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【J1:第21節 広島 vs C大阪】プレビュー:苦境からの脱却を目指すC大阪を迎え撃ち、広島のために、サンフレッチェは勇気を持って戦う。(14.08.23)

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サッカーどころじゃない。確かに、そうなのかもしれない。
屋根にたたきつけられた雨の音が「ビシャ」ではなく「ドスン」と響き、雷が間断なく鳴りわたり、清水航平は「ほとんど眠ることができなかった」と語る。クラブスタッフのすぐ近くの家が土砂災害に巻き込まれて被災。多くの選手たちが練習場に通う道となっていた国道54号戦には土石流が流れ込み、その側にそびえる山肌は前日までの緑が一変。水の破壊力によって緑がえぐられて褐色の土壌が露わになり、土と水が牙をむき出して街を襲った。
行方不明者52人、死者39人。しかもその被害の全体像はまだ明確ではなく、二次災害の危険性もある。追い打ちをかけるような、今日の広島を襲う大雨警報。朝方の雨は、かなり厳しかった。

広島のために、何かがしたい。
その気持ちは、選手もサポーターも同様だ。しかし、できることは限られる。サンフレッチェ広島とサンフレッチェ広島選手会は明日から義援金の募金を開始するが、とにかく身近にできることから始めるしかない。そして最終的には、自らの仕事を全うし、全力を尽くすこと。その強い意志が大災害からの復旧への力強い後押しになると、信じるのみである。

東日本大震災の時、高萩洋次郎は被災した故郷の友人から「おまえがサッカーを頑張って、俺達を勇気づけてくれ」と言葉をかけられたという。そういう力があることを信じて選手はサッカーを続けるし、我々メディアも彼らの奮闘をしっかりと見届けねばならない。大きな被害を受けた広島市安佐南区はエディオンスタジアム広島と同地区であり、サンフレッチェにとっても地元中の地元といっていい。それだけに想いは沈痛ではある。だが、サッカーは確かに直接的な復旧への貢献ではないかもしれないが、選手がピッチで必死に戦い、絶対に諦めない姿勢を見せて、人々の心を励まし、勇気づけ、ポジティブな雰囲気を少しでも持ち込むことはきっとできる。それが、復旧への足がかりにもなれる。そう信じるしかない。

広島のチーム状態はゆるやかな上向き傾向にある。浦和戦では確かに守備に重心を置いた前半45分ではあったが、相手の攻撃にセットプレーでの失点以外は大きく崩されることもなかった。後半は完全に相手を押し込み、彼らの狙いだったカウンターでもミスから1度決定機を与えたが、それ以外はほぼ完璧に抑えた。攻撃もここ最近ではほとんどなかった「中央突破での決定機・3人目の動きからのチャンス」を創出できたことで、守備も攻撃も低迷の底を打った感はある。

皆川佑介・宮原和也ら若手の成長が急で、その強い刺激が連覇の立役者たちを奮い立たせていることは間違いない。石原直樹が負傷欠場するのは残念だが、佐藤寿人や塩谷司、林卓人らコンディション不良で試合を欠場していた選手たちも今週は全体トレーニングに合流。「試合に出てチームに貢献したい」という意思を強く感じさせるトレーニングを続けた。明日のピッチに誰が先発として立つのか、正直全くわからない。もちろん、コンビネーションという側面から見れば、選手が固定されている方が熟成度はあがる。だが、時代の変革期が訪れた今、突き上げようとする若者と、彼らの前に立ちはだかろうとするベテランのつばぜり合いが大きなパワーを生み出すはずだ。

C大阪は厳しいシーズンを送っている。第11節・名古屋戦で2-1と勝利して以来、9試合勝利がない。柿谷曜一朗は既にバーゼル(スイス)に移籍し、日本代表MFであり主将を務めていた山口蛍はF東京戦で右膝外側半月板を損傷し、全治6週間と診断されて長期離脱を余儀なくされている。さらに今節はC大阪の未来を担うホープ=南野拓実も出場停止。厳しさのらせんに陥っているかのようにも見える。

だが、前節の川崎F戦で1-4から4-5まで追い上げ、4試合連続無得点の呪縛から解き放たれたことは、負けたとはいえポジティブ。2010年ワールドカップドイツ代表であり、シュツットガルト時代はブンデスリーガ優勝に大きく貢献したFWカカウも、今節から出場が可能となる見込み。前節、後ろからの浮き球パスに反応し、見事なダイレクトボレーを決めたフォルランとの競演が実現すれば、低迷するC大阪の大きな起爆剤になる可能性は十分だ。

ただ、今回の試合だけは、広島はおくれをとるわけにはいかない。今回の災害で苦しみ、傷つき、絶望の淵にまで追いやられた人は、おそらく報道では見えないところでたくさん、本当にたくさんいる。そういう人たちの希望となれるような戦いを、選手たちは見せないといけない。そういう頑張りを、僕たちメディアは伝えないといけない。プロとしての責任と矜持を胸に抱き、広島の街のため、人々のために、戦わないといけない。

明日の試合は、広島にとって特別な戦いである。言葉にして口に出さなくても、誰もがその現実をわかっている。あとは、想いを表現して見せるだけ。それを伝えるだけだ。

以上

2014.08.22 Reported by 中野和也
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