新潟が2-1で大宮を振り切り、第18節Ｃ大阪戦に続いてホーム戦で連勝した。1-1の後半43分、途中出場の鈴木武蔵が勝ち越しゴールを決めた。大宮は0-1の後半16分にムルジャのゴールで追い付いたが、その後は決定機を作りながらものにできず、力尽きた。

新潟に勝点3を呼び込んだのは新鋭の1発だった。後半43分、右サイドで起点になった山本康裕が中央の小泉慶へ。そこからボールを受けた指宿洋史がゴール左でフリーになっていた鈴木へパス。「狙った通りにニアに打てた」。鈴木は冷静にコースを見極めて左足でシュート。ボールはネットを揺ら した。

役割は明確だった。後半25分、指宿洋史と同時に投入された。ポストプレーで起点を作る指宿に対し、自らは突破力を生かして相手を押し込み、勝負所で裏を狙う。ピッチに入ると、前線からプレスをかけ、味方のパスには常に裏を狙う形で反応した。

11日から13日までU-21日本代表のトレーニングキャンプに参加した。今週のチーム練習には2日ほどしか加わっていないが、14日の非公開練習後にトゥッコ・コーチのもとでフィジカルのメニューをこなすなど、コンディションを整えた。「状態は悪くなかった」。1点が欲しい中での出場で不安なく仕事をした。

鈴木とともに途中からピッチに入った指宿にとっては、これがＪリーグデビュー戦となった。決勝点の場面は、ゴール前 で相手に詰められながらも、正確にボールをさばいて鈴木のゴールをアシスト。「自分で打とうと思ったけど、武蔵が見えたのでパスを出しました」。こちらも冷静な判断を見せた。

自らのゴールこそなかったが、きっちりとボールを収めて攻撃のリズムを作った。放った1本のシュートはGKに弾かれはしたものの、クロスに飛び込みながら強烈なボレーで枠を捉えたもの。「チームが勝ってうれしいし、自分もデビューできた。でも、得点できなかったことが悔しい」。柏U-18からスペインに渡り、6シーズン過ごして7月に新潟に。逆輸入のストライカーは、期待を抱かせるオーラを放っていた。

新潟の柳下正明監督は「どちらも自分の特長を出していた」と途中出場のツートップを評価した。前半20分には、コーナーキックの折り返しを成岡翔が決めて先制した。新潟の複数得点は、2-1で勝利した第12節清水戦以来。柳下監督は「ビッグチャンスは何度かあるので、それを決めていればもっと楽なゲームができたと思う」と、改めて課題を強調した。同時に「トレーニングでやっているようなプレーが実際のゲームでできるようになっていると、攻撃の進歩も認めた。

川又堅碁が名古屋に移籍したものの、新潟のFWのポジション争いは激しい。この日スタメンの岡本英也に、ベテランの田中達也、夏に移籍加入の指宿と、ラファエル・シルバ。そしてここ数試合FWで起用されている成岡。「結果を残すことで信頼が得られる」と鈴木が言うように、競い合い、刺激し合うことで最前線の質は向上する。 それが得点力アップにつながる。

大宮にとっては、悔いの残る内容だった。後半開始に泉澤仁を投入して左サイドハーフへ。家長昭博をトップに入れ、ズラタンを右サイドハーフへと布陣を変更。そのことで前線の流動性と、サイドの突破力が生まれた。後半16分の同点ゴールも、左サイドを突破した泉澤の折り返しをムルジャが決めたもの。

ただ、ゴールを割ったのはこの場面だけ。ゴール前でのGKとの1対1や、サイドを崩して、中央で味方がフリーになる状態を作るなど再三チャンスを迎えたが、決め切れなかった。
前半は引き気味のまま、新潟に主導権を握られた。後半はサイドを効果的に使って流れを引き寄せた。後半の形を前半から作り、継続していければ展開は分からなか った。

勝負所で1点をもぎ取り勝点3を手にした新潟は、順位は10位のままだが、浮上を狙うきっかけをつかんだ。後半に勢い見せながらも勝利を逃した大宮は17位。降格圏から抜け出せない重苦しさが続く結果になった。

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2014.08.17 Reported by 斎藤慎一郎（ニューズ・ライン）