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【第94回天皇杯 3回戦 甲府 vs 関学大】レポート:甲府が見せたプロの意地と関東大学リーグOBの意地。先制されて苦しい時間が続いたが、終盤の2ゴールで甲府が関学を下した(14.08.21)

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関西学院大学に先制ゴールを許したのは前半の36分。そのままスコアが動かず後半の40分近くになると記者席は誰も喋らなくなっていた。地元テレビ局のアナウンサーや地元紙記者らとたまたま並んで座り、最初は誰彼となく喋りながら見ていたが、この時間になるとみんなそれぞれの立場で覚悟を決めようとしている感じだった。わずかな光は、甲府の猛攻を受けてずっと守っている気分であっただろう関学の足が止まっていたこと。90分で逆転できなくても、同点に追い付けば延長戦で勝てると思って、1点を期待して残り5分とアディショナルタイムが少しでも長いことを願っていた。

甲府の先発はワントップに大卒1年目の松本大輝(大津高→法政大)が入り、2列目のシャドーには城福浩監督による大改造中のFW・クリスティアーノとインドネシア代表のイルファンが並んだ。この試合のポイントはこの前線の3枚にあったが、立ち上がりから松本とイルファンのスピードを活かした裏へのボールが効果的だった。関学のサイドバックも予想以上のスピードにマークし切れず、3分にイルファンがGKと1対1となって決定的なシュートを打つ。股抜きを狙ったように見えたシュートはGK・村下将梧に防がれるも、立ち上がりからのオープンな展開に「イケる」と思った。イルファンサイドのウイングバックの橋爪勇樹が、「イルファン、インサイド」なんて、英語で指示を出しているのも聞こえてきて、チームメイトがイルファンを活かそうとしている感じもよかった。しかし、1分もすると、関学の小柄な10番・小幡元輝が、甲府のディフェンスラインの裏に飛び出した呉屋大翔の頭に素晴らしく正確なタイミングで縦パスを合わせて最初の決定機を作る。呉屋のヘディングシュートは決まらなかったが、2人のストロングポイントを見せつけた。

予想以上に松本やイルファンのスピードを活かした攻撃が効いていたのでちょっと浮かれそうになっていた気持ちを引き締めてくれた呉屋のシュートでもあった。プラン通りにいかないのは戦争とサッカーの常で、それが現実になってしまう。21分にイルファンが獲得したPKをクリスティアーノが蹴るも止められてしまったのもそうだが、上手くいきそうなことが段々そうでなくなる感じは何となく肌で分かるもの。新井涼平が小幡を倒したとして、自陣ペナルティエリアのすぐ外で与えたFKは嫌な予感がしていた。10分に少し遠めだが同じような場所でFKを蹴った出岡大輝は2回目のFKを完璧なコントロールで壁を越して決める。主導権を持ち、決定機の数でも上回っていたプロチームが、大学生のチームにFK一発で先制を許すのは屈辱的だが、出岡の左足は素晴らしかった。

後半の甲府は、右太ももを痛めていた橋爪に代えて、キャプテンの山本英臣を頭から投入する。土曜日のG大阪戦に向けて休ませたかった選手だが、城福監督が早めにカードを切ってきたところに危機感が出ている。スタートポジションを3−4−2−1から4−3−3に変え、山本をアンカーに入れた甲府。立ち上がりからアグレッシブに攻め立てるも、関学も最後の部分では崩れない。56分には同じく休ませたかった石原克哉をイルファンに代えて投入する。34歳の山本、35歳の石原と関学の成山一郎監督(36歳)と同世代のベテランを投入せざるを得なかったことが、週末のリーグ戦に向けてただでさえ苦しい台所事情をより苦しくしてしまった。そして、時間とともにスタンドの空気に”怒”の気配が漂い始める。甲府に勝ってほしいと思っている人のヤジが耳につき、甲府のミスや関学のクリアで沸く関学の応援団の声が耳につき、甲府に勝ってほしいと思っている人の“怒”が少しずつ増幅されていく。ピッチの選手もこの空気感は感じていたそうだ。

決定機はあってもゴールが縁遠い甲府は、関学の成山監督よりも年上の38歳・盛田剛平までも投入せざるを得なくなる。時間は66分で、城福監督が3枚目のカードを切るにはかなり早い時間帯。リーグ戦であれば、選手のケガのことなども考えて3枚目はもっと慎重に切ることが多いが、この時間に切るということは、(週末のリーグ戦に向けて)リスクが大きくても関学に負けるということはありえないという意思。盛田を入れて間もなく、スタートポジションを4−4−2に変更すると、石原の機動力、盛田の高さが活きるチャンスが増える。87分にクリスティアーノがファーで流し込んだ同点ゴールも、88分に稲垣祥がこぼれ球を押し込んだ逆転ゴールも、山本、石原、盛田の3人の途中出場のオジサンがいてこそのゴール。多くの人が覚悟を決め始めていた時間だけに、夢のような――関学にとっては悪夢の――2分間だった。プロの意地のゴールでもあり、甲府の大卒選手は関東大学リーグでプレーしていた選手なので、関東大学リーグOBの意地でもあった。試合後、ミックスゾーンに出てきた稲垣は走りきって身体の水分を出しきっていて全く汗が出ない状態で、肌は真冬の乾燥した肌のようにカラカラ。対照的に、囲む記者は不摂生の脂汗でドロドロ。プロチームとしてはふがいない内容の試合だったかもしれないが、ここまでやりきった結果の勝利とゴールは価値があるし、イルファンや松本もホームで初先発して得たものは大きいはず。それを引き出してくれた関学の選手にも感謝しないといけない。

山梨県警の機動隊が治安維持のために出動するほどではないものの、負けていればかなり殺伐としたはずの山梨の夜。J1リーグ再開後、4分2敗と勝利のなかった甲府にとって7月12日の天皇杯2回戦(明治大戦)以来の勝利の味は格別となった。やっぱり勝利の味はいい。週末のリーグ戦に向けてリスクを負った甲府だが、そのリスク以上の活力を勝利がもたらせてくれたはずだ。

以上

2014.08.21 Reported by 松尾潤
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