生かし、「今週はアグレッシブさを取り戻そうと。福岡は非常に球際を激しく来るチームなので、それ勝つところをフォーカスして、トレーニングをして、それをそのまま選手たちがピッチで表現してくれた」（山口素弘監督）というように、試合中の局面で負けることはなかった。そして「プレスもスカウティングに従って時間を割いて練習した」と安が振り返ったが、前線からの連動した守備が非常に機能したように、トレーニングからの周到な準備が実った勝利だった。後半戦好調の要因は、「目先の一戦」にチーム、スタッフ、そしてサポーターが集中できていること。この試合の勝利は、苦しかった前半戦から這い上がるために必要なことは、目先の一戦への集中しかないことを象徴的に表しているのではないだろうか。

福岡は、立ち上がりのビッグチャンスを決められなかったことが大きく響いた形となったが、同時に持ち前の激しさで相手に上回られてしまった上に、攻守の要をハーフタイムで欠いてしまったことも、試合の流れをつかめない大きな原因となった。プシュニク監督は「我々の選手には良く戦ってくれた」と選手をねぎらったが、一方で「2点ともおかしな状況で失点してしまいました」という失点の形は、これからのシーズン終盤に向けて、貴重な勝点、得失点、順位に直結するディテールのプレーとなる。自らの戦い方を取り戻すとともに、細かな問題を修正できるか。久しぶりの敗戦からの反省点となった。

シュート数は横浜FCが11本、福岡が6本と決して多くなかったが、局面での激しさは戦前の予想通り。その戦に真っ向勝負で勝利した横浜FCが勝点3を得た。夏休みを締めくくるにふさわしい見応えのあるゲームだった。

以上

2014.09.01 Reported by 松尾真一郎