勝たなければならないゲームをものにした岡山と、関塚監督が就任した7月8日以降初めてで、8試合ぶりに黒星を喫した千葉。強く降りしきる雨の中で行われた5位・6位対決は、後半のアディショナルタイムが8分に及ぶ中、岡山が60分に決めた清水慎太郎のゴールを守りきって勝利する形となった。
前節の北九州戦で19試合ぶりに敗れた岡山。「連敗しないこと」は、今季チームが自らに課している最低限の約束のひとつであり、今週はそのための準備を行っていた。このタイミングで迎えたのが、個人の能力が高く、順位的にもひとつ後ろに迫って来ている千葉であったことを、岡山はうまく自分たちに作用させることが出来た。田所諒は、「相手も結構、リスクを冒して攻めてきてくれていた。そういうチームは自分たちが得意とする相手なので、負けずに前に行く力が出せたかなと思う」と話した。
ポゼッション率がJ2でナンバー1の千葉に主導権を渡すかと思いきや、立ち上がりの時間帯を除いて、前半は岡山がうまくゲームを作った印象だ。トップの清水慎太郎、シャドーの押谷祐樹、石原崇兆がそれぞれの役割を果たす姿は爽快だった。清水が受けて、押谷、石原がビビッドに反応してシュートに持ち込む。岡山のファンなら雨のピッチを見て、「今日はオシ(押谷)のピッチ」、「今日はイシハラのピッチ」と思わずにはいられないが、この2人は低い位置まで下がってプレスをかけ、シュートへの意識を高めていた。とくに石原はこの日7本のシュートを放った。
対する千葉も、オープニングの大岩一貴のクロスを皮切りに、ボールを持たれても岡山のボールの出どころにプレッシャーをかけ、簡単には食いつかないハードワークを続けていた。この日はトップにケンペス、2列目に谷澤達也、井出遥也、そして千葉で初めてスタメン出場した幸野志有人の3人が並び、井出はダイナミックにサイドからサイドに動いて揺さぶりをかける。
岡山は前線の「イケイケな」3人とワイドの三村真、田中奏一で決定機を作るが、決められないままスコアレスで後半へ。ゲームが動いたのは60分。岡山のGK中林洋次とケンペスが交錯し、怪我の治療のため中断した約5分間を経て、ゲームは再開。低い位置で上田康太がボールを奪い、前に向かう清水に縦パスを送る。清水は平行して走り出した押谷に託し、押谷は右サイドを駆け上がってきた三村へ。三村はペナルティーエリアに入ってシュート性のグラウンダーのクロスを放つ。このボールに詰めてきた清水が滑り込んで触れ、ゴールが決まった。前半から決定機の演出という仕事を続けていた清水、サイドを突破して起点となっていた三村が生み出した「結果」は、押谷、上田をはじめ、全員の前へ、という意識の連動から生まれた。
千葉は、何度か繰り返された、ペネルティーエリア付近で軽いタッチでボールを味方に渡す場面からゴールが生まれてもおかしくなかったし、3日前の天皇杯3回戦柏戦でプロ初ゴールを決めたオナイウ阿道、森本貴幸、山中亮輔というカードを順に投入し、後半アディショナルタイムの8分間にも何度も決定機を作った。しかし岡山は妹尾隆佑ら途中交代の選手の時間の使い方、ゲームの終わらせ方の意識も効いていた。この点に関しては、「2−0、3−0に出来ないので、相手は98分ぎりぎりまで、何とかしてやろうという気持ちを持ち続ける」と影山雅永監督は話したが、同時に「相手が巧く、コントロールミスをしないなら、もっと速く、もっと距離を縮めて、ということを連続してやる、ということを今日のテーマにしていましたが、選手たちは非常によくやってくれたなと思います」とも話した。最後まで途切れることなく指示を出し続け、真面目に仕事を続けるボランチの上田、千明聖典、強くひたむきにゴールを守った最終ラインの後藤圭太、久木田紳吾、田所とGK中林洋次。岡山がシーズン終盤に向けて再スタートを切る理想的な内容を全員で体現してみせたゲームだった。
以上
2014.08.25 Reported by 尾原千明
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