田村直也主将は、常々話している。「勝つチームは、日替わりでヒーローが誕生する」。その言葉通り、後半戦に入り、南秀仁、杉本竜士と、新鋭が活躍し、チームを活性化させていることで、東京Vは少しずつ結果がついてくるようになってきた。そして、この試合でまた一人、新たなヒーローが誕生した。
後半戦初戦の第22節vs磐田戦から先発フル出場が続いているが、「ゴールを決めていなかったのが悔しかった。ずっと獲りたいと思っていました」ルーキーの澤井直人が、待望のプロ初ゴールを挙げた。後半2分、杉本が得意のドリブルで左サイドを攻め込み、ペナルティエリアぎりぎりのところで相手DF2人を引きつけ、交わし、中に出したボールを澤井がシュート。一度はGK本間幸司の好セーブに阻まれたが、こぼれ球に再び反応した。「コースがなかったので、上しか見てなかった」GKが最も捕りにくいことも熟知した、上ネットに突き刺す強烈なゴールで、チームを連敗から救った。
また、得点だけではない。スタートは右ワイドだったが、後半29分、センターバックの井林章の投入の際、退いた二ウドのいたボランチへ、さらに同42分には、ボランチに楠美圭史を入れたことで、トップへと移動。「今、1つのポジションしかできない選手はダメ。いくつもできる位置をもっていることは、自分の幅が広がることにもなる」。憧れとする本田圭佑選手(ACミラン)同様、複数ポジションをこなせるユーリティさも証明した。
チーム全体としては、厳しい試合だった。特に前半は、立ち上がりから苦しんだ。25分あたりまで、ほぼ水戸の主導権を握り試合は進んだが、この試合の1つの見どころだった、井林をベンチに置いた先発守備陣が踏ん張りをみせた。鈴木隆行、吉田眞紀人と、180cm超の選手が並ぶ水戸の攻撃陣に対し、東京Vは、前節の途中から並べた、安西幸輝、田村、金鐘必、安在和樹の4バックが体を張り、決定的ピンチを何度も招きながらも、GKキローラン菜入の好セーブ含め、なんとか前半を無失点で耐え凌いだのが大きかった。「前半さえ0でいければ、前が点を獲ってくれると思っていました」キローラン菜入の思惑通り、後半開始と同時にギアをアップした攻撃陣は、立ち上がり2分で決勝点となる先制点を奪ったのだった。
もう1つ、良かったのが、三浦泰年監督がこの試合のポイントに挙げていた「攻撃の終わらせ方」だろう。「シュートで終わったり、タッチライン際で体を張ってマイボールにするとかは、全員が意識高くできていたと思う」(杉本) 結果、きちんとセットして守備ができたことで、守り切ることができたことは、収穫だろう。高さをストロングに攻めてくる相手に対して「高いボールでの差が(勝敗の結果に)出たな、という結果にだけは絶対にしたくはない」と、指揮官は語っていたが、理想通り、高さに苦戦はしつつも、自分たちのチャンスにはきちんと攻めきることで、それがあまり気にならないようなゲーム内容だったと言えるのではないだろうか。
「勝てたからよかったですが、ピンチも多かったですし、修正しなければならないところはたくさんあります」としつつも、田村は「勝ちゲームで反省できることは大きい」と語る。また杉本も「負けから得ることもあるけど、勝ちから学ぶことのほうが遥かに大きい」との思考を持つ。3試合ぶりの勝利は、今週一週間のトレーニングを、よりポジティブなものにしてくれるに違いない。勝つことでしか得られない貴重な“何か”を、ぜひ今後のチーム、またはそれぞれの個の力として身に付けていきたい。
水戸にとっては、「もったいない」の思いが第一にめぐる結果だったに違いない。前半2分に、相手のバックパスのミスを奪った吉田が絶好機を逸機。その後も、鈴木、船谷圭祐など他にも訪れた決めるべき場面でことごとく決められず、屈した。その悔しさは、「なんせ入らない。これじゃあ勝てるわけない。しょうがない」「『何でそこから外すの?』っていうシュートが今日も何回もあったし、これが毎試合続いているっていうのは、さすがに俺もストレスがかかるね」との、会見での闘将節を聞いても十分すぎるほど伝わってくる。それでも、ターゲットの鈴木に放り込むだけの単調な攻撃だけではなく、中盤を経由した、しっかりとしたパスワークからの攻撃展開でチャンスが何度も作れたことに、指揮官は「全体的にはこれだけチャンスを作ったんだから、悪い状態ではないと思う」と、手応えを感じていることも事実である。「最後、決めるのは“個”」だと前置きしつつも、柱谷哲二監督は「なんとか組織としてのレベルを上げて、組織として点を取りたい」をモットーに掲げ、今後の成長を目指す。一方の選手たちも「決めるべきところで決めなければ勝てない」ということは、重々理解している。水戸に限った話ではないが、決定力は一朝一夕で上がるものではない。ただ、水戸の選手たちからは、一番の改善策は「気持ちの問題」だとの言葉が並ぶ。まず、心がけ一つで変えられるメンタル面での改善を、そして、それに準じて技術的なレベルアップをはかり、なんとしてもJ1昇格戦線に割って入りたいところだ。5試合未勝利。水戸の正念場が続く。
以上
2014.08.18 Reported by 上岡真里江
J’s GOALニュース
一覧へ- 2024 明治安田Jリーグ終盤戦特集
- アウォーズ2024
- 2024J1昇格プレーオフ
- bluelock2024
- 2024 明治安田Jリーグ フライデーナイトJリーグ
- 2024JリーグYBCルヴァンカップ
- Jリーグ×小野伸二 スマイルフットボールツアーfor a Sustainable Future supported by 明治安田
- AFCチャンピオンズリーグエリート2024/25
- AFCチャンピオンズリーグ2 2024/25
- はじめてのJリーグ
- FIFAワールドカップ26 アジア最終予選 特集ページ
- 2024天皇杯
- 明治安田Jリーグ 月間表彰
- 2024Jユースカップ
- シャレン Jリーグ社会連携
- Jリーグ気候アクション
- Jリーグ公式試合での写真・動画のSNS投稿ガイドライン
- J.LEAGUE CORPORATE SITE
テレビ放送
一覧へ明治安田J1リーグ 第37節
2024年11月30日(土)14:00 Kick off