前半と後半で様相が変化した試合は、互いに２点を取り合い、勝点１を分け合った。
大分は、ラドンチッチが帰国により不在という中、前線に林容平が入る。京都は工藤浩平が３試合ぶりに先発に名を連ねた。
試合は、大分がＦＫから林が頭で合わせ、京都は工藤がこぼれ球を拾いシュートに結び付け、積極性を見せる。両チームともゴールに向かう姿勢がよく現れていた試合は、徐々に大分が流れを支配する。京都がボールを奪い切れず、大分が最終ラインでしっかりとボールをキープすることで、両サイドへの展開や京都の最終ラインと中盤の間でボールを受けたりと、大分が自在にボールを運ぶ。その状況が続く中、38分に大分は右からのクロスに逆サイドの安川有が折り返すと、ゴール前でこぼれたボールを風間宏矢が押込み、大分が先制する。

後半、積極的に前に出た京都。後半2分、シンプルにつないで中央で前を向いた石田雅俊がドリブル。エリア外から振り抜くと、ボールが大分ゴールに吸い込まれ、石田のＪ２初ゴールで京都が同点に追いつく。
これで流れを掴んだ京都。後半11分。大分がゴールキックで、ショートパスをつなごうとしたところを大黒将志が狙う。するとＧＫがトラップで慌て、中央にボールをこぼすと、そのボールを石田が狙い、無人の大分ゴールへ。石田の２得点で京都が逆転に成功する。
その後も京都は後半17分に工藤から大黒へとつなぎ、大黒のループシュート。同24分には右サイドからクロスと見せかけ石櫃が狙い、同26分には駒井善成が粘って持ち込んでと次々にシュートを放つ。そして27分には駒井の縦への切り込みからマイナスクロスに石田がシュート、こぼれを大黒が狙うなど、大分ゴールに迫った。
しかし、大分も後藤優介、高松大樹らを投入し、攻撃に厚みを持たせる。そして後半41分、中央、伊藤大介の縦パスを高松が収めて前を向くと、その右を走り抜ける後藤の足下へボールを送る。後藤がこれを冷静に決め、大分が同点に追いつく。結局スコアは２−２のままタイムアップ。互いに勝点１を分け合った。

試合後、大分・田坂和昭監督は「前半はほぼ思い通りにできた」と胸を張った。その通り、前半は大分ペースだった。
スタンドから観ていた感想としては、京都は一生懸命ボールを追うが、追うことで横や背後にスペースを作ってしまい、そこを使われたり、或いは、プレスに行く割には逆サイドに展開されてしまったという印象だ。
具体的な例では、ボランチ・伊藤大介がセンターバックの間に入り、センターバックが開き、両サイドバックが高い位置を保つ。センターバックの高木和道に京都・サイドハーフの工藤のアプローチを受けると、さらに外の安川、木島へボール送り、石櫃のところで数的優位を作る、といった場面があった。
後半、京都はそれを改善した。試合後の監督会見では、後ろに枚数をかけ、下がり過ぎていたのでその辺りを修正したという話だが、スタンドから観た印象は、単純に「コンパクトにした」という風に観えた。前半、京都は相手陣内でボールを奪おうとしていたが、後半は自陣に戻りコンパクトにして、入ってきたボールに厳しく行くという印象。大黒のプレスの掛け方も、前半の何でも喰いつくという感じが、後半は相手のボール運びをコントロールする様な感じもあった様に観えた。
大分とすると、後半の京都の様な対応をされると、相手の間に入ってボールを受けないといけなくなる。相手の間でボールを受け「何かする」となると、大分としては荷が重い感じがした。
京都は、ボールに喰いつくことで逆に相手のパスの流れをスムーズにさせているところがずっとあったが、後半はそれを一つ断ち切った感がある。

攻撃では２点目の大黒将志の、相手ゴールキックの狙いが秀逸だった。大分は以前から、ＧＫからつなごうとする感じがあった。今節ではゴールキック時、ＤＦがエリアの横に立ち、パスをもらおうとしていた。敵ＦＷがそれを狙えば、中央にスペースができ、大分ＭＦにパスを送れる。そうやって相手への揺さぶりと、自分たちはＧＫも使って数的優位を作りボールを大事にするサッカーを実践しようとしている様に観えた。
ただ、大黒にとってみれば、そんな事情を別にして、ＧＫとＤＦのパス交換を狙っていた。そして、相手のミスを誘発した。大黒の嗅覚というか、勝負の世界に生きるプロらしく相手のミスしそうなところを見逃さずに確実に突いていったと言うべきか、とにかく、狙い一つで勝負を手繰り寄せた手腕は見事だった。
勝利を逃したのは残念だが、後半はコンパクトな守備をベースに遅攻、カウンター、サイド攻撃と色々な形から多くのシュートを放ったのは評価しても良いのではないか。これを自信に変えて欲しいものである。

以上

2014.08.18 Reported by 武田賢宗