前節、東京Vは第25節、26節と続いたアウェイでの連敗を、ホーム・西が丘できっちり止めた。今節もホームゲームとなるが、会場は7月5日第21節vs山形戦以来となる味の素スタジアムである。「あまり味スタで勝てていないので、何としても勝ちたい」井林章は、真のホームスタジアムでの負の印象払拭を力強く誓った。
「連敗を止めたのも大事だが、一番は、自分たちのスタイルで良いサッカーを継続できるか」だと、三浦泰年監督は語る。前節出せた“自分たちの良さ”が継続できるかが、最重要課題と言えよう。
前節の良さといわれ、まず挙げられるのが、しっかりと攻めきれたことだろう。水戸が固い守備からしっかりとしたつなぐ丁寧なサッカーで、スペースを与えてもらえない時間帯があった中、「攻撃のスイッチが入った時には、非常に良い形を作っていた」と、三浦監督も評価する。ただ、修正点として、「前半、そのスイッチを入れるのに時間がかかった」ことだとも指揮官。いち早く勝機を見つけ、スイッチを入れて自分たちのリズムとテンポにもっていけるか。主導権を握ることができれば、試合を増すごとに連携が深まり、バリエーションが増えて多彩な攻撃が見られるに違いない。FW常盤聡も、「1人1人がいい距離感でやれている。(2トップ組む)竜士との関係もすごくやりやすい」と、手応えを口にしている。ペナルティエリアに侵入する数は、明らかに増えてきた。「うちは、しっかりと動ける選手が多いから、動く位置がわからなくて止まるぐらいなら、アクションをしかけて、攻撃も守備も早い判断とアグレッシブさで自分たち主導の展開にもっていきたい」(常盤)昨季まで東京Vに所属していた親友・小池純輝の前での得点にも、さらに意欲を燃やしている。
もう1つ、前節の収穫は、3試合ぶりに無失点で終えることができたことだろう。今節は、DFの要である金鐘必が出場停止となる。だが、前節、もう一方のセンターバック井林のベンチスタートによって、田村直也がその位置に入り、遜色ない役割を果たしてみせた。田村自身も「慣れてきて問題はないです」と、しっかりとした手応えを感じている。さらに「多分、僕が入れば、Jリーグで一番(背が)小さいセンターバックになると思う。それでもやれることを証明したい。持ち味であるビルドアップや攻撃につながる組み立ては、必ずチームのプラスアルファになると思っています」と実に意欲的だ。一方で、「もちろん田村・井林のコンビが最有力だが、楠美圭史、舘野俊祐、畠中槙之輔という若くて能力高い選手もいる。試合まで、最善を模索したいと思う」と、他の組み合わせも思考中だと指揮官は明かす。もっと言えば、長期離脱だったキローラン木鈴も完全合流している。前節のような途中交代も含め、どんなDFラインを組んでいくのか、注目したい。
対する横浜FCは、後半戦6試合負けなし。非常に良い状態で今節にも臨んでくるだろう。際立って目立つのが、第23節から4試合連続無失点という守備の安定ではないだろうか。GK南雄太を中心に、4バックと松下裕樹、寺田紳一の経験豊富なダブルボランチ、さらに前線選手の体を張った守備が結実している。前節、5試合ぶりにPKを含む2失点を喫し、改めて“失点”に対して悔しさを募らせいるのではないだろうか。より一層守備に対す集中力を高めてくるだろう。
その一方で、横浜FCの好調の要因を、東京Vの三浦監督は守備ではなく「攻撃が多彩というイメージ。流動的で躍動感が増えて、多くの人が絡むようになった結果が形として出ている」と分析する。パク・ソンホ、野崎陽介、松下年宏、野村直輝、小池純輝ら前線選手が連動し、東京Vの守備陣を困惑させることができるか。その勢いある攻撃に対し「守ってその攻撃を止めるよりも、横浜FCよりも良い攻撃をしかけることで、結果、相手に攻撃させないという感覚の方が強い」と、三浦監督は目論む。果たして、どちらがより良い攻撃で相手を制することができるか。この試合のみどころと言えよう。
田村主将は、仙台在籍時の戦友だったパクソンホ、松下とのマッチアップを非常に楽しみにしている。また、なにを今更だが、三浦監督と横浜FC三浦知良は実の兄弟。前節今季初出場した三浦知の出場はあるのか?前述した小池、飯尾一慶が東京Vが古巣など、互いに関わりの多い選手・スタッフが多いだけに、そうした視点からでもまた、楽しみは増えるだろう。互いに好調時での対戦。アグレッシブな打ち合い合戦が見られそうだ。
以上
2014.08.23 Reported by 上岡真里江
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