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【J1:第22節 浦和 vs 大宮】レポート:さいたまダービーは浦和が圧勝。大宮は苦しい時間を過ごしている(14.08.31)

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両者の現状がどうであれ、常に白熱した戦いになるのがさいたまダービーだったが、今回ばかりは違った。浦和が大宮を蹂躙した。完膚なきまでに叩きのめしたといっても過言ではないだろう。少なくとも、実質的に勝敗が決まる時間帯までは両チームのパフォーマンスに大きな差があったのは確かだ。

大宮は浦和対策を練ってこの試合に臨んできた。ボランチの和田拓也が柏木陽介を、それこそ“トイレまでついていきそうなほど”の執拗なマンマークで見ることで、5バックのような形になって浦和の攻撃を防ごうとした。

大熊清監督の意図としては必ずしもマンマークである必要なかったようだが、和田が「受け渡す相手がいないので、結局最後までついていくしかない。(金澤)慎くんはひとつ前にいたから、ついていくしかないと思ってついていった」と自身の判断でマンツーマンを行った。柏木のケア自体はまずまずできていた。

だが、柏木ひとりをピッチ上から消したところでどうにもならなかった。浦和が攻撃をオーガナイズしていく上で、柏木が非常に重要な存在なのは間違いないが、だからといって今はもう柏木ひとりに依存しているわけでもない。10人対10人にされたのなら、他の選手が攻撃を組み立てればいいし、浦和にはそれができる力があった。そして、それを誰よりも痛感していたのは、他ならぬ柏木を消そうと奮闘していた和田だった。

「柏木選手についていっても他の選手がうまいので、柏木選手がボールに絡まなくても攻め込まれるシーンがあったけど、そうするしかなかった。あの形で入って、あれで守れなければもうしょうがない」。

浦和は大宮の守り方に苦しむこともなく、気持ちよく攻撃を続けた。対策を練っても相手の進撃を食い止められない大宮は防戦一方となり、瀬戸際でなんとか失点を食い止めるシーンが続いたが、防衛ラインが突破されるのも時間の問題だった。

均衡が破れたのは33分、鈴木啓太がサイドへ大きく展開、裏に抜け出た宇賀神友弥が受けてゴール前に折り返すと、2列目から飛び込んできた梅崎司が滑り込みながらボールに合わせ、浦和が先制した。

この時点で大宮の心は早くも折れかけていたように映った。失点した瞬間の選手たちの落ち込みようは、まるで後半アディショナルタイムに勝ち越し弾を決められたかのようだった。実際、試合への集中力が切れていたことはその3分後に結果として表れる。

大宮は浦和のゴール前までボールを運び、フィニッシュまで持っていこうとしたが、ラストパスはGK西川周作にキャッチされた。そこまではよかったが、問題はその後だ。局面はすでに守備に切り替わっていたにもかかわらず、大宮は約半数の選手が気持ちを切り替えられずにアタッキングサードに攻め残ったままだった。

そんな大きな隙を見逃すほど浦和は甘くない。GK西川がスローイングした時はまだ攻撃のギアを上げていたわけではなかったが、相手の緩慢な対応を見てスピードアップ。自陣でボールを受けた梅崎がドリブルで約50メートルほど独走し、外から中へ入る動きで裏を取った柏木へスルーパス。柏木はゴール前の様子をしっかりと確認し、相手DF2人の頭上を抜く柔らかいクロスを上げると、最後は興梠慎三が無人のゴールに頭でボールを流し込んだ。浦和は3人の関係性だけで大宮の守備を完璧に崩した。

もう浦和のやりたい放題だった。余裕のある展開のなかで選手たちは魅せるプレーの意識が強くなり、DFラインの選手たちも気分よく積極的に攻め上がっていた。49分には柏木のCKから森脇良太がヘッドで3点目。60分にはGK西川のパントキックから興梠がひとりでペナルティエリア内まで持ち込み、切り返しで足を滑らせてシュートには持ち込めなかったものの、ラストパスに切り替え、宇賀神がトドメの4点目を加えた。

大宮もこれでようやく火がついたのか、残り30分を切ってから見せ場を増やしていく。4点リードで浦和のモチベーション、集中力が落ちていた様子も見られたが、大宮にもさすがにこのまま終わるわけにはいかないという意地を見せた。84分にはズラタンがGK西川の肝を冷やすヘッドを見舞い、89分には泉澤仁がドリブル勝負で揺さぶってからクロスを上げ、ズラタンがクロスバー直撃のヘディングシュートを放った。ただ、どちらも結果には結びつかなかった。

大宮にとっては精神的にもかなり堪える敗戦となったが、そのなかでも一筋の光明と言えるのは泉澤が見せたパフォーマンスだろう。後半からピッチに立った泉澤は切れ味鋭いドリブルで対峙する浦和の守備陣を何度も困らせた。大宮でただ一人、攻撃で違いを生み出せていた選手だった。

浦和はダービー勝利により2位との勝点差を3に広げて頭ひとつ抜け出たが、何より大きいのは浦和対策をしてくるチームをきっちりと崩せたことだ。もちろん対戦相手の違いは考慮すべきだが、オフェンス5対ディフェンス5の駆け引きで圧倒できたことは自信になる。指揮官も「相手が対策をしてくるなかで、いかに連動して動くことによってスペースを作るか、それはキャンプで取り組んできたことです」と胸を張った。浦和にとっては今後に弾みのつく最高のダービーになった。

以上

2014.08.31 Reported by 神谷正明
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