８月も中旬を少し過ぎたあたりだろうか。タクシーに乗っていると運転手さんから、こう話しかけられた。
「北海道の夏は、終わりましたねえ」

「なにぃ！」である。
確かに朝晩は結構涼しくなっていたし、夕方以降に外出する際などは上着を持っていこうかどうか逡巡するような日も出てきた。でも、なんとなく夏は終わってほしくない。別に夏が好きなわけではないが、北海道の夏は短いし、夏が過ぎるとあっと言う間に冬が来てしまうイメージがある。だから、ジワジワと気温が下がっていくのは感じながらも、気分的には夏なまま過ごしていきたかったのだが、運転手さんの一言で一気に夏は終わりを告げた。

個人的な話で恐縮だが、ワイワイとＢＢＱをしたり、大勢で花火に興じたりという夏ではなかった（昨年も一昨年もそうだが）。そうしたなかで、何か夏っぽい出来事はなかったかと携帯電話の写真をホイホイと遡っていくと、プールの写真が出てきた。あるじゃないか。

まあ、早い話が練習場の写真なのだが、この夏は連日、練習後に選手たちがこの簡易プールで体の筋肉を冷やしていた。ときにはたくさんの氷を入れたりもして、見た目も涼しげだ。
当初はもうちょっと小さ目のプールだったのだが、途中からは写真のような立派なものとなり、何人もの選手が同時に入れるようになって楽しそうな気配も出てきた。
いい戦力補強だ。と思ったら、李成樹マネージャーによると「今まではこれをアウェイゲームに持って行ってたんですけど、ちょっと大きすぎて。遠征用にワンサイズ小さ目のプールを買ったんです」とのこと。なるほど。いわゆるコンバートというやつか。

とまあ、そんな感じで筆者の夏は過ぎていったのだが、いやいや、あったではないか大きなイベントが。そう、小野伸二選手の加入である。
これはもう、あまりにも大きな出来事だ。何しろ、あの小野選手である。天才のプレーぶりを日々、練習場で見られるのだから、それはもうＢＢＱや花火どころの騒ぎではない。というか、あまりにも大きな出来事すぎて、筆者があらためて何かを補足するまでもないだろう。とにかく、メチャクチャうまい。試合はもちろんだが、練習見学もぜひオススメしたい。想像をしているよりも、もっとすごいはず。

印象に残っているのは。札幌が首都圏の学生チームと練習試合をした日のことだ。
「おいっ！　オレたちも並ぼうぜ！」
試合後、着替えを済ませてグラウンドをあとにしようとする直前に、学生たちは一斉に走り出した。そして小野選手がファンサービスとしてサインをしている列の最後尾にみんなで並んだのである。
きっと最初は遠慮をしていたのだろう。あくまでも練習試合でやってきたわけだし、グラウンドのなかでサインをもらうわけにはいかない。そんななかで巡ってきたチャンスを彼らは見逃さなかった。ファンの列の最後に、その日の対戦相手がズラリと並んでいたことに小野選手も最初は驚いていた様子だったが、すぐに打ち解けて談笑。学生たちのうれしそうな表情がものすごく印象的だった。彼らにとっての大きな夏の思い出となったことだろう。

そうした光景を見られたことは、筆者にとってもいい思い出になった。きっと今後も、こうした光景は頻繁に見られるはず。夏が終わろうと終わるまいと、熱い日々はまだまだ続いていく。熱を感じたい人はぜひ、スタジアムや練習場へ。

以上

2014.08.27 Reported by 斉藤宏則