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【第94回天皇杯 3回戦 川崎F vs 愛媛】レポート:リスクを取りに行った川崎Fと、それを管理した愛媛。(14.08.21)

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勝利した愛媛の選手と、彼らを信じて応援したサポーターには、「おめでとうございます」という言葉よりも、「勝てると思っていて済みません」と謝るべきだろうと思う。内容はどうであれ、愛媛は川崎Fに90分で勝ったのだから強かった。そう言う以外に言葉は無い。そもそも川崎Fの、前半のレベルのサッカーでは、おそらくJ2でも苦労するはず。そういう意味でも、率直に負けを認めるしかない。

そんな試合に救いを求めようと、川崎Fが選手を総入れ替えした事実を言い訳にしようと考えたが、11選手が入れ替わっていたのは愛媛も同じ。いわゆる”ぐうの音も出ない”というヤツである。"シュート数では"とか"ポストやクロスバーに当たった"だとか、その手の言い訳も虚しいだけ。率直にこの敗戦を受け入れるしか無い。

少々陳腐で、分析の浅さを指摘されそうだが、愛媛の勝利は第一義的に気持ちにあった。例えば決勝ゴールの表原玄太は試合に出られていなかった悔しさを晴らすべく、この試合に臨んでいた。

「リーグ戦では最近出場機会がなくて、天皇杯でチャンスをもらえたので、今日は絶対にゴールを取るという形で結果を出して、監督とか周りを見返してやろうという気持ちでやりました」

「見返してやろう」という言葉は、字ズラだけで見たらとても挑戦的に映る。しかしそれが彼の試合に出たいという思いを率直に表した言葉であるのは間違いない。ゴールを奪えれば、それが自らの評価を高める大きな要素となる。そして対戦相手である川崎Fは、愛媛にとってはゴールするだけで価値のあるビッグクラブだということ。もちろん、川崎Fの選手たちが勝利への気持ちで劣っていたとは思わない。たとえば、久しぶりにチャンスを貰った西部洋平の「正直この試合は信頼を得るチャンスだったので、結果しか頭になかったです」との言葉は先発のピッチを踏んだすべての川崎Fの選手たちの気持ちを代弁している。ただ、勝ちたい気持ちと試合運びとが、選手個々の能力とチーム戦術とに、よりフィットしていたのが愛媛だったのは間違いなかった。

J1・2位の川崎Fに対し、J2・17位の愛媛との対戦は、お互いの選手たちがそれぞれのチームの立ち位置をよく理解するなかで行われていた。その結果何が起きたのかというと愛媛はある程度ラインを下げてリスクを回避する一方、川崎Fは、行けていたかは別として、より前に出ようとする姿勢を鮮明にした。川崎Fにとって、そんな試合展開はJ1の舞台でも珍しくはない。ただ、この試合がこれまでの試合と異質だったのは、ボールを保持する川崎Fの選手にとって「ボールを持つことがリスクとなっていた」状況があったからだ。川崎がボールを保持することで取らざるを得なかったリスクは、パスミスという形で表出し、それが失点にまで繋がる。

前半34分の表原のゴールは、ジェシのミスから始まる。攻撃へと切り替わっていた川崎Fはこのボールロストで戻りきれず。貪欲にゴールを狙う表原のドリブル突破から先制点を許してしまった。

そもそも、ボールを大事にしようと指導してきた風間八宏監督は、マイボールの時間を増やすべく後半の頭から小林悠と大島僚太の2選手を投入しチームを生き返らせる。ミスは格段に減り、川崎Fはリズムを刻み始める。小林がボールを引き出して前線に起点を作ると、ボランチのサポートを得た2シャドーが小林との距離を縮め攻撃を作り続けた。

守備意識を強める愛媛に対し、効率よく攻めたい川崎Fは後半20分ごろから最終ラインの並びを4枚に改める。これにより、あまり気味になっていた最終ラインを効率的に攻撃に割けるようになる。十分に戦況を変えたこの采配ではあったが、惜しむらくは少々遅過ぎたという点。チャンスは作れたが、結局川崎Fはゴールを奪うことができなかった。

残り時間の減少と共に猛攻撃を仕掛ける川崎Fではあったが、試合終盤の愛媛は狡猾に試合を進めた。川崎Fが天皇杯2回戦で対戦したY.S.C.C.横浜が、闘争本能のままに攻め続け、ボールを川崎Fに渡したような拙さはなかった。マイボールになれば、川崎F陣内の深い位置でしっかりとボールキープして時間の経過を狙った。勝利するにはどうしなければならないのか。刻々と変化する状況に合わせ、その都度必要な戦いを実践した愛媛は、そういう意味で彼らがやれることのすべてをやり遂げたと言っていい。プレビューでも紹介したが石丸清隆監督が言うところの「ボールを持つことがリスク」ならば、そうならない試合運びをすればいい。そしてその術中にハマり、まんまとしてやられた川崎Fは一敗地にまみれるのが妥当だった。

背負ったビハインドを、はね返せないまま川崎Fは愛媛に敗れた。いつものように、負けた選手たちを励ますサポーターからの歌声に、大音量のブーイングがかぶさっていた。この日、等々力に駆けつけた観客は5104人。平日夜にスタジアムに足を運んだ熱心なサポーターの悔しさを晴らせるのは、リーグタイトルしか無い。

その一方で、死力を尽くして勝ち星を手にした愛媛には賞賛の拍手を贈るしかない。少々野暮ったい試合運びではあったが、勝てばすべてが許される。リーグ戦では2試合連続4失点するなど苦戦が続いているが、この勝利がチームの自信につながることを願っている。そう、大人な発言をすることが、敗者ができる精一杯の強がりである。

以上

2014.08.21 Reported by 江藤高志
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