悪天候にもかかわらずスタジアムへ足を運んだ多くのファン・サポーター。Jリーグきっての名門である横浜F・マリノスに対し、選手たちがどれだけの成長を見せ、チームとしてどのような巻き返しの狼煙を上げてくれるのかと大いに期待を抱いていたに違いない。
しかし、この一戦の徳島はそれのどちらにも応えられないまま敗戦。前節に続き勝点を伸ばせず、上との差を詰めることが出来なかった。
高めのブロック形成と前からの早いアプローチ、また左サイドの衛藤裕が起点を作る小気味良い攻撃で非常にいいゲームへの入りをした徳島であったが、その流れも20分前後には横浜FMに変えられてしまう。中町公祐らに縦方向のパスを通されるようになり、じわじわと嫌な位置を突かれる場面がチームには増えていった。すると27分、その形は失点にも…。中町の縦パスがそれを防ごうとしたエステバンの足をかすめて最終ライン裏へこぼれると、驚異的な瞬発力でいち早く反応した横浜FMの新戦力・ラフィーニャに対応し切れず、飛び出した徳島GK・長谷川徹がPKを献上。中村俊輔に冷静なキックで先制点を決められてしまったのである。
そしてその僅か3分後に徳島は村松大輔のボールロストから2点目も許してしまったのだが、結果的にこの2つ目の失点が今節の徳島の運命を決めたように思われる。リードを広げられて非常に痛かったというのももちろんながら、それを境に徳島の守備が試合序盤とは異なる低い位置のものになっていったのだ。
そうなるとやはりチームにはリズムが生まれない。実際ポゼッションは見る見る横浜FMに高められたし、ボールを奪っても自陣深くからでは効果的な攻めにまでもっていけなかった。
さらに、徳島のそうした状況は折り返した後半も変わらなかったと言わざるを得ないだろう。ブロックとアプローチの位置が変わらず低かったことにより、前半より少し下がり気味でプレーする中村俊輔を中心とした横浜FMにいっそう圧倒的にボールを支配されて押し込まれる時間が増加。攻撃はと言えば、後半頭から投入されたアドリアーノの単独ドリブル突破が頼みの綱のような状態であったのが事実だ。残念ながらチームの戦いには中断期間でアップさせた運動量や連動性などが全く見られなかった。
それともうひとつ、徳島がいい面を見せられなかった大きな理由がある。体の強さを発揮してこれまでロングボールを受けていた高崎寛之が、横浜FMの誇る元日本代表CB2人によって完璧に抑え込まれたことだ。セットプレーで中澤佑二と栗原勇藏に仕事をされることはなかったが、本職の守備面で彼らにさすがの力を見せつけられ、チームの攻撃の生命線である高崎を封じられたことは徳島にとって相当苦しかったと言えよう。
いずれにしろ徳島の立場はこれでまたより厳しいものに。残留ラインの計算などはまだまだ出来るものでないが、それでももう猶予などは本当になくなっている。「全員でもっともっと負けたくないという気持ちを出して戦い、勝利を目指したい」とエステバンが試合後語っていたように、次(第21節:8/23 vs新潟)こそチームは勝利への執念で相手を上回り、何としても勝点3をもぎ取らなくては。
対し、7/15の第12節(ACLの関係でイレギュラー開催)以来6試合ぶりの白星を手にした横浜FM。新戦力・ラフィーニャのチームへのフィットを前節に続き確認出来たこと、中断期間後初の無失点ゲームを達成出来たことも併せると、今節は浮上へのいいキッカケになったと言えるのではないだろうか。
ただし、樋口靖洋監督も「3点目をもう少し早い時間帯に取り切るということで、もっと早くゲームをコントロール出来たのではなかったのかなと思います。そこがひとつ、次に向けての課題にしたいと思います」とコメントしていた通り、畳み掛けるべき後半になかなか3点目を決められなかったことはしっかり受け止める必要があろう。上位戦線へ割って入っていくためには、こうした試合できっちりダメを押せるチームになることが不可欠なはずだ。名門トリコロールの今後の進化が注目される。
以上
2014.08.17 Reported by 松下英樹
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