他会場でものすごいゴールラッシュがあったから目立たないかもしれないが、8月16日のJ1ではユアテックスタジアム仙台でも派手な打ち合いがあった。失敗を恐れずに攻撃に挑戦する姿勢を表し、仙台が3ゴール、清水が2ゴールをあげた。そして最終的に勝利したのは、ひとつ多くゴールした仙台だった。
もっとも、前半の両チームには大きな差があった。この日の仙台は攻撃陣のコンディションの影響で前節と顔ぶれが変わり、武藤雄樹と野沢拓也が前線でコンビを組んだ。野沢の位置は1.5列目ともトップ下とも言えるところだった。
ここしばらくの仙台は、清水の両センターバック(この日は杉山浩太と平岡康裕)とその前に構える本田拓也の適確なポジショニングによりシュートコースを消されて苦しむことが多かった。しかしこの日は、野沢がこのセンターバックとボランチにとって嫌なポジションでボールを受け、彼に清水守備陣が引きつけられると仙台の選手が「いろいろなスペースに走りこんでくれた」(野沢)。
結果、右サイドを中心に仙台がチャンスを量産した。12分には梁勇基と武藤雄樹が清水のスペースを突き、野沢からのパスを受けた武藤が切り返してから左足でシュート。「最終ラインも合わせて寄せきれなかった」と櫛引政敏が悔やんだように余裕を持って放たれたシュートが清水ゴールに吸い込まれた。さらに21分には、この日縦横無尽に走り回っていた太田吉彰がボールを運んで武藤にパス。これを武藤が「まぐれっぽい」というループシュートで決めて、リードを2点に広げた。
しかし清水もやられっぱなしでは終わらなかった。前半アディショナルタイムにカウンターから直接FKを得ると、ノヴァコヴィッチが絶妙なシュートで決めて1点差に。さらに後半立ち上がりには、交代で投入された村田和哉のスピードを生かした連続攻撃で仙台を押しこみ、PKをもぎ取る。これを大前元紀がやり直しを含めて決め、試合は振り出しに戻った。
仙台は第16節名古屋戦(3-3)と第18節大宮戦(2-2)で追いつかれての苦い引き分けを経験していただけに、この展開は望ましくなかった。しかしこの日の仙台は、ここで崩れなかった。運動量が落ちてきた中でも清水のパスの出どころにはプレッシャーをかけ、カウンターからチャンスを作る。すると、77分に途中出場のウイルソンが左サイドでFKを獲得。梁の蹴ったボールの軌道をゴール前で石川直樹が変え、最後は鎌田次郎が「セットプレーを取れていたので、そのひとつでも決めたかった」と、膝で押しこんだ。
その後は両チームとも懸命な攻め合いが続いた。87分に仙台の菅井直樹が倒されてPK獲得。しかしウイルソンのキックは櫛引の好セーブで止められた。逆に終了間際には、清水が前半終了間際を思い出させるような直接FKを獲得。しかし今度はシュートがゴール上に逸れた。最後まで目の離せない試合は、3-2で幕を閉じた。
渡邉晋監督は「サポーターの皆さんの後押しやOBが一緒に戦ってくれた結果」と、翌17日の20周年記念試合に参加する仙台OBやゲストたちを加えた仙台サポーターに感謝した。その一方で「評価できるのは勝利のみ」と、前後半の終盤などの試合運びの課題を強調した。リーグ戦6試合ぶりの勝利で得た手ごたえと課題は、乱打戦の記憶とともに、次節へとつながっていく。
以上
2014.08.17 Reported by 板垣晴朗
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