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【第94回天皇杯 3回戦 広島 vs 水戸】レポート:私たちは1人ではない。友情を厚く感じた広島の夜。(14.08.28)

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友情が全て。そんな言葉に酔ってしまうほど、筆者も若くはない。
ライバルこそ、親友。そんな設定を鵜呑みにするほど、現実は甘くはない。

だが、Jクラブ同士の関係性においては、時にこの言葉がしっくりとくる場合がある。歯ぎしりするほどの悔しさを味あわせ、敗北の屈辱を与えようと戦う多くのライバルたちが、広島の大規模土砂災害の被害に際し、立ち上がってくれた。お見舞いの言葉に加え義援金の募金まで。森保一監督は「本当にありがたい。相手を思いやり、助けようと動いてくれるのは、日本人のよさだと思う」と語った。

その代表格が、水戸ホーリーホックである。彼らは前週、大災害が起きたその時、広島にいた。前日からの大豪雨も、広島で体感していた。だからこそ、だったのかもしれない。水戸はJクラブの中でどこよりも早く、支援の声をあげた。24日の対愛媛戦、沼田邦郎社長自ら先頭に立ち、試合に出ない選手たちも声を張り上げて募金を呼びかけた。総額54万9384円。広島のためにと汗をかいてくれたホーリーホックの情熱と、その行動に賛同した水戸・愛媛両サポーターの友情の結晶である。この募金は試合前、水戸の柱谷哲二監督と三島康平選手会長からサンフレッチェ広島の小谷野薫代表取締役社長に預けられ、クラブを通して広島市に寄付される。
「我々もまた、3.11(東日本大震災)の時に、たくさんのクラブ・サポーターからの支援を受けたからこそ、前を向くことができたから」と柱谷監督。実際、あの大震災の時、水戸の選手たちはたくさんの支援物資がJクラブから送られ、そこにサポーターからの励ましの言葉がぎっしりと書かれていたことも目の当たりにしていたという。だからこそ、今回の広島での出来事も、他人事ではなかったのだろう。
サッカーを媒介として、互いに競い合うのがプロクラブの本質である。だがそこに戦う者同士の友情が存在し、本当の苦境に対しては手を伸ばし合う。そんな美しさもまた、Jリーグならではだ。試合前の黙祷の後、水戸サポーターから「広島」の声があがった。友情を心から感じた瞬間だった。

試合をホームチーム視点で見れば、若手の頑張りをベテランがサポートする理想的な展開だった。広島の先発11人の平均年齢は24.5歳。10代選手も2人(宮原和也・川辺駿)いる。水戸も愛媛戦とはメンバーを入れ替えてきたが、平均年齢は26.9歳。今季のリーグ戦出場時間が1000分を超える選手が6人、GKをのぞいた10人の選手が二桁試合出場を果たしている。一方の広島は茶島雄介のリーグ戦出場はゼロで、1000分超えは佐藤寿人・水本裕貴・塩谷司の3人だけ。リーグ出場試合数が一桁台の選手が5人を占める「若さ」だ。
その若者たちが、佐藤の先制点を演出したのだから、広島サポーターとすれば堪らない。山岸智が鈴木雄斗からボールを奪い、野津田岳人のダイナミックなバスを受けた川辺がドリブルで持ち上がったその瞬間、攻撃のスイッチが入った。茶島がボランチの位置から一気にスプリントし、右サイドのスペースで川辺のパスを受け、ダイレクトでクロス。そこに60m近くのダッシュを敢行した野津田が飛び込むことによって、逆サイドに入ってきた佐藤がフリー。ゴールは必然。「サッカーは走らないと何も始まらない」という森保監督の言葉に納得性を与える先制点だった。

前半、広島の若者たちが奏でる軽快なメロディーに圧され、決定機を何度も与えてしまった水戸だったが、そこを最少失点で抑えると後半は反撃。広島のリズムを司った野津田・川辺を抑えにかかり、前半飛ばしすぎた紫の若者を運動量で凌駕した。だが、ここで水戸の前に立ちはだかったのは、広島の優勝戦士たち。ダイレクトパスや3人目の動きで崩しにかかる水戸の攻撃を先読みし、決定的なシュートには至らせない。水本や山岸、清水航平が頭脳的なカバーリングを見せてピンチを未然に防ぐ。「自分を育ててくれたクラブ」と水戸への感謝を常に忘れない塩谷司も、古巣の攻撃を力強く跳ね返し、ボールを前に持ち上がって時間をつくった。
若さと経験が見事にかみ合った広島が唯一綻びを見せ、水戸が鋭くカウンターでついた72分のシーン。左クロスを落としを馬場賢治がボレーで叩いた決定的なシュートが決まっていれば、試合はどうなっていたかはわからない。90分という時間で試合を洞察してみれば、若者たちが躍動を見せた広島の勝利は妥当だったが、水戸の修正もまた見事だった。
広島は若者が公式戦で結果を出したことで、苦戦が続くリーグ戦に対しても明るい希望を見いだせた。水戸は試合後、サポーターの激情と柱谷監督の情熱がぶつかりあったが、最後は指揮官の「ついてこいっ」という叫びで収束。この団結力があれば、必ず内容に結果がついてくるだろう。友情で結ばれた両クラブにとって、成果と希望を見いだせた広島の夜となった。

以上

2014.08.28 Reported by 中野和也
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