浦和はようやく嫌な流れを断ち切った。7月27日の鹿島戦で連続無失点記録を7試合で止められると、8月2日の神戸戦でも2失点、8月9日の川崎F戦でも2失点とそれまでの堅守が幻であったかのように次々と失点を重ねていた。公式戦の連勝も鹿島に8勝でストップさせられると、神戸とも引き分け、川崎Fには公式戦14試合ぶりの黒星をつけられてしまった(これは4月以来の敗戦!)。
記録が途絶えたことをズルズルと引きずり、このまま落ちていってしまうのか。そういった不安が嫌でも頭をよぎってしまう流れになっていたが、広島戦で4試合ぶりにクリーンシートを達成して一区切りをつけた。
天皇杯にどういったメンバーで臨むのかはわからない。2回戦の浦安SC戦ではリーグ再開一発目の新潟戦まで1週間の時間があった。試合勘を取り戻したり、コンディションを本番に合わせていくという意味でも絶好の機会だったため主力組で挑んだが、今回の群馬戦はリーグ戦の合間に行われる。
直近の広島戦から中3日のスケジュールで、広島戦に先発出場した主力組は中3日のうち2日間まともな練習をしていない。さらに体力の消耗の激しい夏場という条件を考えると、体力は有り余っているけど出番の少ない選手たちを抜擢する可能性は高い。
そういう選手たちはここがチャンスだと分かっている。李忠成もそのうちの一人だ。「天皇杯はチャンスが来ると思いますから、そこでしっかりアピールしたいです。自分の得点で試合を決めるような仕事をしたいです」と力を込める。
対戦相手となる群馬はある意味で難しい時期を送っている。J2では27節を終えた時点で18位と下位に沈んでいるものの、降格圏の可能性のある21位からは勝点15差とまずまずの安全圏にいる。一方で昇格プレーオフ圏内の6位とは勝点9差ながらもその間には11チームがひしめいており、上位に食い込んでいくのは簡単なことではない。降格も昇格も今はあまり現実的ではないという宙ぶらりんの状況だ。
序盤に6連敗を喫したものの、その後は大きな連敗もなく、逆に連勝街道に乗って一気に抜け出るということもない。ある意味で安定しているが、大きな問題もない代わりにブレイクスルーする爆発力も欠けている。モチベーションを高いレベルで保つのが一番難しい状態とも言える。
そういった時に天皇杯で格上のチームと対戦できるのは、チームの士気を上げるいいきっかけになり得る。ただ、群馬は日曜日にJ2で試合(長崎戦)をしているため、中2日と浦和以上にコンディション的に厳しい状況であり、こちらもメンバーを変えてくる可能性がある。
浦和にとって、群馬はやっかいなタイプだ。秋葉忠宏監督は戦術家としての側面を持ち合わせており、相手の特徴を消して戦う術を身につけている。今季も相手によっていくつかのシステムを使い分けている。得点力に課題を抱え、チャンスの数もあまり多くはないという現状を受け止め、できるだけリスクを減らした上で勝利の確率を上げようとしてくる。
浦和のように特徴がはっきりとしているチームはそれだけ対策も立てやすい。おそらく今回も何らかの策を講じてくるだろう。実際、シーズン前に練習試合で対戦した際にはフォーメーションを合わせる、いわゆる「ミラーゲーム」を仕掛けてきたが、その出方に浦和は手を焼かされていた。
ただ、浦和も相手の枚数合わせにはもう慣れていて、今シーズンも何度かそういうチームと対戦してきたが、慌てて仕掛けて逆襲を受けるというシーンは少なくなっている。直近の広島戦も両チームの元々のシステムからミラーゲームの様相を呈したが、引いて守ってカウンターを狙う広島に対し、後半アディショナルタイムの一本以外は危ない場面を作らせず、内容的にも凌駕して勝っている。
いろいろなサプライズが起こり得るのが天皇杯だ。お互いどういったメンバーで試合に臨むのか。「こういう時こそ◯◯選手を使ってほしい」という希望は両サポーターにあるはずだ。ちょっとしたワクワク感はリーグ戦以上にある。
以上
2014.08.19 Reported by 神谷正明
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