対戦相手のチームが熊本戦を前にしたタイミングで監督交代に踏み切るのは、今シーズン、これで2度目である。最初は6月の第19節・京都戦。その後、川勝良一監督がバドゥ前監督からチームの指揮を引き継ぐことになったが、熊本との試合では森下仁志コーチがあらためて「走る、戦うといった球際の部分で上回らないと、ボールを動かす自分たちのサッカーもできない」と、選手達を鼓舞。結果、京都は大黒将志のハットトリックなどで4−1と熊本をくだした。
札幌は28日(木)、財前恵一監督の交代を発表。翌29日(金)にクラブの公式サイトにアップされた野々村芳和社長のメッセージによれば、札幌は昨シーズンと比べてボール支配率やパス本数が増えており、財前監督のもと、クラブとして目指す方向へたしかに歩みを進めてきていた。だがリーグ戦の2/3を終えて13位という成績を受け、「もっとペナルティエリアに入っていく」「ここから次のステージへ行く」ことなどを踏まえた結果、2012年まで愛媛で指揮を執ったイヴィッツァ・バルバリッチ氏に白羽の矢を立て、残りのシーズンを託すことになったようだ。
前節の栃木戦を振り返っても、勝ちきることはできなかったものの、立ち上がりに先制を許しながら追いつく形で連敗を止め、試合を通じては押し気味にすすめるなど内容も決して悪くはなかった。それだけに札幌の選手達には少なからぬ動揺はあるだろう。もちろん、シーズン途中の監督交代がチーム状況の好転に直結するとは言いきれず、まして残りも14試合となれば、9月から指揮を執ることになっているバルバリッチ新監督に課されるミッションは非常に難しいものと言わざるを得ない。それでも、前述した京都のケースのように、監督交代が起爆剤となって選手達が結束、あるいは原点に立ち戻ることもまた、少なくない。それはちょうど1年前、熊本も経験したことである。札幌の場合、J2の中でも個の能力の高さはもとより屈指であり、今回のクラブの決断をきっかけに、それが今まで以上に発揮されることも十分考えうること。さらに言えば、この変化をチャンスと捉えてアピールした若い選手達が今節から新たに起用される可能性もあるだろう。
つまり、札幌が新たな一歩を踏み出すことになるこの試合は、熊本にとっても非常に難しい一戦となる。前期の対戦や前節の映像からインプットするイメージはあまり有効でなく、むしろ邪魔になりかねない。だからこそ、小野剛監督はこう言うのだ。
「ハードワークすることや切り替え、そうした原点になるところが勝負を分ける」
前節・富山戦では2試合続けての完封で5試合ぶりの勝利を挙げたものの、前半のうちは相手の嫌がる攻撃を作れなかった。それを受け、今週のトレーニングではバイタルエリアでのボールの動かし方と相手の動かし方、さらにそこからフィニッシュまで持ち込む流れに重点を置いている。しかしオフ明けとなった29日には、先の言葉の通り、あらためて切り替えの重要性を選手達に植え付けた。特に小野監督が強調していたのが、ボールを失った直後から奪い返しに行き、さらにその勢いをそのまま攻撃につなげるということだ。
「ボールを持てる選手が多いし、一発で裏を狙える選手、そこに出せる選手がいるので、食いつきすぎないことも意識したい」と園田拓也が話しているように、守備においては連動が不可欠。内村圭宏の速さ、前田俊介の上手さと強さを抑え込む前提として、「入ったところで潰す、というより、そこへ出させないように追い込んで行く」(高柳一誠)ディフェンスで札幌の組み立てを断ち切ることがポイントとなる。その点では、2つ前の千葉戦と多少通じる部分があり、警戒していたケンペスに仕事をさせなかったことも含め、無失点に抑えた経験が再び試されることになろう。両サイドバックも高い位置を取って左右からクロスでえぐる、あるいは機を見てミドルを狙う場面が多い札幌に対しても、千葉戦でできたことを同じように表現し、相手を走らせる展開に持ち込みたい。
今節は、リーチがかかった状態で耐えてきた齊藤和樹が前節の警告で累積4枚となり出場停止。齊藤が守備で担っていた役割も大きかったが、先発の可能性がある巻誠一郎は、切り替えを意識したトレーニングで最もそれを体現していたし、同じく前節の先制ゴールの直後に左手を負傷して交代を余儀なくされた養父雄仁も問題なくプレーできそう。また、前期の対戦で「思いが強すぎて」PKを枠の外に外してしまった岡本賢明も、この一戦に向けてコンディションは上々で、「あの時の分を返さないといけないですね」と、意気込みつつも冷静さは維持。前田や内村、さらに神戸で一緒にプレーした都倉賢ら、札幌の選手達の質の高さを知る高柳は「個で打開できる選手が多い」と言ったあと、こう続けた。「でもそういう選手は、こっちにもいる。それをどう生かすかがカギになってくると思います」
得失点差に9開きがあるため、結果次第で勝点が並んでも順位がひっくり返る可能性は小さい。しかし、ともにプレーオフ圏との差を詰めるには是が非でも勝点3を手にしたい、しなくてはならない一戦。夏も終わりに近づいて暑さもやわらいできたが、ピッチの上では熱い戦いが繰り広げられることになりそうだ。
以上
2014.08.30 Reported by 井芹貴志
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