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【第94回天皇杯 3回戦 甲府 vs 関学大】プレビュー:厳しい試合になると頭で分かっていても、心はクリスティアーノ、松本大輝、イルファンらのプレーに期待してしまう。関西学院大学をホームに迎える甲府は台所事情が厳しいが、プロの意地と積み重ねの成果で結果をもぎ取りたい(14.08.19)

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関西学院大学が神戸を倒した天皇杯2回戦(7月12日)は、J1リーグ戦が長い中断期明け一週間前の時期で、神戸のリーグ戦の順位は3位(現在は9位)だった。関学大は全日本大学選抜のスペイン遠征でFW・呉屋大翔、MF・徳永裕大、MF・小林成豪の3人を欠いていた。関学大サッカー部の実力や状況を知らなくても、その2つの情報だけで神戸が有利と大抵の人が予想する状況だっただろう。神戸はJ1再開に向けてベストメンバーで臨んだはず。それでも神戸は1−2で敗れた…。今週の水曜日から全日本大学選抜の韓国遠征が8月27日まで行われるが、関学の選手は誰も選ばれていないので――辞退したのかもしれないが――J1リーグ15位の甲府に挑む関学大はベストメンバーと、状況はだいぶん違う。

迎え撃つ甲府は、初めて天皇杯をホーム・山梨中銀スタジアムで2試合連続(2回戦、3回戦)で戦う。チームはケガ人が7人+全体練習に復帰したばかりの選手が1人+J2への期限付き移籍した選手が2人で、フィールドプレーヤーが開幕時よりも10人も少ない状況。紅白戦では、副務やユースの選手を呼んで来ないと11対11にはならない。2回戦の明治大学戦はJ1リーグ戦再開1週間前だったので、リーグ戦を見据えたメンバーで戦ったが、3回戦はリーグ戦の間の水曜日なので、土曜日のG大阪戦を無視した戦いはできない。J1残留のためにはリーグ戦は物凄く重要。城福浩監督は、「来年も甲府がJ1で戦うということを考えると優先順位に選択の余地はない」という。そして、「でも、天皇杯で負けてもいいわけではない…。リーグ戦のことを考えるとこれ以上ケガ人は出てほしくないが、この状況でもリスクを課さざるを得ない。こういう状況で試合をすることになる」と話す。つまり、選手の遣り繰りをする台所事情がひっ迫しているということ。

どんな試合もやってみないと分からないが、関学大にとって3回戦・甲府戦は2回戦・神戸戦に比べてかなりチャンスが大きい試合となる。この状況で、関学大がどういう意識でどんな戦い方で挑んでくるかは興味深い。神戸より順位が下の甲府の方が戦い易い――とはならないのがサッカー。とはいえ、関学大の呉屋、徳永、小林の3人だけでなく、ボランチの出岡大輝など選手のレベルは高く、甲府が2回戦で対戦した「明治大よりも確実に上」という声も少なくない。甲府のスタッフや関係者に甘く見たり軽く考えたりする雰囲気はない。日体大から今年加入した稲垣祥は、「詳しくは知らないですが、関学大はタレントがいるイメージ。G大阪、C大阪、神戸のユース出身選手が多くて、個が上手い。チームに学生選抜に選ばれる選手が3人いれば、かなり選手は揃っていると思いますよ。自分は半年前までは大学生でしたが、今はプロでやっているというプライドも意地もあります。どんな内容であっても結果を残すことが大事だと思って挑みます」と話す。同じく今年加入した松本大輝(法政大卒)は、「関学大とは一度もやったことがないですね。相手が大学生だということはあまり気にしていないですが、自分が学生の頃は、プロを喰ってやろうと思ってやってましたね。チームが勝つことが一番のアピールだと思うので、結果に繋がるプレーをしたい」と、稲垣とはちょっと違った意気込み。

ベテランの阿部翔平(筑波大卒)は、「負けちゃあいけないゲームだけど、何が起こるか分からないのが天皇杯。やるべきことをそれぞれの選手がしっかりとやらないと大学生に負けることもある。プロなら突っ込んでこないようなボールに突っ込んできたりするので、そのことは意識しておかないと駄目」といい、もっとベテランの石原克哉(順天堂大卒)は、「(手を抜くという意味ではない)余裕を持ってやることは大事だと思う。カテゴリーでレベルの差はあるので、普通にやれば大学生の方がきついのが当たり前。でも、高いモチベーションで(プロを)喰ってやろうとしてくるので、そのモチベーションに喰われたら終わり。『喰えるなら喰って見ろ」という姿勢も大事だと思う」と話す。

なかには「相手のことは全く意識しない。自分のやるべきことをやってチームが勝てばいい」という声もあったが、野球と違ってサッカーはプロとアマの差が出にくいスポーツなので、気にしないようにすることが気にしているということになりかねない面もある。甲府は先発メンバーが大きく変わるだけに、内容が読めない部分があるが、新しくチャンスを貰う選手のモチベーションには期待したい。イルファン、松本という今年加入した選手に加えて、リーグ戦で先発の座を狙う津田琢磨や松橋優ら経験豊富な選手もいる。GK・岡大生のように失ったポジションを取り戻すきっかけにしたい選手もいる。これらのモチベーションが大学生のモチベーションに負けるとは思えない。気になるとすればコンビネーションと試合勘の部分。関学大は総理大臣杯(8月8日から17日@大阪)ではベスト4に終わっているものの、中1日で3試合こなして試合勘は充分なはずだが、甲府はリーグ戦のレギュラーもいれば、一度もリーグ戦のベンチにも座ったことがない選手もいる。コンビネーションでは松本やイルファンがどう使われ、どう使って生きるのか。中盤の選手に懸かっている部分でもある。また、クリスティアーノが松本をどう使い、どう連携するのか。結局は心配する気持ちよりも、好奇心、興味、期待の方が勝ってしまう。神戸に勝っているチームが相手だけに、“楽天”的な期待をすることはできないが、クリスティアーノの爆発や松本やイルファンのスピードスター的なプレーには期待したい。

クリスティアーノが裏に走る松本を使って、松本がそのボールをクリスティアーノにアシストして、ドーンでゴールイン。こぼれてもイルファンが押し込む。

“楽天”過ぎるかどうかの答えは8月20日、山梨中銀スタジアムで確認しよう。

以上

2014.08.19 Reported by 松尾潤
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