今季の第14節、山梨中銀スタジアムで対戦した際、柏は甲府の引いた守備組織を崩せず、逆にセットプレーとカウンターで0−3と完敗した。その戦い方イメージが強かったのだろうか、この試合で前からアグレッシブに仕掛けてきた甲府に対し、「思ったよりも前から来た」(高山薫、太田徹郎)と感じている選手もいた。その入り方の部分で柏はやや後手に回った感があり、前線からのプレスと積極的な攻撃の意識を持つ甲府が押し込む序盤になった。
ただ、興味深いのは甲府のキャプテン、山本英臣の言葉である。
「立ち上がりから良いプレッシャーをかけられた中で、後から冷静になって考えると完全相手の得意な形にしてしまった。良いプレッシャーをかけても、フィジカルと技術の高い相手の3トップとうちの3バックの勝負になってしまった」。
柏が最も警戒していた点は、甲府の5バックとダブルボランチにゴール前を固められ、柏の前線3枚がそのゾーンに閉じ込められて身動きの取れない状態だった。だが、前から来てくれるのなら、大谷秀和、茨田陽生のダブルボランチを中心にパスを回していなし、「柏の前線3枚対甲府の3バック」という形に持ち込める。甲府の3バックはマンツーマン気味にレアンドロ、工藤壮人、高山をケアしていた。しかし、山本の言葉にもある通り、「フィジカルと技術の高い相手の3トップ」には、数的同数でスペースを与えれば、決め切ってしまう力がある。
それが発揮されたのが先制点の場面だ。それまで柏にチャンスがなく、甲府の優勢は明らか。ところが20分、大谷のフィードに対し、工藤が山本との競り合いに勝ち、佐々木翔のタックルをかわすと、GK荻晃太の位置を見定めて冷静にゴールに流し込み、先制点を挙げた。第16節広島戦以来、6試合ぶりに生まれた“エース弾”だ。
城福浩監督は「あのワンチャンスを与えたことが大きかった。あそこを凌ぎたかった」と先に失点を許したことを悔やんだ。大谷が「0の時間が長くなると相手がリズムを掴んでしまう」と見ていたように、甲府にすれば先にゴールを奪えないまでも、0−0の時間が長引けば柏の方に焦りが出る。そこで生じた相手の綻びをショートカウンターやセットプレーで的確に突き、山梨中銀スタジアムで快勝を収めた再現を目論んでいたはずだった。
さらに城福監督が「我々にとっては強く強く反省しなければいけない」と言及したのが、2失点目。高さのある盛田剛平を入れて、より攻撃的にシフトチェンジをした矢先。柏にサイドを突破されただけではなく、DFもレアンドロのマークを掴み切れずに放してしまう。後半開始のホイッスルからわずかに30秒、橋本和のクロスに合わせたレアンドロのヘッドがゴールネットに突き刺さった。
こうなると、あとは柏の術中である。2点のビハインドを跳ね返そうと前に出てくる甲府をいなしながら、手薄になった守備の背後を狙っていくだけだ。56分、レアンドロがフリック気味に工藤へつなぎ、巧みに反転した工藤がスペースの広がる甲府の最終ラインの背後へ抜け出す。工藤のクロスがバーに当たり、その跳ね返りを高山が詰めて3−0、点差を広げた。
甲府にとって失点以外に悔やまれるのは、前半終了間際、エドゥアルドを振り切ってゴール前へ突進したクリスティアーノにビッグチャンスが訪れ、そこで同点にできなかったことだろうか。59分にも、クリスティアーノの強烈なミドルシュートがバーを叩く場面もあった。
「ディフェンスラインを引き出して、彼(クリスティアーノ)のドリブルだったり、右足を振り抜くスペースを一瞬でもいいからあげられるような動きができればよかった」(石原克哉)と、前線の連携で柏の3バックを引き剥がし、クリスティアーノの攻撃力をより生かせる形を複数回作れれば、先制点を挙げるか、もしくは点差を広げられる前の時間帯で同点に持ち込むことができたかもしれない。少ないながらもビッグチャンスを確実に仕留めた柏に対し、甲府はビッグチャンスを生かせなかった。そこもまた、この試合の明暗が分かれたポイントだった。
また、これで甲府は、2011年のリーグ戦と天皇杯、昨季のリーグ戦に続き、これで日立台4連敗となってしまった。
山梨中銀スタジアムで甲府の術中にはまった柏が、日立台では甲府を術中にはめて、前回対戦と全く逆のスコアで勝利を収めた。これで柏はホーム3連勝、8月の成績は3勝2分と負けなし。AFCチャンピオンズリーグ出場圏内の3位・鹿島との勝点差は5まで詰め寄った。この勢いをヤマザキナビスコカップの決勝トーナメントと、佳境を迎えるリーグの終盤戦へつなげていく。
以上
2014.08.31 Reported by 鈴木潤
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